“お約束”の積み重ねが誘発? 『理想の息子』のくだらない面白さ
今回ツッコませていただくのは、野島伸司脚本のドラマ『理想の息子』(日本テレビ系)。”かあちゃん”が大好きな高校生の息子と、息子に家を買わせるために思うように操縦する母という設定で、放送開始前には「野島伸司でコメディー?」という声や、 “マザコン”というテーマに対するドン引きの声などが多かった。
だが、視聴率はこれまで13.9%→12.4%→14.0%と、むしろ3回目まできて、数字を伸ばしている。初回を見て「アホらしい」「極端すぎ」「幼稚」と離れてしまった人もいる一方で、2回目から「アホらしくて、ちょっと面白い?」、3回目には「やりすぎでアホらしくて面白い」と、徐々に巻き込まれている人が出てきているよう。
いわゆる「ドラマ通」という人たちが高く評価する「リアリティー」なんて、このドラマにはさらさらない。「緻密な脚本」でも「洗練されたドラマ」でもない。でも、あまりのバカバカしさに笑ってしまうことが、すでに巻き込まれている証なのだと思う。
近年は『セカンドバージン』(NHK)の役柄などでドロドロのイメージもあった鈴木京香だけど、やっぱりこの人、コメディーの方が良い。さらに、息子を演じるHey!Say!JUMP・山田涼介は、これまで演じてきたクールな役どころと大きく異なるが、セリフ回しのなめらかさやテンポの良さ、豊かな表情などが自然で、これまたコメディーが似合っている。
ドラマ内では、「母の勘違い・思い込み→息子への無理難題」「柔道部先輩の頼みによる、主人公の女装」「主人公がいたぶられる」など、時代劇のように「お約束」のパターンが毎回繰り返される。というか、「お約束」部分のみを集めても、ゆうに10分以上ありそうなほど、しつこく(本当にしつこい!)、長くお約束ばかりを重ねていくのだが、そのイライラ感の先にあるのは、これまたお約束の結末=主人公・鈴木大地が放つ「マザコンコアラパンチ」という爽快感。
すべてが、たった一発のソレを導くために踏まなければいけない煩雑な手順のように、イライラすればするほど、最終的にはバカバカしくなって、思わず笑ってしまうのだ。このイライラ感と脱力感からくる笑い、何かに似ていると思ったら、昔なつかしいアクションコメディードラマ『噂の刑事トミーとマツ』(TBS系)ではないか。
気の弱いトミ(国広富之)が相棒のマツ(松崎しげる)に、「トミコトミコトミコトミコ」となじられてブチ切れ・人格変化→突然の爆発的攻撃力という国広の面白さを、30年以上の時を経たいま、18歳のジャニーズ男子の演技の中に見るとは。
「子ども向けのドラマ」と見る向きは多いが、大映テレビにハマッた人たちにも、案外楽しめるドラマかも。
(田幸和歌子)
サンドバッグに飛びついてコアラポーズした涼ちゃんにビビりました
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