真面目に語るほどにおかしなことに……NHK教育によるラーメン特集
あなたはラーメンの魅力を、外国の人になんと説明しますか? しかも英語で。
今回ツッコませていただくのは、1月19日放送のNHK『トラッドジャパン』。
番組冒頭のナレーションで「日本の文化を英語で伝える」と告げている通りの語学番組で、様々な角度から「日本」が紹介されていく。これまで取り上げてきたテーマは、「寿司」「花火」「紅葉」「折り紙」「城」といった、”スシ・テンプラ”的なド真ん中なものがあれば、「東京タワー」なんて回もあった。また、「広重」「織部焼」「桂離宮」など、かなり絞り込んだテーマで1本まるごと展開しちゃうことも。日本文化をいったん噛み砕いてから、再構築したような形での解説がなされるため、見るとそれなりに「なるほど」感が味わえる。英語力とともに、案外知らない日本の文化の知識も得られる、いい番組である。
さて、「ラーメン」。もはや中華料理ではなく立派な日本料理だと言われることも多いが、「こういう”日本”もアリか!」と、妙に納得してしまった。「職人たちが日々しのぎを削り、進化を続けている日本のラーメン。その魅力を英語で説明してみましょう」という、若干スケールの大きいナレーションから始まったが、どんな紹介をされるのだろうか。
「ラーメンは好きですか?」
番組講師の江口裕之が尋ねる。尋ねる相手は、向かい合って座っているイギリス人男性コメンテーターのステュウット。番組はいつもこの二人の英語でのやり取りを中心に進んでいく。ステュウットは味噌ラーメンが好みだと答えるのだが、ペラペ~ラとしゃべる英語の中に、「サッポロ・ミソラーメン」という単語が聞こえてくるだけで、間抜けな感じで面白い。それを江口さんが「アイ・ライク・ハカタラーメン」と返してくる。なんでも福岡が「第2のふるさと」ということだが、それを「ソウルフード? 懐かしの味ということですか?」という形でステュウットなりに得心すると、「イエス・イット・イズ!」と笑顔の江口さん。なんだろう、このやりとり。
二人の愉快なラーメン談義は続く。ステュウットさんが
「イギリスではカップラーメンをポットラーメンと呼びます。あの容器はcupではないですからね」
と指摘すると
「形としてはそうですが、長年の呼び名に私は親しみがあります」
と、好戦的に受け取る江口さん。さらに「トッピングで何が好きか」といったどうでもいい話にもなっていくが、「私はチャーシューが好きです」というステュウットさんの情報を引き出して、どうなるというのか。「アイ・ライク・チャーシュー」という英文が重要なのか。すると、「辛子高菜が大好物ですね。博多ラーメンに合うのです」と博多ラーメンを押しまくる江口さん。「食べながら足すと、スープの味の変化も楽しめます」と、どこまでも高菜の魅力を語り続ける。
今度はイギリス人であるステュウットさんの目から見た、ラーメン版「ここがヘンだよ日本人」。人気店の行列を取り上げ、「(ラーメンは)それ程大切なものですか?」。それに対して、「遊園地に並ぶことにも似ていて、並べば並ぶほど期待が大きくなり、いざラーメンにたどり着いたときの喜びが増すのでしょう」と、江口さんが熱いコメントを返す。それに対して「逆に残念なこともありますけどね」とシニカルだ、ステュウット! そう言われれば、江口さんも「そうかもしれません……」というばかり。
そもそもステュウットさんは、あんまりラーメン好きじゃないのかもしれない。「英国のメディアでは、ソーセージ特集やフィッシュ&チップス特集はあまりないです」と日本のラーメン報道の熱狂ぶりを皮肉ったり、イギリスではインスタントラーメンは「それほど人気は高くありません」、さらに、中華料理店に行っても、「焼きそばを選ぶ方が多いです」とか、ちょっと温度が低い。それらにコメントを返しているうちに、博多ラーメンが超食べたくなった様子の江口さん。
「酒の後の『シメ』として、西欧でも人気が出ると思います」
放送時間が夜の11時台ということもあり、見ている方もラーメンが食べたくなってきた。しかし、イギリス紳士はウイットたっぷりだ。
「どうでしょう。我々が夜に食べるベーコン・サンドに勝てるでしょうか」
ブリティッシュジョークなのか? 江口さんは、どう返す?
「……本当に豚肉が好きなんですね」
”リアリー・ライク・ポーク”と。ウイットを返しきれず、なんだかムキになってイヤミみたいになっちゃった。大丈夫、ベーコン・サンドに圧勝だと思うよ。
そのまま流麗なピアノミュージックが流れてきて番組は終了。しかし、ラーメンに熱狂する日本人が若干理解できなさそうなステュウットさんの着ている白いTシャツの胸元には、黒々と大きな文字が書かれているのである。
「ラーメン魂」
と。誰よりも熱そうだ。シュールコント番組なのか? とりあえず、”ポットラーメン”でも食べますか。
(太田サトル)
『ここ変』の激怒は今も忘れられません
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