「steady.」恋愛特集に吉田豪登場、女子によるモテ論争から一歩前進?
内閣府の調査で、「夫は外、妻は家庭」と考える20代の割合がぐんと上がって、全体的にも50パーセントを超える結果が出たそうです。自民党政権も復活して、どんどん世の中が保守に戻りそうな雰囲気ですが、そうなれば「そこそこ女子」「なんとなく女子」の「steady.」(宝島社)の時代がやってきた! って感じなのかもしれません。でも、果たしてこれが、女子にとっての明るい未来なのでしょうか。
<トピックス>
◎INTERVIEW 綾瀬はるか
◎恋も着やせも叶える 着回し31days(はぁと)
◎アイドルに学ぶモテ術
■綾瀬はるかに見る、強い女への視線
このままどんどん保守化が進み、男性の活躍を阻害したり、男性の働く場所を奪ったりしない控え目な「ドジっ子」女性が求められるようになっていくのかな……。そんなことを思いながら誌面を見ていると、来年のNHK大河ドラマ『八重の桜』の主演が決まった綾瀬はるかのインタビューが。意外や意外、骨太なキーワードが多くて驚きました。
なんでも、綾瀬演じる八重は「元祖ハンサムウーマン」と呼ばれ、男尊女卑の時代に自分の夫を呼び捨てにしていた人物。そんな八重に対して、綾瀬は「自分がやりたいと思ったことを貫き通す強さを持ってた。(中略)時代が変わっていく中で、マイナスの経験も自分が前に進んでいく力に変えて、新しいものも積極的に受け入れていった」と評価。でも、「活発で頑固者っていうところは似てるけど、私にはちょっとできないなって思うことが多いですね」と、強い女性の生き方には賛同しつつも、距離を置きます。
その後も「お母さんはあまり自分で何かを決めることがなくて」と、「三歩下がった」女性の美徳をちらつかせながら、両親が旅行に出かけた時、お父さんがせっせとお母さんの変顔の写メを送ってきたというエピソードを披露。自分は、ほっこりした亭主関白の男性についていきたいという立場を表明していました。
これが、ほかの女優さんだったら「あざとい!」と思うのですが、自分が演じる「八重」に対しての理解度の深さもあり、その上で考えを述べているので、綾瀬にはわりとイヤミがない。でも、よくよく考えると、この綾瀬のように、今の女性って、自由で強い女性像に憧れて、「いいぞ! もっと頑張れ!」といって後押ししながらも、いざ自分がその立場を求められると、「強くなりたくない!」としり込みする傾向はありますね。それは、今の社会が、「女性が強くなること」と「女としての幸せになること」が結びつきにくいという仕組みになっているからなのかもしれません。そんな、現代女性の一面を、図らずも象徴しているインタビューだと思いました。
■30代非正規社員OLの心境とは……?
今月は、これまで何度も企画されてきた優木まおみと小池徹平の着回しラブストーリーの第四弾「恋も着やせも叶える 着回し31days(はぁと)」もありました。ってこの企画を楽しみにしてる人が、全国にどれだけいるんでしょうかって感じではありますが。
このストーリーの中のまおみが、実年齢の32歳に反して、「てっぺい」と同い年の28歳という設定になっているのが気になります。実社会での非正規社員OLは、社内で妙に老成していて、しっかり者のイメージを持たれると、同性とのコミュニケーションが取りづらいという側面も。実は32歳のまおみに、28歳のキャラを演じさせることで、30代の非正規社員OL読者の「若くありたい」「未熟な存在でありたい」という共感を呼ぼうとしているのかもしれませんね。
とりあえず今回は、まおみが以前に好きだった先輩が登場したり、てっぺいが海外転勤をまおみに隠していたりとドラマも多くて、かつての「CanCam」(小学館)エビちゃんシアター並みに、ケンカしたりイチャイチャしたりというシーンも盛りだくさんでした。まぁ結局、めでたしめでたしで終わったのですが。ま、このページはネタですから、今後もこの2人以上のベストカップルの登場と、趣向を凝らしたストーリーや企画を期待しています。
勝手に私が妄想するならば、「steady.」の1カ月コーディネート企画は、いつもポジティブな内容の話が多いので、女同士の対決を煽るようなものも読んでみたいところ。例えば、てっぺいの前に、なぜかまおみに瓜二つの悪女(まおみ二役)が現れて、てっぺいの心が揺れる。そして、ヒロイン・まおみの清純コーディネートと、悪女・まおみの小悪魔コーディネート対決が繰り広げられるという……編集部の方、どうでしょうか!?
■「steady.」に吉田豪の目新しさ
今月は、「アイドルに学ぶモテ術」という恋愛特集もありました。なんと、この企画に登場したのは、「steady.」とはちょっと毛色の違う吉田豪です。
この特集では、AKB48の旧エースである前田敦子から「ほっとけない女イメージ」を、現エースの大島優子から「女子としての余裕」を学ぶなど、これまで女子の中だけでぐるぐるしていたモテページから、一歩前進した姿を感じさせます。
なんでも、吉田豪によると、「小林よしのり先生をはじめ、AKBヲタの人たちが唯一、“女として見ていい存在”として挙げるのが、大島優子なんです」ということで、大島さん自身も「よこしまな目で見られていることをちゃんと自覚しているし、それぐらいのことで傷つかない懐の深さがある」と分析。
前田敦子は「正直、めんどくさいけれど、めんどくさいからこその魅力がある」、篠田麻里子は「誰かが弱っている時、一番にケアできる人」「あの信用できる感じは、男からも一目おかれます」と、それぞれのモテ術を解説していました。これまでの「steady.」の「そこそこ」や「なんとなく」な恋愛特集とは違った、男性目線のためになる特集だったのではないでしょうか。
そのほか、今月も「steady.」の誌面は不況の影響をモロに受けまくりです! 「クチコミで決定! 大満足プチプラ図鑑」という特集には「お財布は大大大ピンチ!」「みんなのお財布を守るために」「こんなに安くていいんですか?」と激安量販店を思わせるせちがらいコピーが氾濫。
また、近年は会社関係の飲み会は忌避傾向にありましたが、保守へと流れる昨今の風潮では、飲み会でうまく振る舞える女子こそが、「女子の中の女子」なようで、「お酒の席で愛される女子になる(はぁと)」という企画もありました。都会の正社員モデルの生き方では不必要になったといわれるお酒の付き合いも、地方で働く人にとっては、まだまだ捨てきれないコミュニケーション方法なのかもしれませんね。
ある意味、非常にリアリティがあって、女子の世相を最も反映しているのは、「steady.」じゃないかと思えた今月号でした。
(芦沢芳子)