実用性なし! 表層的なつくりが31万部発行を支える、不思議な雑誌「LEE」
キムタクさんが大変だァ! と『石田さんチが大変だァ!』(日本テレビ系)みたいな韻で入ってみました。何が大変って、あの「MORE」(集英社)での”やっちまった発言”を覚えていらっしゃいますでしょうか?
「後ろを振り返るのも、車の運転中にバックミラーを見る時くらいしかない」
くぅ~。すみません、何度噛みしめてもカッコよすぎて、自分の中の川平慈英が顔を出してしまいました。レビュー記事の配信間もなく、「バックミラーって振り返って見るもんじゃなくね?」論争が沸き起こったわけですが、「LEE」でもまたおっしゃってます。
「昔のこと、振り返るのは好きじゃないんです。バックミラーは車を運転する時しか見ない主義なんで」
くぅ~。そして、「MORE」にもあった「リンゴ」のくだりも出ています……勘のいい方はお気づきでしょう。この2誌が合同取材だということを。出版界では往々にあることなので、そこはほじくらないでください。なんせ、キムタクさんは忙しいんです。放送目前のドラマ『南極大陸』(TBS系)では、「行くところに行かなければ欲しい映像というのは撮れないんだなと思いました。それを求めて僕らは北海道へ行かせていただいた」(『南極大陸』公式HPより)そう。くぅ~、カッコいい~! なので、キムタクさんの挙げ足を取っている場合ではございません。慈英の顔も3度まで。これ以上、キムタクさんのインタビューを読んでいると、またメイ言を見つけてしまいそうなのでひとまずここでおしまい。
<トピック>
◎渡辺満里奈さんブルックリンへ 素敵ハンドメイドに出会う旅
◎”ゆるトラ”旋風がやってきた!
◎木村拓哉さん「未来へのバトン」
■マジで満里奈に憧れている人、手を挙げて!
冒頭をすべてキムタクさんに持っていかれましたが、「LEE」が女性誌レビューに初登場です。筆者の中で「LEE」のイメージは、深津絵里、栗原はるみ、やったらめったら出てくる白い壁と木の雑貨の組み合わせだったのですが、今月号にはすべてが登場しているからすごい! 「LEE」は期待を裏切りません。
そして、やっぱり「LEE」的な世界観の頂点に君臨する、マリーナこと渡辺満里奈が「ブルックリンへ 素敵ハンドメイドに出会う旅」に登場しています。あれ? 満里奈は「台湾」通じゃないかったんだっけ? ピラティスは? しばらく情報をアップデートしないと、すでに別のものに飛びついているんですね。さすがマリーナ。独身時代は多趣味に生きる「自分探し」の御大として、出産後は「オシャレで自分を持っているママ」の御大として。積極的に「私、満里奈さんに憧れています」と話す人には出会ったことがないのですが、女性誌界隈でのマリーナの影響力が絶大というのもまた不思議。
さて、マリーナは「素敵ハンドメイド」(よく考えると、なんだそれ)を探しにNYまでやってきたわけですが、この企画の構成が実に「LEE」らしさを感じさせます。ロッタ・ヤンスドッターという北欧系のインテリアがお好きな方には知られたテキスタイルデザイナーのもとへ話を聞きに行き、彼女の雑貨を飾るセンスなどを写真に収め、「地元アーティスト発信のショップクルーズ」といってNYのショップを紹介する。「Saita」(セブン&アイ出版)や「すてきな奥さん」(主婦と生活社)のような生活情報誌ほどの実用性は微塵もなく、「Ku:nel」(マガジンハウス)よりも嗜好が絞られていない。それは「LEE」がファッション誌という役割も担っていることが大きな要因だと思いますが、この「なんの色もないけど、なんとなくオシャレっぽい」という表層的な部分、言い換えれば親しみやすさが読者の心を掴み、31万部という発行部数を成り立たせているのだと思います。びっくりでしょう、「LEE」は思いのほか売れているんです。分かりやすいキャラクターや独自の色濃いカルチャーがあるわけじゃないのに、得体のない何かに読者は心引かれているのでしょう。
■「Domani」の寅さん企画は一体何だったんだ?
それでは肝心のファッションページを見てみましょう。今月号の第1特集は「”ゆるトラ”旋風がやってきた!」です。このストレートなタイトルも、今の時代には新鮮。付録のせいで雑誌全体が紐でぐるぐる巻きにされ、表紙のインパクトが優先される女性誌において、これだけシンプルな言葉選びやデザインで勝負できるというのは、固定ファンが多い表れなのかもしれません。
実際のコーディネートも、「Domani」の「寅カジ」特集号より、本当に寅さんぽい「ゆるトラ」コーディネートが並びます。地味に驚くのは、アイテムの値段。下手したら、「Domani」よりも掲載商品の平均単価が高いのでは? と思ってしまうほど。でも、目を凝らしてもただのざっくりニットやボーダーカットソーにしか見えない。きっと素材がいいんでしょう。ただこの素材というのが、女性誌にとって曲者。素材の良さを伝えるにはわざとらしほどの文章を添えるのが女性誌の常ですが、それを感じさせる文章がまったく見当たりません。「LEE」のその潔さは何を訴えているのでしょう? 不思議だ。
全体をペラペラ眺めるだけでは、まったく面白みのない雑誌(失礼!)に思える「LEE」ですが、実は細かい仕掛けがいっぱい。企画となってもうちょっと分かりやすい形になったら、深追いしてみたいと思います。掴みにくいだけにレビューでお伝えできるか不安ですが、来月号も隅から隅まで読む所存でございます。
(小島かほり)
深津っちゃん、今年何度目の表紙なの?
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