サイゾーウーマン芸能テレビドラマレビュー『孤独のグルメ』VS『花のズボラ飯』 芸能 [TVツッコミ道場] 最小限で「美味しさ」を引き出す『孤独のグルメ』と、蛇足だらけの『花のズボラ飯』 2012/11/18 11:45 TVツッコミ道場倉科カナ 『孤独のグルメ DVD-BOX』/ポニーキャニオン 今回ツッコませていただくのは、放送中の2つのドラマ『孤独のグルメ Season2』(テレビ東京)と『花のズボラ飯』(TBS系)。どちらも久住昌之原作の「グルメ」マンガの実写化だが、両者の視聴者からの評価は見事なまでに分かれてしまっている。 まずは『孤独のグルメ』。 主演の松重豊は、原作マンガの絵柄にはまったく似ておらず、原作よりだいぶ強面にもかかわらず、久住の世界観にこれ以上ないほどピタリとハマッている。淡々とした語りと、最小限に抑えられた表情の変化の中には、抑えきれない「美味しさ」への歓喜や興奮が溢れ出ている。大袈裟なリアクションは一切なく、微妙な表情の変化と、静かながらも饒舌な心の言葉だけで、こんなにも美味しそうに見えるのだから不思議だ。極限まで余計なものをそぎ落としていくことで、「料理」がクローズアップされ、味覚・嗅覚・食感などが生々しく伝わってくるのだろうか。 実は同作品は、2010年にドラマ化の話があったようだ。久住氏ご本人が「『K独のグルメ』のテレビドラマ化の話が来たが、主演が長嶋一茂ということなので、丁重にお断りする。長嶋一茂は嫌いではありませんが、ちょっと。」とTwitterでつぶやいたことが当時話題になっていたこともあった。 その際にネットで挙がった主演候補は、「高倉健」「中井貴一」「役所広司」などだったけれど、おそらく松重豊ほどのクオリティにはならなかったに違いない。ただし、唯一惜しいのは、毎回ドラマ本編の後に、原作者ご本人が登場してしゃべるところ。ユルユルした感じを出したいのかもしれないが、松重豊の静かな後ろ姿を映すドラマ本編で終わり、文字だけでお店の情報を入れるなどの方が、断然美しいと思うのだけど。 一方で、「蛇足」だらけなのが、『花のズボラ飯』だ。キャスティングを聞いた時には、倉科カナは似合いそうだと思っていたが、やたらカラフルでポップな「汚部屋」に目がいってしまい、どうにも料理が色あせてしまう。オマケに、湯気のCGを足したり、「実況解説」なんてのが出てきたりと、余計なもののてんこ盛りだ。料理モノの表現は難しいもので、マンガにおいても、細かく丁寧に描き込んだ上に「うまいゾ」とキャラに言わせてみても、なぜか脳味噌にしか見えない『クッキングパパ』(講談社)みたいな例もあれば、単に白い物体がグニ~ッと伸びるだけでたまらなく美味しいチーズに見える宮崎駿アニメみたいな例もある。 今回のドラマ2作品においても同様に、「いかに余分なものを削ぎ落とすか」が素材を生かすか殺すかの分かれ目になったのだろうか。せめて『花のズボラ飯』が、『孤独のグルメ』とまったく別の時期に放送されていたら、残念感はやや薄まったかもしれないのに……と思えてならない。 (田幸和歌子) 最終更新:2012/11/18 11:45 Amazon 『孤独のグルメ DVD-BOX』 シゲアキが悪いなんて言ってないって! 関連記事 渡部篤郎が『東京全力少女』とは無関係に見せる、滑稽な「男のリアル」朝ドラ『純と愛』、風間俊介の不気味で愛嬌ある“小さい兄さん”ぶり涙涙の『はねトび』最終回に感じた、出演者と視聴者の圧倒的な温度差木村拓哉が新ドラマ撮影現場でファンサービス! 彼を越えるのは意外なアノ人?初回視聴率6.2%の大惨敗も! ゴールデン昇格番組の勝ち組・負け組 次の記事 友情の終わりの輝きを書いた『奇貨』 >