閉経してから毎日おいしい! 中高年のセックスの喜びがいっぱいの「快楽白書」
こんな世界があったなんて! と驚きました。みなさんは中高年の性にどんなイメージがありますか。なんだか萎びたたくあんみたいなしょぼく枯れたイメージを持ってはいませんか。そんなことないんです。20代や30代の青いセックスが、40代、50代、60代と熟れて瑞々しく輝く甘いマンゴーになり、味わったことのないような喜びをもたらしてくれるのです。ああ、人生は素晴らしい……と、この「快楽白書(けらくはくしょ)2013」(中央公論新社)を読んで多幸感に包まれました。
「快楽白書」は、書き下ろしの記事に加えて、この1年間で「婦人公論」に掲載された性に関する記事をまとめて収録しています。表紙に書いてある「工藤美代子×林真理子」の対談や「YOU」のインタビューは、過去に掲載されている記事なので、ご興味のある方はリンク(婦人公論レビューのバックナンバー)をご参照いただければと思います。ここでは、書き下ろしの記事をご紹介したいと思います。
<トピック>
◎工藤美代子 女の人生は3回転
◎読者アンケート結果発表 40代から始まる本当のセックス、×(トホホ)を○(ウフフ)に変えるには?
◎忘れられない最高のオーガズム体験
■モンキーバナナじゃ小さすぎるよね!?
巻頭は、ノンフィクション作家、工藤美代子のルポ「女の人生は3回転」です。そこに、独身で35年以上セックスしていないという68歳の女性が登場します。お見合いで知り合った74歳男性と婚前旅行に出ることになり、不安になった彼女。婦人科に行く勇気もなく、ゼリーを買うのもアダルトグッズで試すのも恥ずかしい。そこで女性は、コンドームを買ってきて、皮を剥いたバナナにかぶせ、ベビーオイルを塗って自分の膣に差し込み、1週間かけて奥まで入れられるように練習したそうです。
「難点はバナナって柔らかいから、1回の練習に4本くらい必要なんです。すぐにへたってダメになっちゃうから。でも、私の歳になると辛抱というのを知ってますから、とにかく忍耐強く1カ月、その練習をしてから旅行に行ったら、すんなりセックスできたんですよ」
バナナを1回に4本×1カ月、合計120本ものバナナが彼女のアソコに飲み込まれた計算になります。68歳、人生経験豊富であろう先輩が、まるで部活に打ち込む少女のようにひたむきにバナナの出し入れを練習するなんて……感動的です。120本バナナノックのあとの愛の交歓はどんなに素晴らしいものだったでしょう。人は誰でもそれくらい真剣にセックスすべきなのかもしれません。人生の大先輩に、女性として、いや人間として大切なことを教わった気がしました。みなさんは、性をないがしろにしていませんか。
■先輩方の心強いお言葉がいっぱい
お約束のコーナー、読者アンケートの結果発表では、平均52.9歳の女性が「オーガズムを感じたことは?」「感じやすいのは、クリトリスと膣、どちら?」「マスターベーションをしたことは?」など興味深い質問に回答しています。ここでご紹介したいのは、閉経問題。閉経を「オンナじゃなくなるのでは」と恐れている女性は少なくないのですが、「快楽白書」を読めばそんな不安は吹き飛びます。
「生でも安心してできる」「いつでもセックス可能」といった前向きなコメントや、「閉経後、セックスがいっそうおいしくなり、毎日でもOK! でも、バイアグラを飲んでいる夫には5日に1回を希望されてます」(64歳)という愉快なコメントが掲載されていました。こういう回答を見ると、加齢が怖くなくなりますね。
「淑女の『エロス川柳』大賞」というコーナーでも、「閉経で 生でできるも 夫立たず」(53歳・主婦)という川柳がありました。生でおいしいのはビールと閉経後のセックス! ちなみに、この川柳コーナーでは、「三段腹 見られずにすむ バック攻め」(42歳)、「イキそうに なる直前で 子が目覚め」(44歳)などのほほえましい作品も掲載されていました。セックスで一句詠んでしまうところが、また粋です。
「成熟女子の『私が抱かれたい男』は誰だ?」ランキングでは、1位福山雅治、2位木村拓哉、3位向井理、4位渡辺謙/夫・今の彼、5位大沢たかお/佐藤浩市となっていました。番外には山路徹、諸葛孔明、小泉純一郎らが入っています。ジャニーズ勢は、2位の木村と、番外の中居正広、岡田准一以外に誰も入らず。天下のアイドルも、さすがに諸葛孔明や小泉純一郎には敵いません。番外にはセックスセラピストのアダム徳永の名もありました。見た目より実を選ぶのが中高年です。
■叫び出したいくらい愉快です
もう1つ注目は、「読者手記×レディースコミック スペシャル合体企画 忘れられない最高のオーガズム体験」です。読者のオーガズム体験談をレディースコミックに仕立てています。非常にざっくり説明すると、1編は片手で握れないくらい大きい外国人のペニスを受け入れ、「アラン、ゆっくり!」「うおおおっ」と叫ぶ漫画。もう1編は、10歳年下の大学生と不倫し、「陶器のような体……すべすべしていて弾力がある」「もっともっと!」と叫ぶ漫画。どちらも叫んでいます。自己陶酔的な読者手記も昭和風の漫画にすると笑うしかありません。セックスってこんなに可笑しいものなのか、と気づかされます。
これまでの「快楽白書」は、「中高年もセックスを楽しむべき」「女性も性を自由に楽しむべき」といった思想的な下地が透けて見えていました。「自由にすべき」「楽しむべき」と上から言われるのは、本当の自由でも快楽でもありません。しかし、今回の「快楽白書」は、肩の力が抜けてiいて、笑えて、とにかく明るい。頭ではなく体で感じられる、本来目指すべきセックスに近づいたように思います。もちろんそれは、2007年からこのシリーズを発売し続けて、世を啓蒙してきたからこそ辿り着いた結果であり、通過点なのでしょう。中高年の性、そろそろ新たなステージに入ったのかもしれません。加齢が楽しみだぞー!
(亀井百合子)