「母はお姫様」トンチンカンな介護をする夫兄弟に呆れる嫁のため息

「肩書とお金は持ってるんですよ、みんな。なのにお母さんのためにやることがトンチンカン。主人が、『いつでも僕たちに連絡できるように、母に携帯電話を持たせたい』って言って呆れたんだけど、こないだは下の義弟が義母に10万円渡していたんですよ。『老人ホームに入っている義母に、みじめな思いをさせたくない』って。だからって認知症の義母に『お小遣い』って10万円も渡すとか、携帯電話を買うとか……信じられます？　いくら学歴があっても頭悪すぎですよ。何考えてんの。10万ものお小遣いを老人ホームでどう使えいうんですか」

　義母がほかの入居者にお金を渡しているのにスタッフが気づき、発覚したのだという。

「スタッフの方が言うには、義母は『長男の嫁にも、迷惑をかけているから毎月100万渡している』って言っているらしいんですわ。この間面会に行った時には、『映子さんには、通帳を預けてるやろ。あれはあんたにあげるから、好きに使うたらいい』って言われました。お義母さんの通帳なんて、老人ホームの料金払ったら残る金額なんてありませんよ。息子たちに大切にされすぎて、長年のお姫様体質が抜けへんのですわ」

　生活能力では「非エリート」の大原さんの夫や義弟たちは、ことあるごとに大原さんを頼りにしている。

「ほんと何にもできない人たちなんです。義母を老人ホームに入れる時も、1人暮らしになった義父をどうするか話し合う時も、3人で話せばいいのに必ず『お義姉さんも』って同席させられる。義弟たちはああしたいこうしたい、って意見だけは立派。そのくせ、義父に配食サービスをお願いしたり、介護認定を受ける手続きをしたりと、実際に動くのは全部私。義弟たちのお嫁さんは忙しいからって、実家に来たこともないです。結局、お義母さんが見下している私がおらんやったら、誰もなんにもできへん。まあ、義母の頭の中では私に毎月100万あげてるらしいから、『過分な報酬を与えているヘルパーさん』ってところやろうけどね」

　「お姫様」の義母が、大原さんの上に君臨しているのには理由がある。義弟たちの嫁がどちらも息子たちと同等の学歴があり、仕事も持って第一線で活躍しているので多少の遠慮があるようなのに対して、大原さんは短大を出て、夫の会社で「普通のOL」をしていたからだろうと大原さんは言う。

「その考え方が、いかにも息子たちをエリートに育てた義母らしいですよね」

　実は、そういう大原さんの息子たちも学歴エリートだ。

「義母に、私のせいで息子たちがいい学校に入れないって言われたくない。だから絶対に東大か京大に入ってくれないと困ると思って、義母以上の教育ママになりました。そういう意味では私も母親としては成功したと言えるんやろうけど、息子たちは私のことをお姫様扱いなんてしてくれへんしね。『結局介護を全部押し付けられてアホちゃう？』くらいにしか思われてないんやろうね。ほんま、アホらしい」

　大原さんはアホらしいと言うが、女の人生「私がいなくちゃ誰も何にもできない」と思っているうちが花、かもしれない。大原さんの義母にもそういう時期があったのだろうから。