「CanCam」がファッションではなくコンプレックスで読者とつながり始めた!
先月号の「品よく爽やかに生きていく!」特集が好調だったのか、今月号の表紙にはどーんと「ありがごうございます(はーと)品よく爽やか 新生☆CanCam大人気です!」の文字が。先月号もじっくり読ませていただいたのですが、品よく爽やか=新生CanCamだったとはまったく気付きませんでした。失敬。今月号はでかでかと表紙を飾った「品よく爽やか=新生CanCam」特集なのかしらと目次に目を通すと、大特集は「Can流ミニマルライフ入門」。表紙にお礼のメッセージを載せて大特集名を載せないとは、さすが大手出版社はやることが違います。これも創刊30周年記念に向けた、読者囲い込みキャンペーンの一環なのでしょうか。それでは今月号の特集を見ていきましょう。
<トピック>
◎Can流ミニマムライフ入門
◎高橋メアリージュンという生き方
◎這い上がり人生ドラマ劇場
■創刊30周年イヤーは「CanCam」迷走イヤー?
今月号の大特集「Can流ミニマムライフ入門」では、「自分の本当に必要なものは何か? ちゃんと見極めよう」と断捨離の推進特集です。特集紹介文で、「今月のCanCamにも情報は盛りだくさん詰め込んであります。(中略)そのすべてを受け入れる必要はありません。(中略)自分には何が必要か。自分はどれが欲しいのか。その判断はみなさんがしてください。人それぞれ、選び取るものは違うでしょう」と言っています。今までは「男受けを狙うなら小花柄ワンピース」「上司が同席する席にはベージュジャケットで大人めに」と、シーン別”こうあるべき”ファッションを押し付けがましく提案してきた「CanCam」なのに、この変化は何でしょうか。
その答えは、2号前の特別付録「男というものはBOOK」にあります。イケメンたちが理想のコーディネートを作るという特集があったのですが、そこの座談会でイケメンたちはミルキー配色やふんわりシフォンスカートという「Can流」ファッションの代名詞ともいえるスタイルを全否定したのです。代わりに提案したのは、パンツスタイルや色味がシンプルなコーディネート。「Can流」という言葉を誌面で使い始めたころは、「Can流=”かわいい”のスパイラル」と呪文のように繰り返していましたが、先々月号で「Can流=”非モテ”のスパイラル」だったという現実にぶち当たってしまったのです。
特集紹介文の最後は「自分に必要なものを選び取れる女性ってかっこいいよね」みたいな感じでまとめられていますが、要はこれって、「CanCan的にオススメファッションを提案するけど、選んだのはあなただから、それでもモテなくっても責任取らないわよ」ってことなのでは? 表紙で「品よく爽やか☆新生CanCam」と謳っているのに、本誌では一切触れない辺りに、「CanCam」の逃げを感じずにはいられません。
■2ページの女・徳澤直子
コーディネートはまだまだ夏物ですが、バッグや靴などの小物は秋の新作が登場。目新しいアイテムが続々紹介されているのですが、それ以上に気になったのが、ちょいちょい挟まれているモデルの自分語りのページ。「CanCam」卒業モデル・徳澤直子が、出産直前というホットトピックを引っ提げて久しぶりに本誌に登場。初めての海外生活やマタニティライフを紹介していますが、いかんせん割かれているページがわずか2ページ。卒業号のときも2ページだけ……。「徳澤と言えば2ページ、2ページと言えば徳澤」みたいな合言葉が編集部内であるのでしょうか。
さらに、連載「安座間の生き様」で安座間美優が自身のコンプレックスについて語れば、舞川あいくはファッションエディターとプレスの人とオシャレマインドについて語り、高橋メアリージュンに至っては、「高橋メアリージュンとう生き方」という特集が組まれています。歌手になりたい夢とモデルという仕事との葛藤から自分語りが始まり、「CanCamっぽくないないことがずっと苦しかった」だの「泣くのをこらえる毎日だった」だの「心から笑った笑顔を見せたい」だの、軽くデジャブを感じるインタビュー内容。それもそのはず、連載「安座間の生き様」で安座間美優も似たようなことを語っていました。このコンプレックス語りは、モデルの中では鉄板ネタなんでしょうか。そういえば、大先輩・押切もえも、モデルとしてのコンプレックスをネタに『モデル失格 ~幸せになるためのアティチュード』(小学館)なんて本を出してましたね~。安座間美優、高橋メアリージュンは第二の押切もえになれるのか!?
■モデルと読者のコンプレックス祭り
これに呼応するように読者のコンプレックス語り「這い上がり人生ドラマ劇場」が続きます。「デブと呼ばれたあの頃、エビちゃんになりたかった」「友達がいなくていつもひとりぼっちだった私の中学時代・高校時代」「死にたいと毎日思うほど、つらい経験があったから今の私がいるんです」と、つらかった過去をざくざく掘り起こして語っています。コンプレックスって誰でも持っているものだから、それゆえに共感しやすいものでもあります。モデルがコンプレックスを語り、読者も同じように語ることで、「CanCan」がコンプレックスを利用して読者とつながろうとしている感じがするのは筆者の性格がねじ曲がっているせいでしょうか? ただ、安座間美優や高橋メアリージュンの語りが、どれだけの読者の心に響くのか。内面を見せる特集こそ、絶対的な存在が必要なのに……。「CanCam」を象徴するモデルは一体いつ現れるのかと言い続けてどれくらいたったのでしょうか。創刊30周年記念号までに最年少エースの土屋巴端季がどこまで伸びるのかを期待して待ちたいと思います。
なんだかコンプレックスばかり目についてしまった今月号。イケメンに「Can流」ファッションをズバっと斬られたのが相当ショックだったのか、「モテ」というワードをほとんど見なかったように思います。「OL以外の女子の職業図鑑」という”OLのバイブル”である「CanCam」の根本の揺るがしかねない特集を組んでいて、モテ女子から働き女子への移行を図っているのかと勘繰ってしまいましたが、「細かすぎて伝わらない私の胸キュン」という、ものの見事に伝わらないマニアックを越えて独りよがりな恋愛小ネタを挟んでくるあたりに、「CanCam」が働き女子に目覚めることはもうしばらくないな、と安堵した次第です。
(エメラルド真希)
「Can流」ってやっぱ意味わかんないや
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