渡部篤郎が『東京全力少女』とは無関係に見せる、滑稽な「男のリアル」
今回ツッコませていただくのは、水曜放送中のドラマ『東京全力少女』(日本テレビ系)。初回視聴率は『相棒 season11』(テレビ朝日系)のスペシャルが裏にあったこともあり、9.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と振るわず、2話以降も8.2%、7.9%と数字を下げ、主演の武井咲には「低視聴率女王」などという不名誉な称号が与えられつつある。
でも、ドラマを実際に見てみると、どうだろうか。正直、とりたてて面白いわけではない。でも、見ていて不快になることもない。また、主演の武井咲も「演技力」云々言われるけれど、独特な声を除けば、アイドル女優としては十分及第点だと思う。にもかかわらず、ここまで苦戦しているのは、「ごり押し」と言って敬遠する層がそれなりにいることが一因としてあるだろう。
同じく武井咲が主演したドラマ『Wの悲劇』(テレビ朝日系)だって、仮に武井咲がまだあまり知名度がない時代に、昼ドラでやったら、それなりに視聴率がとれたのではないかと思う内容だった。
ところで、1ケタの視聴率の中、一番の見どころは、やっぱり渡部篤郎だと思う。渡部篤郎という俳優は、おそらくどの作品においてもアドリブを入れまくりの人なのだと思うのだが、毎度「役柄としてのリアリティ」ではなく、「ちっぽけな男というもののリアリティ」を見事に演じ切ってくれている。
今回のドラマも、渡部篤郎ワールド全開で、
「んもうっ!」
「んんねんッ!」
「○○なのよっ!」
「っさぁ~」(きゃ~? だ~? ちゃ~?)
セリフの随所に、こうした「生」な感じの、文字にはできない呟きがちりばめられている。でも、実際、感情が爆発してしまう瞬間って、ドラマのセリフのようにスラスラ言えるわけでもなく、案外どもったり、かんだり、声が裏返ったりしてしまうものだ。
まして男(というかオネエ?)のヒステリーって、そうそうこういう感じ、と思う。時々、「男って生きものは」と語りたがる男がいたり、「男ってバカだから(笑)」と言いたがる女性がいたり、「男は、サイテーで、そして、男は、サイコーだ。~男ですいません。」なんてうっとりしちゃった感じのCMがあったりするけれど、そういうイメージ的な「男」と違って、渡部篤郎の演じる男は、小心で、みっともなくて、悲しくて、滑稽で、愛おしい。
ドラマの内容とは無関係に、渡部篤郎の演じる「男のリアル」を見るだけでも、このドラマは十分有意義だと思う。つくづく誰も見ていないドラマだということが、惜しまれる。
(田幸和歌子)