読者座談会連載で「Domani」が面目躍如! 女・妻・母の人生を考える
今月号の「Domani」の大特集は、「35歳、おしゃれも、人生も断捨っていこう!」です。ファッションだけじゃなく、人生まで俎上にあげてきました。どんな壮大な記事になるかと思えば、相変わらずな感じです。同誌表紙モデルの知花くららが8ページにわたって語っている「知花くららの現在を生きるファッション“断捨リズム”論」もタイトルからダジャレかよと思いつつ読み始めてみると、「断捨リ・ジャーニー」とか「“ワクワクで選び抜かれたクローゼット」といった言葉が出てきたかと思えば、いきなりハリー・ポッターの話が出てきたり、耳掃除タイムのお供にさっと目を通すぐらいの内容です。ただ一点評価したいのは、意味もなくカッコよく撮られたモノクロ写真。中でも、Tシャツとパンツという非常にシンプルなカッコで闊歩する知花が、ふとカメラに顔を向けた瞬間を撮った1枚。髪の毛が顔の半分を隠し、髪の毛の隙間から知花のくっきりした目が見え隠れし、ものすごい迫力となっています。2012年、今ここに与謝野晶子を越えたみだれ髪が誕生したことをご報告します。
<トピック>
◎35歳、おしゃれも、人生も断捨っていこう!
◎知花くららの現在を生きるファッション“断捨リズム”論
◎連載座談会「産む? 産まない? する? しない?」
■スイーツ、つけま、結婚が同じレベル
それでは断捨離企画の本丸であるファッションページを見ていきましょう。【Domani的“断捨リズム”宣言】と銘打って、次々といろんな提案をしてきます。「結論! 夏の“白”にはお金かけません!」「結論! “Tシャツ通勤”&“ポロ通勤”します!」「結論! 夏は、全身5アイテムでいこう!」とぶち上げ、白Tシャツ、白シャツ、白パンツを紹介したかと思いきや、今度は黒T、グレーT、カーキポロシャツ、ピンクポロシャツと次々とアイテムが登場。挙げ句の果てには「最後に選ぶのは“ダイヤとパールの一粒ピアス”」「この夏は究極、『白・黒・ブラウン』があればいい!」「『結局これだけ、あればいい!』おしゃれな人のファッション“断捨リズム学”」と、「結局、どれだけあればいいの?」と読者を混乱に陥れる始末。
断捨離の定義をあらためて定義すると、「不要なモノを断つ、また捨てることで、モノへの執着から解放され、身軽で快適な人生を手に入れようとする考え」(ウィキペディアより)という割には、今年の流行りのポロシャツや白アイテムをゴリ押ししていて、「モノへの執着」がより強くなっている気が……。このあたりは「Domani的“断捨リズム”」という言い訳で「事前にツッコミをブロックしています」感が色濃く出ています。
そもそも女性誌は、「はやりの」「マストバイアイテム」とうたって、女性に「消費」を促すための装置。そこで断捨離を真っ向から取り上げたら、ダブルスタンダードもいいところです。なので、いろいろ小手先の技を駆使しながら、「断捨離」というはやり言葉を使ったんだろうなというのが今回の「Domani」の企画意図のような気がします。
ちなみに、「35歳、おしゃれも、人生も断捨っていこう!」の「人生」の部分は、読者の一言ネタ集のような扱いでした。やっぱり……。でも「食後のスイーツやめました!」「つけまつげやめました!」と同列で「結婚生活やめました!」とあり、「Domani」において、結婚はそのぐらいの扱いなんだとビックリした次第です。
■どうやったら家中でスピードラーニングが流れるの?
「Domaniメイツ」という読者組織のメンバーを、「女」「妻」「母」と3つのライフステージごとに分けて、本音でトークする連載座談会「産む? 産まない? する? しない?」。3回目の今月号は、「母」メンバーの回です。前回の「妻」メンバーから質問「お子さんは計画的? それとも自然にまかせましたか?」に答える形で座談会はスタートします。みなさん、基本的には「自然」にまかせて子どもができた派で、「仕事のタイミング」を計っているという「妻」グループの意見に対しては、「でもそれ考えてると多分、一生産めないですね(キッパリ)」と現実を見せつけています。
ほかにも子育てと仕事を両立させる日々の具体例として「私も今英語の勉強中なんですけど、家ではどの部屋も必ず、スピードラーニングが流れるように設定してるんです」と語ったり、結婚相手を見極める話でも「男は顔じゃないって」「生理的に受け入れられる顔」「私も旦那には醒めているかも」とどんどん爆弾を落としていったり、最終的には「二人目問題」と「生涯収入」と「老後のライフプラン」まで話が及んでいます。
この連載が読者に寄与したことの大きなポイントとして、「女の人生は地続きだ」ということをあらためて読者に認識させたことだと思います。我々が普段手に取る女性誌は、主にライフステージでセグメントされています。もちろん表紙にデカデカと「20代前半の未婚女性向き」「30代既婚女性向き」と書いてあるわけではありませんが、子どもアリが前提の誌面作りや企画だったり、「私たちが結婚できない理由」という読み物ページを差し込んだり、自ずと読者を絞っています。そこで問題になるのは、女性誌における「ゴール」のあり方。未婚女性向けであればそれは「結婚」ですし、子ナシであれば「出産」。それ以降については書いてありません。でも、それはあくまで女性誌的なゴールでしかなく、人生においてはほんの通過点でしかありませんし、「結婚」と「出産」の間にも悩みや問題は山積しているはずなんです。そのライフステージの過渡期における問題を、「35歳」という年齢でアプローチをしている「Domani」が拾ったのは、面目躍如といったところではないでしょうか。
ただ、一方でこの連載の内容自体は、とても女性誌的でもあります。今回の「母」メンバー4人のうち会社役員が2人。みなさん、美人でスタイルもよく、仕事と子育ての両立で輝きまくってます。内容もあくまで「女性誌で言う所の赤裸々」の範疇。もちろん4人とも、3~5歳の子どもの母ということで、ある程度落ち着いた時期なのかもしれませんが、子育てはもっと「母親としての理想像」と「目の前の状況に対するいら立ち」のはざまで感情が揺れるものだと思います。ただ、その感情を言語化し、実名顔出しで語るのは難しい。実際に有名人だってそんなことはしていないし、本音を吐露したくわばたりえのブログでさえも賛否両論でした。そう考えると、「Domani」の座談会の内容も「これが女性誌の限界」だということなのでしょう。
この座談会連載、「女」「妻」「母」と一巡しました。今後のどのような展開を見せるのか、バラバラのライフステージを生きる女性たちが何に悩み、どんな答えを出していくのか、興味深く見守っていきたいと思います。
(小島かほり)