シジミボクサー・吉田栄作、必殺「ジョレンアッパー」って何だ?
NHK連続テレビ小説『だんだん』、全体の3分の1を越えたところで展開した「栄作ボクサー編」、今回はここにツッコませていただきます。
生き別れの双子であった、島根の高校生でストリートミュージシャンの田島めぐみ(三倉茉奈)と、祇園の舞妓・一条のぞみ(三倉佳奈)。この二人が出雲大社で運命の再会を果たしたことから物語は始まり、姉妹それぞれの背景である「祇園の世界」と「歌手の世界」の両軸を中心にストリーは展開してきた。
そこに今回割り込んできたのが、姉妹の父親である元ボクサーのシジミ漁師・田島忠(吉田栄作)の「ボクシングの世界」だ。しかも、実は忠には世界チャンピオンすら狙える実力もあったというビックリ設定!
このボクシングパート、元トレーナー役の赤井英和を筆頭に、薬師寺保栄、井岡弘樹、徳山昌守、山口圭司と、歴代チャンプがズラリと並び、ムダに力が入っている。
ある日、忠が突然、
「オラ、もういっぺんボクシング、やってみたいだ!」
的なことを言い出した。双子の娘の片割れで芸妓を目指す「のぞみ」が、舞を舞えずに悩んでいる姿を見て、彼女をなんとか元気づけてあげようというの動機らしい。
そしてすぐさまトレーニングを開始。愛する娘のために、『ロッキー・ザ・ファイナル』ばりの、38歳の忠の復活劇が始まってしまった。
危険なスポーツであるボクシングを息子がまたやることに、忠の母の初枝が心配する。親心あふれるいい場面だ。しかし、そこで飛び出したセリフが、これだった。
「力石っつう人も死んだぁが!」
力石!? 妻の嘉子も、「マンガだないですか!」とツッコむが、シリアスな中にホッとする笑いを、といった狙いなのかどうなのか、全く不明だ。
そして、義父の石倉三郎もトレーニングに協力してくれるのだが、それが、栄作に向かって、シジミの貝殻を次々に投げつけるという、名づけて「シジミトレーニング」。石倉三郎曰く、「動体視力を鍛える」そうだが、亀田兄弟の「ピンポン玉ディフェンス」だろコレ、と思ったら、三郎も、「ピンポン玉を使うのは、昔からようあったけん」と、自分で解説。ただし、ピンポン玉とシジミの違いについては、解説してくれない。たぶん、シジミならそのへんにいっぱいあるからだろう。
妻の鈴木砂羽演じる嘉子も、「シジミって、栄養があって低脂肪だけん(中略)殻まで役にたつかね」と、妙に感心しているが、本気で感心したのか。
そんな中、三郎がこんなことを言った。
「往年の必殺”ジョレンアッパー”は、健在だがぁ」
”ジョレンアッパー”? なんだそれ? その後も忠のボクシングをめぐって、「ジョレン」「あのジョレンを」と、何度も何度もこの「ジョレン」が登場する。
「広辞苑」をひいてみたら、こう書いてあった。
<じょれん【耡廉】 土砂を掻き寄せる用具。長い柄の先に、竹で箕のように編んだもの、または鉄板製の歯を取り付けたもの。>
「ジョレン」って、アレか、栄作がいつも使ってる、シジミ漁のときの道具のことなのか。要するに、シジミ漁で鍛えた、必殺パンチってことなのか。分かりづらっ!
これまでのストーリーでは、シジミ漁については特に大した解説もなかったわけで、どんな道具を使っているかもよく知らない。もちろん、「耡廉」と聞いて、すぐ分かる人も少ないだろう。テロップ入れてくれるとか、耡廉を使っているときに、「(キラリン!)これだ!」とヒントを得るとか、もしくは名前を「シジミフック」とか、「出雲アッパー」とか、いっそ「ギャラクティカ・ダンダン」とかでもいい、なじみのない単語よりも、分かりやすさを優先してほしいところだ。
こうなったら、必殺パンチを繰り出す瞬間、栄作の後ろに器具がカットインしたり、拳の周囲にシジミが流星のごとく降り注ぐような演出を、と期待したが、試合終了間際、「ドスッ」と一発地味に決まっただけ。一応、相手からダウンを奪ったものの、「忠38歳のけじめ」は、勝利を得られることなく終了した。
まあ、その戦う姿に、周囲は勇気をもらい、全般的にはよかったのだが、肝心の娘・のぞみにだけ、違う届き方をしてしまった。
「ウチ、芸妓には、ならしまへん!」
……ええ~っ!?……。親の心、子知らず。父の戦う姿に感動し、別の生き方を探すことにしたそうだ。命がけで試合したのはなんだったんだ。と思うが、忠に言いたくなったのは、「気がすんでよかったね」ということだ。
(太田サトル)
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