保守派「steady.」が男を増長させた!? 有名企業男子の生意気な「理想の女性像」
毎号、男子や上司、お局さまや同期など、人の目が気になって仕方ない「steady.」(宝島社)。今月は、そんな「steady.」の真骨頂とも言える「僕のときめく(はーと)春イチ好感服はコレ!」という特集が組まれています。この企画は、まずOLのファッションを5大系統に仕分け、その後、シーン別にそれぞれの代表コーデを見せ、それを有名企業社員、医師、公務員といったステキ男子総勢110名がジャッジする! という壮大なものなのです。
登場する男性社員は花王、アサヒビール、カルビー、日産自動車、りそな銀行、日本旅行、サイバーエージェント、公務員、ソニー・ミュージックレコーズ、凸版印刷、医師とさまざまで、その上、彼らひとりひとりの写真と趣味、休日の過ごし方、女性のタイプ、鉄板デートコース、そして似ているといわれる有名人という、結構どうでもいい情報までが掲載されているという徹底ぶり。早速、読んでいきましょう!
<トピック>
◎僕のときめく(はーと)春イチ好感服はコレ!
◎先輩OL・後輩OLのほめられコーデ VS 怒られコーデ
◎なでしこの現代お作法指南
■「レイク」はCMというフィクション世界だから!
「僕のときめく(はーと)春イチ好感服はコレ!」に登場する男子のプロフィールを細かく見ていくと、職業別の男子の特徴が見えてきます。
今回の企画には、未婚者だけでなく、既婚者も登場しているのですが、メーカー系の男子の中には、休日の過ごし方や趣味の欄に、「家族や子どもと遊ぶ」「子育て」という言葉がやたらと並んでいました。つまり彼らの中では、「妻思い」「子ども思い」であるということが、「男としてポイントが高い」と感じていることがうかがえます。ただ、「趣味は子育て!」と声高に言われると、奥さんとしては、「子育てや子どもと遊ぶのが趣味とか言われても困るわよ! こっちは日常なんだから」と思わずツッコミを入れたくなるような気もします。
そんな中、全員未婚男子で揃えているのは、「Ameba」や「アメーバピグ」などのサービスを提供しているサイバーエージェント。この企画に対する真摯さというか、本気度を感じますね。プロフィールをじっくり見ていくと、この会社の男子が、ほかの会社と違うことがわかります。とにかく女性に対する理想が高く、細かい。「おっとりしている人」「癒される人」「おしとやかでマメな女性」「自立していて、家事を完璧にこなす人」などなど……。
サイバーエージェントと言えば、女性社員は「顔で選ばれているのか!?」と言いたくなるほど美女揃いで、社員同士の結婚も多いというのはよく知られる話ですが、流石、キラキラ美人が供給過多な会社の男子は、言うことが違いますね! 「自立している上に、家事が完璧」なんて、「オレの経済力を頼らないで! そしてオレの面倒を完璧に見て!」ってことですよね!
正直どうかと思いますが、学生時代からブイブイ言わせた挙げ句、過酷な就職試験を勝ち抜いた超リア充サイバー男子なら、女子は許してすまうのかもしれませんね。保守化傾向にあり、「専業主婦になりたい」なんて意見が聞かれる昨今の女子、もとい「steady.」読者なら、なおさらです。それとも、社内結婚が推奨されていて、サイバー男子は綺麗な同僚女子を選び放題なため、あえて女子を振るい落とそうと、無理難題をつきつけているのでしょうか。
にしても、そんな「一見物腰柔らかそうな草食系」なのに、中身は「ふんぞりかえってわがまま系」というサイバー男子の実態を見て、「レイク」のCMでわがまま放題を言っている男子(ダーリンハニー・吉川正洋)を思い起こしました。
そして、この特集を読んで、筆者のように「けっ、ふざけんじゃないよ」と毒づくこともなく、男子の好きなコーディネートを一生懸命取り入れることで、「愛されて結婚したいな!」とほのかな夢を抱いている「steady.」読者を見ると、どんなにわがままを言われても、にっこりしながら「ぜーんぜんいいよ!」と言ってのける、レイクちゃん(菜々緒)を思い出してしまうのでした。
■「怒られない」をテーマにする唯一無二の「steady.」
今月は、新入社の時期だけに、「先輩OL・後輩OLのほめられコーデVS 怒られコーデ」企画も復活しています! 2012年4月号でも同じ特集が組まれていたので、この季節の定番企画になっているのかもしれません。
去年の同企画を読んだ時は、「ファッションなんて楽しむものだし、なんで怒られないことを想定して洋服を選ばないといけないの!?」と、ちょっと悲しい気持ちになりました。でも「steady.」は、高いアイテムを使ったかっこいいコーディネートを紹介するような、センスある大人の女性が読む雑誌ではありません。少しの背伸びもせず、あくまで等身大のファッションを紹介しているのです。そんな「steady.」を長らく読んできた結果、やはり「毎日会社に行くこと」はOLのリアルであり、ファッションのことで怒られでもしたら、1日気分も滅入ってしまう、だったら怒られないコーディネイトは知りたいよね……という妙な親心が芽生えました。「steady.」って、全国の「思ったことも言えないで生きている平均的OL女子」に向けた、究極のリアル・クローズ雑誌だったんですよね。
それにしても、OLたちの座談会で、「目立たないようにしてたけど、その反動で急に茶髪にしてしまった」とか「ブランドのロゴの入ったピアスをしていただけで、お金持ちだねと嫌味を言われた」とか「今年の新人はハデだと言われた」とか……さまざまなお小言を言われたというエピソードが次々と出てきて、会社全体の閉塞感を感ぜずにはいられませんでした。日本のOLさんたち、頑張れ!
■会社も家庭も安住の地ではない!?
そんな会社の閉塞感は、悪目立ちしないことや、怒られないように気遣うことでしか、避けられないものなのでしょうか……。そして、そんな会社という現実から抜け出すためには、やっぱり「家庭に入るしかないね!」と若い女子が思うのも仕方ない。若者の専業主婦志向は、意外とこんな現実から来ているのかもしれません。ただ、若者は「家庭に入ったら人生オールオッケイ!」と思ってしまいがちですが、まぁ、周囲を見ていても、週刊誌を見ていても、そんなことはなさそうです。
蝶々さんは、「なでしこの現代お作法指南」で、「結婚で仕事をアウトしたコたちって、2、3年もすると『……ちょっと、私だけ時代から遅れているかも? この家で人生終わりたくない。やっぱり私も、何かしたい!』とモンモンとしてくるみたい。だからこそ、20代の独身の間に、得意な分野や経験を持っていくべき」とアドバイスしています。
ただ、本当に周囲の目線にいちいち反応してしまう、気の小さい「steady.」読者は、日々、先輩や同期たちとの人間関係をどうするかに力を注ぎこんでしまっているのではないでしょうか。そんなことをしていたら、得意分野を伸ばすことにまで時間が回らないのかも。しかし、「怒られ」回避に時間を割くのはもったいない。人間関係の調整は最小限にとどめて、婚活をし、仕事なりそれ以外なりの得意分野を伸ばすのが、一番なのかもしれませんね。とは言いつつ、それも結構大変ですよね。「steady.」読者の苦悩はまだまだ尽きそうにありません。
(芹沢芳子)