手前味噌の発動装置として働く『国際ドラマフェスティバル』
――毒舌コラムニスト・今井舞が、話題のアノ人物やアノニュースをズバッとヒトコトで斬り捨てる!
◎結局誰のための賞なの?
『国際ドラマフェスティバル in TOKYO 2010』。見るからに権威のカケラも感じられない催しである。「作品賞グランプリに輝いたのは『JIN-仁-』です!」「『Mother』が優秀賞を取りました!」って、各局とも自分とこの受賞しか伝えないしな。既成の権威ある賞であるかのようにアナウンスすることで、本当の権威を取りつけてしまおうという我田引水がプンプン匂う。なんか「金賞受賞!」が多すぎて、ちっともありがたみが感じられない「モンドセレクション」を彷彿とさせる。青汁が金賞受賞するモンドセレクションと、去年のドラマにグランプリを与える『国際ドラマフェスティバル in TOKYO 2010』。眉ツバ加減がよく似てる。
◎人間活動の予習と思えば
「心のこもってない『商品』です」と、ファンに対して自身のベスト版を買わないよう呼びかけた宇多田ヒカル。いろんな経緯があったんだろうが、この発言から感じられるのは、アーティストのこだわりうんぬんよりも「一生食うに困らない人間の余裕」だな。レコード会社も引退前に稼いでおきたいのだ。ここはひとつ、「金持ちケンカせず」ってことで。
◎怒る気力もなくす……
59歳の男性小学校教師が生徒に振らせていたと話題になっている「セクハラサイコロ」。注目すべき点はいろいろある。まず、現物が自由に手に入るという点。各局とも、生徒のインタビュー時にその前に置いたり、実際に振って目を出したりと、好き勝手に扱っていた。各マスコミが順番を待って皆で使っていたかと思うと味わい深い。使いこまれて、角が丸く、イイ感じの色になっていた点もしみじみ。そして、「セクハラ」の項目の一つに「ツバ」の文字があったことには、何だかもう感無量だ。「ツバ」ってコレ、普通の人には中々出て来ない感覚だよなぁ。59歳のこの教師に、マニアとしての真摯さを見た気がした。思わず襟を正した。
今井舞(いまい・まい)
週刊誌などを中心に活躍するライター。皮肉たっぷりの芸能人・テレビ批評が人気を集めている。著書に『女性タレント・ミシュラン』(情報センター出版局)など。
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