異業種参入のビューティ業界、化学的根拠と”女ごころ”を掴んだヒット作はコレ!
以前も書いたように、異業種からの美容業界への参入が活発化している。特に最近目立つのが製薬会社から発売されている「女ごころ」を掴んだピンポイント商品だ。今年目を引いた商品がどのように女心を刺激し、消費行動へと移させているのか検証してみた。
■「これがあったら、いいのに!」という潜在ニーズを形に
◎「デュアタイムコーア」興和株式会社(第三類医薬品)
朝と夜との肌環境の違いに着目し、朝用には紫外線等に対する抗酸化作用のある「ビタミンE」を配合し、夜用には乾燥しがちな皮膚の保水に寄与する「ヨクイニン」を配合している。注目する点は、朝と夜はアイテムを変えてスキンケアするように、肌の内側のケアも、朝と夜に分けて効果的・効率的にケアするという点。特に「大人のニキビ・肌荒れ」という多くの女性が慢性的に悩まされている、なんとなくの肌調子の悪さを改善するという明確なアプローチを打ち出しているため、今までサプリメントの飲用を続けられなかった人も使い続けやすいのではないか。朝・夜でパッケージのカラーを変えているところも分かり易く、モチベーションをあげる効果あり。
◎「アットノン」小林製薬株式会社(第二類医薬品)
気になる傷痕・やけどの痕を改善していくジェルタイプの傷痕改善薬。この商品については、肌の露出が増えるいまの季節に特に需要が増える。昔の古傷までを癒やしてくれるなんて、傷の治りも遅くなり消えにくくなってきてしまっているアラサー以上の女性にとってはありがたいことこの上ない。傷は治っているのに、赤みが残っていたり盛り上がっている傷痕にも有効というのだから頼もしい限り。
◎「ケアレケア」池田模範堂株式会社(第三類医薬品)
ムダ毛処理などで傷んだ皮膚組織をしっかり修復する「アラントイン」と、傷んだ皮膚を元気にするビタミン「パンテノール」を配合している。お肌にしみにくい処方というのもうれしい。この商品が受け入れられやすいのは、「ムダ毛処理後」という特に肌荒れを起こしている状態の肌に限定する明確さ。「ケアレケア」という、そのまんまなネーミングも秀逸だ。なんとなく、自分で処理をしていると肌が傷みそうだな、と思っていてもそのままにしていたり、肌がヒリヒリしているのに、香りが良いというだけで選んだボディークリームを塗りこみ肌荒れをしてしまっている女性たちには待望のアイテムだ。「カミソリ負け」して当たり前の時代は終わった。まさに「カミソリ勝ち」できる商品の登場だ。
◎「ムヒホワイティ」池田模範堂株式会社(第二類医薬品)
虫さされによる痒みをすばやく止めるだけでなく、「虫さされあと」を残さない商品。組織修復成分(アラントイン)配合により炎症や掻きこわしによってダメージを受けた皮膚を治療する。加齢とともに、虫にさされた痕がなかなか消えなくなってくる。虫にさされた痒みよりも、赤黒く残ってしまうであろう虫さされ痕のほうを気にかける女性も多いことだろう。
虫さされ痕が身体のあちらこちらに残っている肌は見た目にも美しくないが、女としての品格みたいなものを一気に下げてしまうからやっかいだ。顔にいくら高価な美白ケアをしても、身体が虫さされ痕だらけではビューティは台無しだ。そんな泣きっ面に蜂状態だった虫さされ女子を救う「ムヒホワイティ」。ホワイトニング命の女性にもぜひおススメしたい。
■製薬会社に求められる化粧品は、ニーズを繊細に拾った大胆な商品
さまざまな異業種が美容業界に参入してくるが、自分たちの得意な分野を存分に生かして商品化している会社が伸びている。「薬を売っているのが製薬会社」という当たり前のことを女性の心理を掴みながらも堂々と直球勝負で開発し発売している商品にエネルギーを感じる。
これまで化粧品会社では追求し得なかった治験に基づいた商品開発を打ち出せるのは製薬会社ならではの強み。製薬会社には、心地よい香りやテクスチャーといった部分より「治す」という部分に一歩踏み込んだコンセプトの商品を生み出していき、女性消費者がこれまであきらめていたニーズを拾い上げ、”ケア”していく使命があるように思う。
今後、化粧品会社との壁がなくなり、より市場争いに熱が入るだろうが、消費者が安心して使えるアイテムを確実に投入していくことで「製薬会社」というブランドが生きてくる。そのためにも、今後は消費者の欲しがるものを繊細に察知しながらも大胆に商品企画ができる優秀な人材が求められてくるだろう。
恩田雅世(おんだ・まさよ)
コスメティックプランナー。数社の化粧品メーカーで化粧品の企画・開発に携わり独立。現在、フリーランスとして「ベルサイユのばらコスメ」開発プロジェクトの他、様々な化粧品の企画プロデュースに携わっている。コスメと女性心理に関する記事も執筆している。
■公式ホームページ「オンダメディア」
小林製薬の独壇場ではなくなったということです。
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