健康雑誌のような「婦人公論」は役に立つようで役に立たない!
暑い日が続きますね。夏なのでパーッとしたいところですが、パーッと何をするか具体的な案がまったく思い浮かびません。寂しいっす。こういうときは「婦人公論」でも読んで、ドロドロしたりムラムラしたりするに限るわ……と思うのですが、今号の「婦人公論」はそんなノリじゃありませんでした。どんなノリか、中身をさっそく見てみましょう。
<トピック>
◎特集 残暑の乗り切り方で決まる、これからの心、体、暮らし
◎阿川佐和子さんと考えるおしゃれのさじ加減 大人のフラットシューズ
◎実感特集 震災と親戚 ――絆がものをいう時代
■エロネタが少なくて寂しいです
「緊急保存版」と銘打っている巻頭特集が「残暑の乗り切り方で決まる、これからの心、体、暮らし」。残暑厳しきおり緊急っちゃ緊急かもしれませんが、フタを開けてみればよくある健康ネタで、高島礼子が40代になってから外食を滅多にしなくなったとか、夏こそ甘酒がおすすめとか、水の飲み方選び方のコツとか、そんなもんでした。実用的ではあるのですが、「それを婦人公論でやるか!?」という印象。「婦人公論」の読者は「婦人公論」に実用を求めているんですかね。そういうのは「日経ヘルス プルミエ」(日経BP)あたりにまかせとけばいいんじゃないかな。もちろん「セックス健康法」みたいな記事を忍ばせてておくなら別ですよ。しかし、それもありませんでした。
■ライバルは萬田久子(?)の阿川佐和子
シリーズ企画「阿川佐和子さんと考えるおしゃれのさじ加減」というファッションページ。今号で5回目を迎えるのですが、これまであえて触れていませんでした。というのも、最初のころは、モデル役の阿川佐和子がぎこちなくて、「私がモデルなんて~」という恥じらいも感じられておもしろかったんです。これはぬるく見守っておくべきだと。ところが、5回目ともなると案外本人も「イケてるかも」と勘違いし始めちゃったんですかね。ぎこちないポーズなりに、図々しくもこなれた雰囲気を醸し出しています。そもそも阿川佐和子という人選はどうなんですか。美人だけど女優じゃない、スタイルは並み、でもって作家の娘……って手堅すぎる! 細いけど短足のオバサン体型なので、プロのモデルや女優よりも親しみやすく実用性が高いかもしれませんが、そんなに読者におもねっていいのか!? これまでは周りの記事がブッ飛んでたんで大目に見てましたが、今号は特集が地味なので地味さ倍増。「婦人公論」はこんなフツーの雑誌じゃイカンと憤った次第です。
■気になる話題に迫りつつも……
「実感特集 震災と親戚 ――絆がものをいう時代」は、被災して親戚にお世話になった方のルポ「大地震で痛感、ありがたくも悩ましい血縁関係」が掲載されています。これ、震災後のニュースを見ていてずっと気になっていたんですよ。ニュースではさらっと、「○○さんは避難所から出て、現在は知人宅に身を寄せている」とか言うじゃないですか。でも、それって言うほど簡単なことじゃない。1日2日ならあるでしょうが、長期間になればなるほどキレイごとじゃ済まない部分もあるはず。その経験談がありのまま綴られています。その後には、「ごぶさたでも和やかにつきあえる10のコツ」という実用的なページもありました。
というわけで、今号の「婦人公論」は全体的に実用性が高く、こじんまりとまとまっていました。一般的にはいいことだと思います。でも「婦人公論」がそれでいいのか。そこが問題なわけです。役に立てば立つほど、「婦人公論」としては役に立たないというパラドックス。その中で本当に役に立ったのは、室井滋の連載「オトナ大学わくわく学部」に登場した、元日本マイクロソフト社長で書評家の成毛眞の言葉。
「逆説的ですが、役に立とうという目的で書かれた本は、本質的な意味において役に立ちません」
これは書籍について語った言葉ですが、雑誌にも当てはまります。今の時代、雑誌をあえて買って読もうという人は実用性を求めてはいないと思うんです。役に立つ、立たないという次元を超えた、もっとパーッと目の前が開けるようなそんな体験を期待して読むんです。作り手が「こうすれば面白いだろう」と意図しては実現できない世界。「婦人公論」は、これまでそうした世界を見せてくれました。たまには今号のような送りバントがあってもいいけど、やっぱりホームランを期待しちゃう。がんばれがんばれ、「婦人公論」!
(亀井百合子)
ホンジョが出てるのにビックリ
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