週1回スタートの慣らし保育は無意味! 保護者には言いにくい「ああ、カン違い」
保育園経営を始めてみて、保育園に預ける側だった頃と実情はまったく違うことがわかりました。今回は保護者が陥りやすい思い込みや勘違いについて書いてみたいと思います。「ああ、カン違い」、でも保護者には言えません(笑)。
■認可外は認証や認可より悪い!?
保育園選びで一番気になるのは、認可・認証・認可外の違いだと思います。特に認可外は園によって環境はさまざま。駒沢の森こども園は認可外保育園でありながら、認可保育園と同じ基準で作られています。監査で来た東京都の方によると、認可・認証はうちと同程度のスペースに42人入れているそうですが、私はあえて1日の最大定員を30人未満に設定しています。それは、余裕があった方が子どもたちがのびのび動けるからです。保育園の経営を始めるずっと前、目黒区の認証保育園を見学したことがあるのですが、降園時間が近かったせいか、ドアを開けるなりすごい数の子どもが「ママ」と間違えて身を乗り出してきました。怖いくらいでした。
認可保育園は国が定めた基準をクリアしなければなりませんが、認証保育園は東京都独自の制度で、保育室の面積などは都市の事情を考慮した基準が設けられています。うちは保育士数・面積・設備面では認証に変わることが可能ですが、「0歳児からの入園」など今のスタイルを変えないとならない点もあります。習いごとつき保育園なので、1歳からじゃないとちょっと無理かな。認証のチャンスがあってもあえて認可外という道を選ぶつもりです。
■おもちゃの数が少ないと不安!?
入園前に見学に来て、おもちゃの数を気にする保護者もいます。たくさんあればある方がいいと思っているようです。でも、デイリープログラムがあるうちのような保育園の場合、子どもの1日は結構忙しいんです。散歩は1日2回、毎日アクティビティもあります。朝早い登園の子ども以外は、おもちゃで遊ぶ暇がないくらい。
逆に、おもちゃがやけに多い保育園の場合、室内での保育が主だったり、1日中だらだらと遊ばせているだけだったりすることも。おもちゃの“数”よりも、保育の“質”をよく見て、保育園選びをした方がいいと思います。ちなみに、うちで大活躍しているのは、年長さんのお友達にいただいた大きな遊具(滑り台、ブランコ、ジャングルジム)。カラダを使うおもちゃは子どもに人気がありますね。
■異年齢保育は怖い!?
異年齢保育を怖がる保護者もいますが、うちの園では「髪をひっぱった」「手が出るケンカ」などのトラブルはすべて同年代の中で起きています。これは私も保育園を経営する前はわからなかったことですね。むしろ、子どもは少し年上の友達がいた方が、賢くなります。モデルがあるので、運動能力も上がります。年齢が上の子どもからすると、年下を思いやるので心が育ちます。
散歩の時は、大きい子どもが小さい子どもの手をつないでサポートするので、同世代同士で手をつながせるより遥かに安全です。歩きが下手な1歳児はバギーですが、1歳半でもがんばれる子どもは歩かせています。うちの保育園は健脚ぞろいです。
■前に別の保育園に通っていたから「ウチの子はデキる」!?
他園からの転園の場合、母子分離に慣れているので保育がラクかと思いきや、実はどこの保育園から来たかによって変わってきます。「えー、3歳でこんなこともできてないの!?」と正直驚く子どももいれば、「さすがだね」と感心することもあります。保育士のスキルが問われるので、逆に「駒沢の森こども園出身はすごいね」と幼稚園の先生やほかの保育園の先生にいい意味で驚かれたいですね。習いごとプログラムを充実させ、お預かりするだけの保育園と差別化しているので、うちにはデキる子どもが多いのは事実です。
■慣らし保育は週2日から少しずつ!?
子どもが園に慣れるよう、徐々に預ける時間を長くしていく「慣らし保育」。3歳以上ならば必要ありませんが、1歳くらいであれば、慣らし保育は有効です。保護者の方は週2日くらいから始めて、だんだん増やしていくのが理想だと思っている方も多いですが、それじゃ全然慣れません! 一番早い慣らし方は、週5日、朝9時過ぎから昼食が終わるまで預けること。月曜日から始めれば金曜日には慣れているので、翌週は15時くらいまで預けます。そうすると、翌々週は17時や18時まで自然と平気になっているんですよ。
「満1歳のお誕生日からフルタイム」という方もいるのですが、5日目には慣れている気がしますね。意味がないのは、週1日ペースで預けるという行為です。うちは月間40時間からお預かりしているので、週1日の子どももいるのですが、それでは前に預けられた記憶を忘れているので、毎回ゼロ地点。子どもは体調が悪くない限り、規則性があった方が慣れます。「週5日・短い時間から」のスタートが不可能ならば、月水金などのリズムがあった方が早く慣れますね。ぜひ参考にしてみてください。
角川慶子(かどかわ・けいこ)
1973年、東京都生まれ。「角川春樹事務所」会長・角川春樹氏の長女。自身も元アイドルという異色の肩書きに加えて、ビジュアル系バンド好きで、元バン ギャルの”鬼畜ライター”としても活躍。2011年9月1日に「駒沢の森こども園」をオープンさせる。家庭では4歳の愛娘の子育てに奮闘中。