イーストウッドも標的に!? アメリカで深刻化するセレブの偽911通報
アメリカで、セレブをターゲットにした偽911通報(日本の110番、119番)“スワッティング”事件が、昨年から多発している。愉快犯の目的は警察特殊部隊を出動させ、世間を大騒ぎさせること。通報内容も「銃撃戦になっている」「人質がいる」など、おふざけでは済まされないようなものばかりだ。先週も、ハリウッドを代表する大御所俳優クリント・イーストウッドの邸宅に、銃で武装した複数の男が押し入り、銃撃された者もいる、という偽911通報があり、特殊部隊が急行する騒ぎが起こった。ロサンゼルス市警察の怒りは沸点に達しており、必ず犯人を検挙すると息巻いている。
人気映画シリーズ『ダーティハリー』の型破りな刑事ハリー・キャラハン役で知られるクリントは、御年82歳。2010年にTwitterで「死亡した」というデマが流れたことがあるが、10代の頃から健康に気を配っているため元気そのもの。今も、俳優、監督、プロデューサーとして第一線で活躍しているタフガイである。そんなクリントが、特殊部隊S.W.A.T.チームを出動させるために偽の911通報する“スワッティング”のターゲットとなってしまったのは、先週19日のことだった。
米ゴシップ芸能サイト「TMZ」が22日に報じた内容によると、19日、高級住宅地ベルエアにあるクリント・イーストウッドの邸宅に、軍隊で使うような対人殺傷用銃器で武装した男たちが不法侵入したという911緊急通報があった。男たちに撃たれた者もいるという情報を得て、警察はすぐに特殊部隊を出動させた。しかし、そのような事実はなく、ロサンゼルス市警が世界に誇るS.W.A.T.チームは、すごすごと引き返すハメになったという。
米紙「ロサンゼルスタイムズ」は、度重なる偽911通報に警戒していた警察は今回、部隊をフル出動させる直前にスワッティングだと気がついたため、ヘリコプターを飛ばすような大掛かりな出動にはならなかったと報道。しかし、S.W.A.T.チームは急行させたため、邸宅周辺は物々しい雰囲気に包まれた。ロサンゼルス市警は、「人的資源を無駄遣いするだけでなく、罪のない人間を危険な目に遭わせることになる。スワッティングは決して許すことができない」と憤慨しており、犯人検挙に全力を注ぐと声を荒らげている。
セレブをターゲットにしたスワッティングの件数は、昨年夏頃から急増。8月はマイリー・サイラス、10月にはアシュトン・カッチャーとジャスティン・ビーバーの豪邸に、武装した不法侵入者が押し入ったと偽911通報があった。さらに11月には、過去に不法侵入者が本当に押し入ったこともある、人気オーディション番組プロデューサーのサイモン・コーウェル宅に、武装した男たちが入り込んだとの偽通報があった。今年に入ってもスワッティングはやむ気配がなく、1月はトム・クルーズ邸と、キム・カーダシアンの実家が武装不法侵入者に押し入られたとの偽911通報があり、いずれもS.W.A.T.チームが急行し、ヘリコプターも飛ぶフル出動となっている。
カーダシアン家の人々はお騒がせセレブらしく、S.W.A.T.チームの写真を撮影し、インターネットに掲載。その写真は、アクション映画さながらの物々しいもので、想像以上に大ごととなっていることに驚いた人も多かったようだ。なお、1月末にはクリス・ブラウンの邸宅で、銃が絡む家庭内暴力事件が起こったという偽の通報を受け、警察が駆けつける騒ぎも起こっている。
今月初め、警察は、アシュトンの邸宅で銃撃戦が起こっていると偽911通報した犯人として、12歳の少年を起訴したと発表した。少年はほかのスワッティングにも関わっていた可能性があるとも伝えられているが定かではなく、慎重に捜査が進められていたところだった。
先週は、クリントのほかにも、新婚ほやほやのヒュー・ヘフナーが暮らすプレイボーイ・マンションで暴行騒ぎが起こっているという偽通報があったが、こちらは「捜査の結果、偽の911通報だが、S.W.A.T.チーム出動を目的としたスワッティングではないことが判明した」とのこと。しかし、その一方で、21日にリアーナの邸宅に押し入ろうとした男が警察に逮捕される事件が起こっており、本当の事件なのか、スワッティングなのか、通報だけで見極めることは困難なようである。
凶悪な銃乱射事件が立て続けに起こっており、ピリピリしているアメリカ。今後、本当の乱射事件が発生したとき、S.W.A.T.チームがスワッティングの方に出動していたため対応が遅れ、最悪の事態になることもあり得る。一刻も早い犯人検挙を期待したいところだ。