小室はちょっと……カヒミ・カリィが全盛期に語ったあんなコト
今月上旬、カヒミ・カリィの結婚が伝えられた。このニュースを見て、いろんな意味で衝撃を受けた。まずカヒミの年齢。41歳、アラフォーだ。「アラフォー」と言い換えると、フランス人形のようなカヒミ様も途端に”生身”っぽくなる。『ひるおび!』(TBS系の情報番組)を見ていそうな。
経歴もなんだか。スポーツ紙によると代表作は「ちびまる子ちゃんの主題歌」で、「渋谷系アーティストの代表的存在」となっていた。まあ、実際その通りなのだが、改めて言われると、当時それがオシャレだと思ってたことが小ッ恥ずかしい。人間、踊らされたことを後悔しないで生きたいものである。で、結論として、カヒミは一般に「あの人は今」状態だということがよくわかった。
実際、90年代以降に生まれたナウなヤングの中には、カヒミのことを知らない人もいる。「え、外人?」と言う人も。そうだよ、カヒミはフランス人以上にフランス人なんだよ! とカヒミのおしゃれっぷりをいくら説明してもきっと伝わらないだろう。ということで、カヒミの90年代おしゃれ名(迷)言集を勝手にお届けします。題して、渋谷系を知らないヤングに捧げる「K.K.K.K.K」(カヒミ・カリィは・婚・活なんか・きっとしてない)。
カヒミ・カリィって私の人生の中では目的じゃないんですよ。なんか私の歩んできた結果がカヒミ・カリィになってきちゃってるっていう感じで。(「音楽と人」 95年9月)
海外に出たいとか、全っ然ないんですけど……(中略)ただ放っておくと、私の周囲の気が合う人って日本人じゃない人がたまたま多くなっていって。(「音楽と人」 95年11月)
出た! 「いいと思ったものがたまたまブランドものというだけ」理論!! こういうことをサラリと言えちゃうところに、当時の大学生たちは憧れを感じたわけです。
フランスに行ったらみんなシケモクしてて—-。(中略)私はフランスで全然平気でシケモクとかしてて。で、日本に帰って来てそうすると、『えーっ!』って(笑)、みんなが『シケモクぅ!?』って感じなのね(笑)(中略)っていうか、シケモクって日本だとカッコ悪いっていうことを初めて知ったんですけど—-(中略)私全然……そっちの方が変だなあと思って。周りを気にしすぎっていうかね。(「音楽と人」 98年6月号)
このシケモクの話は別の媒体でもうれしそうに語っていた。シケモクに自由な空気を感じるとは、90年代はどんだけ窮屈な時代だったんだろうか。なりふり構っていられない大不況の今では、どうでもいい話である。
例えば凄い大きなレコード会社の有名なプロデューサーの人がいきなり私のところに来て、『僕が全部プロデュースするから、曲は今売れてる人たちに書いてる○○さんに作ってもらおう』とか(中略)、そういうこと言われても絶対やってなかったですからね。(中略)それからなんだっけ、小室……。(インタビュアー:「小室ファミリー?」)とかって言われても、『それはちょっといいですぅ(←遠慮がちに)』って感じ(笑)(「音楽と人」 98年6月号)
なにげにdisられている小室。当時は小室ファミリー全盛期だった。強者どもが夢の跡。小室も今はアウトロー。現在の小室ならコラボもありでは。ないか。
フランスでレコーディングするっていうことにしても、二人(※カヒミとプロデューサーのモーマスのこと)ともフランス人じゃなくて外人で、でもゲンズブールが好きだったりとか。何かそういう感じのところ、特殊なフランスかぶれの外人っていう共通点があって。ちょっと面白いのが、同じフランスかぶれでも、私はちょっとイギリスよりで、モーマスはちょっと日本よりな感じがするの。(「月刊カドカワ」 95年11月)
そうそう、ゲンズブールとか(笑)。自分で「フランスかぶれ」と呼んじゃうあたりも、気取りのなさが表れてていい感じ。自然体、自然体。
そのほか、「職業はカヒミ・カリィ」とも語っていた。あのルックスだから許される言葉である。立ち位置的には矢沢永吉や長渕剛らと似ている。”信者だけで勝手にやってて”的な。いや、それはオシャレの基本なのかもしれない。流行は巡る。それを追いかけようとすると、あくまで”追いかける”ことしかできない。だが、自分のスタイルを貫けばひととき時代遅れになっても、またいつか時代の先を行くことになる。ほんと、憧れます。どうぞお幸せに!!
(亀井百合子)
亀井百合子(かめい・ゆりこ)
1973年、東京都の隣の県生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスライターに。ファッション誌やカルチャー誌のライター、アパレルブランドのコピーライターとして活動中。
旦那は体育会系なのね。
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