女子カルチャーの衰退か躍進か? 東京ガールズコレクションが示す現在地
この春開催された二つのガールズコレクション。人気モデルが出演し、人気のブランドの新作をチェックできるという同じコンセプトのもと始まった、赤文字系筆頭の東京ガールズコレクション(以下、TGC)と、青文字系・ストリート系の原宿スタイルコレクション。現在のガールズカルチャーの中で対照的な関係にあるこの二つのコレクションのそれぞれの意味と、ガールズカルチャーを取り巻く現在の状況とは? 第一線から見つめ続けている米原康正氏に聞いた。
■ガールズカルチャーを”メガメジャー”化した見本
――TGCは今回で10回目の開催と、区切りの良い時期ですが初回から見てきて変化はありますか?
米原康正(以下、米原) 当初のTGCは、その時の旬のブランドを旬のモデルで見せましょうっていう、良いコンセプトで始まったんだ。当時は、ハーフモデル系がメインでウケてて、ブランドは109系が受けていてから、その二つを集めてショーをやりましょうっていうのが始まりだったのね。女の子たちに本当にウケているものを見せるっていうイベントは、それまで日本になかったから、それってカッコいいなと思ってた。でもそれが、3回目からはガラッと客層が変わった。
――それまでと大きく変わった理由はなんでしょう?
米原 最初のころは、「一緒にギャルカルチャーを作りましょう!」っていうイベントだったんだよ。女の子の文化観を打ち出していこう、っていうね。ギャルカルチャーの最もいいところって、「egg」(大洋図書)みたいにモデルもストリートも並行で、そこにヒエラルキーがないところ。TGCではそれが成立していて、モデルと客席が同列だった。でも、いまはヒエラルキーができちゃったのね。芸能人が1番、モデルが2番で、客席が3番。これは下の人間が上に憧れて、上の人間が買ってたり、持っているものを買うという、完全なアメリカ式の消費システム。そこで物が売れて消費が回る。でも、そのシステムでもっと消費を回すためには、いろんなとこで確固たるヒエラルキーが必要になってくる。その結果客席とステージにものすごい溝ができてしまった。「一緒にカルチャーを作りましょう!」というノリがウケていたTGCが、商業ベースのものに変わってしまったというのが、現在のTGCだと思うんだ。
――カルチャーよりとにかく消費を、という思考が中心になってしまったんですね。
米原 スポンサーの人たちは女の子に興味ないからね。「洋服の青山」がTGCに就職用のスーツを出すのも、我々から見たら「それって何?」って思うじゃん。TGCって、ギャルカルチャーがコンセプトだという理解があれば、就職スーツなんて打ち出さないでしょ。そこで「?」が出てこない人たちがTGCに関わってるのが、いまの状況だよね。「適材適所」じゃない。TGCにスーツっていうのが、象徴的だよ。
――どうして、そこまでスポンサー中心になってしまうのでしょうか?
米原 例えば、1万5千人集まったから、「万歳成功!」じゃなくて、「じゃあ2万人集めるためにどうしたらいいか?」って考える。ウケた理由を大切に守って、「2回目3回目も続けていきましょう」ってならないじゃん。政治が働いて、「もっと人を集めましょう」っていう意見がメインになってくる。それは出版業界もそうだけどね。現状維持の意見が少数意見になる。それで、人を集めようとなったときに、「芸能人呼ぼう」とか「人気のあるバンドを入れて、エンターテインメント色強くしましょう」って方向に進んでいくんだ。それがいまのTGC。僕は、始めの頃のTGCが大好きだったから、初期に戻ってほしいってすごく思う。
――登場するブランドもそうですが、モデルのカラーも統一感がありませんよね?
米原 最初はギャル系のモデルがメインだったはずなのに、コンサバのモデルたちがドンって入ってきた。いろんな事務所の政治力がかかってるんだけど……。それって、初回から見てる女の子たちは「なんで?」って思うよね。出演モデルの中でも、絶対ジャンルが被らないって子がいっぱいいるじゃない。でもスポンサーとか代理店のおじさんは「モデル」の一括りで捉えるから、誰でもいいわけよ。そして、スポンサーがついてテレビCMが流れるようになって、テレビ好きで興行イベント好きの子たちが客席を埋めるようになっていく。でも、日本でメガメジャーになるっていうのは、そういうことなんだろうなって思う。メガメジャーになった瞬間に、”ファッション”からは遠いところに来てしまったけどね。今回一番盛り上がったのは、「はるな愛」だよ。それを喜ぶのって、ファッション目的じゃなく、「テレビでやってたから来る」っていう子たちなんだよ。「コルテオ」みたいな興行イベントと同じ感覚。でも、そこを相手にしないとメガメジャーにはならないんだ。
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