ベタな展開に隠された”リアル” NHK『だんだん』が描く夫婦の実像
今回ツッコませていただくのは、これまでも何度も登場しているNHK朝ドラ『だんだん』。
「何度もツッコミって、結局、夢中ってことじゃん!」と、逆にツッコミが起こりそうなところだが、毎度様々なツッコミどころを用意してくれる同番組で、この日は「オトナ」な手打ちが見られた。
このドラマの大まかなストーリーは、互いの存在を知らず、島根と京都で別々に暮らしてきた双子の姉妹(マナ・カナ)が、18歳の誕生日に偶然出会ってしまい、互いの運命が変わっていく……というものだ。
双子ののぞみ&めぐみの父母であり、元夫婦の田島忠(吉田栄作)と一条真喜子(石田ひかり)、そして忠の現在の妻・嘉子(鈴木砂羽)との三角関係がじわりじわり、ドロドロとこれまで描かれていたが、今週に入って急展開。
頻繁に連絡をとりあう元夫婦の関係を黙認し、ガマンし続けてきた妻の怒りがとうとう爆発。離婚話が持ち上がる→妻が家出&元妻を訪ねるという、昼ドラ並みのベタなストーリーとなった。
まず驚きだったのは、20年ほども長年連れ添ってきたはずの現妻が、嫉妬心のあまり、わずか一年数カ月一緒にいただけの元夫婦の生活に対して「(自分は)勝てない」と言い切ったこと。さらに驚きだったのは「あなたの心の中にはずっと真喜子さんがいるが!」となじり、栄作のほうもそれを否定することなく、「じゃ、どうしろというが!」と逆ギレしたこと。
カッときた栄作が勢いでそのまま離婚届に判を押す姿を見たら、「だから以前の結婚もすぐ終わったのね……」と気持ちもさめそうなものだが、ここからさらに驚きの展開が起こる。
二人とも涙を流し、栄作が「おまえが好きだが」とたった一言告げたその瞬間、二人の心にあった厚い氷が熱湯を浴びせられたかのように解け、なぜか熱い抱擁が……。
怒りが沸点に達した直後のこの数秒間での変化、「途中の回を見逃したのか?」と思い、録画を巻き戻して確認してしまったほどの変わり身の早さであった。二人の間ではこれまでの長い長いわだかまりが、このたった一言で一気にクリアになってしまったようである。
そして、翌朝。上機嫌で冗談をとばす鈴木砂羽の姿があったが、これ、誰がどう見ても「昨夜、なにかあったな(ニヤニヤ)」の展開ではないだろうか。
「あんなに大騒ぎしていたのに」「家出までしたのに」「離婚届に二人とも判を押したのに」「元妻の家にまで押しかけたのに」、それらを全部一気に吹き飛ばしてしまう夫婦の「一夜」。
「カンタンすぎるだろ!」とツッコミたくなるが、実際、現実って案外こんなもんかもしれない。そういう意味では、あまりにリアルすぎる夫婦のやりとりなのだった。
(田幸和歌子)
この時も展開が早かった
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