サイゾーウーマンカルチャー女性誌レビュー嫁MOREと林真理子……激しい”幸せの押し売り”に勤しむ「MORE」 カルチャー [女性誌速攻レビュー]「MORE」12月号 嫁MOREと林真理子……激しい”幸せの押し売り”に勤しむ「MORE」 2010/10/30 21:00 女性誌速攻レビューMORE 「MORE」2010年12月号(集英社) 今月号の付録はビッグトートです。また狭い我が家が「MORE」からの望まれないトートバックで埋め尽くされていきます。質素なアラサー読者の財布事情を加味したファッションページも、闇が深い心理状況に寄り添う読み物ページも充実している「MORE」ですから、某おまけつき雑誌の挑発に乗らずとも中身だけで十分勝負できるはず。「No MORE 付録!!」と叫ぶ勇気を、ぜひナンバーワン女性誌自らご英断頂きたいものです。何より大事な地球資源。アースでエコロジーなCMに出演し、実生活では黒い噂のダンナをもポイ捨てしない女、表紙の宮崎あおい様を見習いましょう! そんなこんなで今月のラインナップをどうぞ。 <トピックス> ◎旬靴×新レッグアイテム 革命コーデ78 ◎クールOLえみVSアイドルOL麻里子 ◎嫁MORE ■甘口OLの密かな欲望 足元コーデ最新事情はすっと飛ばしまして、最近の「MORE」の定番となりました鈴木えみVS篠田麻里子のOLコーデ企画から。サバサバお姉さん系えみと、愛されかわいいOL麻里子の対決は、モハメド・アリVSアントニオ猪木の異種格闘技戦同様に見る者を圧倒します。 仕事よりも恋愛、社内や合コンでのお誘いはひっきりなし、そしてちょっぴり天然……「MORE」がかつて声高に提唱していた”上手ちゃん”を絵にかいたようなタイプの麻里子。ピンクにミニスカ×ニーハイの鉄板コーデに身を包み、片思いの彼(宅配便のお兄さん)に「これ、あなた行きです(はあと)」とラブ小包を渡す……毎度のことながらこの設定を考える編集さんの抜群のセンスに頭が下がります。一方仕事はできるが私生活はマンネリ気味の鈴木えみには、フランスから来た中年上司(既婚)にくらっとさせたり、合コンで演歌を熱唱させたり、ミスした後輩を仁王立ちで説教したりと、完全に過渡期キャラ。 サラリーマンが決して気楽な稼業でなくなった昨今、こんな浮かれたヤツァいねぇよというツッコミも聞こえてきそうな妄想OLですが、これこそが日本の平均的OLさんのささやかな願い。身近な恋愛、ちょっぴり海外が絡むくらいの仕事……ただひとつ気になったのは、麻里子OLの片思いの相手の名が”ヨシダシゲル”って…。大物食いで知られる麻里子様へのオマージュと受け取ってよろしいのでしょうか? 一筋縄ではいかない「MORE」は、時々こういう爆弾しかけてきますよね。芸が細かいんだから~。 ■幸せの押し売り反対!! 約30ページを割いての結婚特集「嫁MORE」。「MORE」では「パンテーン」とコラボした”ティアラプロジェクト”というキレイな花嫁さんキャンペーンを3年前から展開しています。結婚が決まったお嬢さんがパンテーン14日間チャレンジに参加し美しい花嫁に変身するという、当人以外は120%どうでもいい企画です。その様子を収めたDVDが付録として付いていまして、見てしまいました。 すると、どうしたことでしょう……指が勝手に早送りボタンをクリックし、最大32倍速になっても無意識に「カチカチカチカチ」してました。怖いです。ついうっかり辻ちゃんのブログを読んでしまった時にも感じた「時間を返して」な気持ち。どうぞ取り扱いにはご注意ください。 結婚特集はジュエリーに式場に結婚相談所にはては妊娠検査薬まで、芋づる式に関連した広告が引っ張れる、素晴らしい企画なんだということを再確認。と同時に、花嫁商法というドル箱に安易に手を出した「MORE」への少しの失望と、延々と続くオチのない幸せ話って下北あたりの飲み屋で劇団員が繰り広げる演劇論に似てるなぁと、いつになく遠い目になった嫁ページでございました。 ■MOREにもう一人のマリコが! 今月号のさらなるお楽しみ企画は、恋愛小説の大家(本文より)林真理子センセイによるプレミアム恋愛相談室「林真理子さん教えて!上手な恋の磨き方」です。「ホテルのラウンジにかつての恋人を呼び出せ」だの、「別れた夫の慰謝料で生活はできるけど刺激が欲しい」とうそぶけだの(共に『STORY』より)、素直なMORE娘にはにわかに信じられないような仰天アドバイスしか出てこないのではと不安でしたが、思ったより普通の発言が続きます。 ただ「5年前に元カレと別れて以来、なかなか人を好きになれません」というお悩みに、「昔と違って今はカレがいないとすごくみじめということはありません」としながらも、「ただし、女子として絶えず磨いて恋愛の勘を錆びさせないように(中略)男友達が2~3人いて多少のドキドキ感もあって、恋人昇格の可能性もあるというくらいの環境がいい」と伝家の宝刀「上から目線」。 親が結婚しろとうるさいというお悩みには、「独身の娘は(結婚した娘より何かと世話を焼いてくれるから)逆にありがたがられる可能性大」と”嫁MORE”を真っ向否定。インタビューでは尊敬する渡辺淳一氏の言葉を借り、「人生の後半になって過去を振り返るとき、誰を好きだったか、どんな恋をしていたかに思いをめぐらせるもの。仕事のことを思い出す人はほとんどいないんですって(笑)」。この場合(苦笑)もしくは(爆)ではないかと思うんですが、とにかくそういうことらしいんで。もっと恋をしなさいとセンセイは訴えます。 しかし恋愛における努力の方法を「デートの時に手作りのお弁当やサンドイッチをもっていくとか」としたあたり、センセイの上得意であるバブル世代ではなく、地味で質素なアラサー世代に向けてメッセージも庶民視点にモデルチェンジさせたのでしょう。そして1月号より同誌で連載小説まで始めるというではないですか! なんでも「ファッション業界のリアルな裏話やドラマティックな恋愛模様」が飛び交うオシャレな内容とのこと。とっかかりはライトな恋愛相談で懐柔し、いざ入信すると「悪女になれ!」「恋愛は人生のレフ板!」などハードな戒律を強要される真理子教。でも、幸せの押し売り的嫁MOREよりも、真理子教に殉じてギラつく人生の方がちょっぴり楽しそうなので、1月号の連載を楽しみに待ちたいと思います。 今月は”嫁MORE”をはじめとして、恋も仕事もうまくいく”コミュニケーション美人”講座や、忘年会シーズンに向けての正しいお酌の仕方、男子ウケする”薄盛りメイク”指南など、全体的に女子力アップを強化することに終始していました。自分がどうしたいかよりも、他人にどう思われるかが重要なMORE世代。それはこの社会状況を生き抜く生活の知恵かもしれませんが、それだけに「ワタシが大将!」林真理子という起爆剤がどう作用するのか。こうご期待です。 (西澤千央) 「MORE」 あおいちゃんは結婚もエコなんだね~ 【この記事を読んだ人はこんな記事も読んでます】 ・“不老不死”美魔女たちから売られたケンカに、どうする「MORE」娘!? ・「MORE」400号記念で、「谷亮子研究」を掲載した意味を考える ・「MORE」の王子様像? 小栗旬と生田斗真がアツイ「バカで最強な」俺たちトーク! 最終更新:2010/10/30 21:00 次の記事 チケットがまったく売れない! それでも続く赤西仁の夜遊び >