日本にいながらアジアを満喫できる輸入食材店めぐり1

「SMAPの稲垣吾郎ちゃん、トモダチ」 店主がフレンドリーすぎる西葛西のインド食材店

2015/11/21 17:00

 旅に行きたくて、行きたくて、ウズウズしながらも、仕事が忙しく旅立つことができない働き者のみなさん。そんな時は、日本にいながら外国を訪れた気分が体験できる“外国人街”へ。ひと度、店の扉を開けば、聞きなれない外国語が飛び交い、日本とはまったく違うゆるい空気が流れ、なんだかいろんなことがどうでもよくなるはず。

 旅好きライターが、インド、タイ、ベトナムの外国人街があるとのウワサを聞きつけ、食材の仕入れと交流を楽しみに、プチ旅行気分で訪れてみた!

■スパイスの香りが入り混じる空間で、鼻からインドを感じる

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インドの食材と雑貨 TMVS FOODS

 知る人ぞ知る、インド人街として有名な江戸川区西葛西。そのウワサの現場の最寄駅、東京メトロ東西線西葛西駅を降り立つと、スパイシーなカレーの香りが鼻をくすぐり……なんてことはさすがにないが、街を歩いていると、サリーではなく、洋服を着たインド人らしき人々をちらほら見かける。

 まず訪れたのは、駅から徒歩4分ほどの閑静な住宅街にあるインド食材店「スワガット・インディアンバザール」。心躍らせ、さっそく中へ入ると、思わぬインド人の大群が。店員らしき男性と主婦らしきインド人数名がヒンディー語でものすごい速さでやりとりをし、超本気で大量の買い物をしている。わたしの存在に気づいてもらおうと、周りをうろちょろするのだが、まるで相手にされない。インドを求めてやってきたが、あまりに濃厚なインドの風が吹き荒れ、これは楽しく会話するどころではない。一旦撤退することにして、別の店舗を訪れることにした。


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TMVS FOODSのピーライさん

 次に訪れたのは、「スワガット・インディアンバザール」から、歩いて5分ほどのところにある「インドの食材と雑貨 TMVS FOODS」。大きなマンションの1階にあり、なんだか陽気な感じが伝わる日本語で書かれた看板が目印だ。シンプルなワンフロアの店内は、インドらしくさまざまなスパイスが混ざりあった香りがして、異国情緒漂う。

 迎えてくれたのは、日本語が流暢なピーライさん。インドのおぼっちゃまという感じで、品がよく、ほどよくフレンドリーで、いい感じだ。10年ほど前に輸入業をするために家族で日本へやってきて、“スパイス屋さんが始めたインドカレー屋”がうたい文句の南インド料理店「アムダスラビー」も経営しているという。なかなかのやり手に違いない。お店ではとくにスパイスに力を入れていて、ざっと数えただけでも、30種類以上は並び、インド人だけでなく、本格的なカレー好きや料理好きな日本人も多く訪れているという。

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チリパウダー、ターメリックパウダ、コリアンダー(各100g216円)。お得
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インド風揚げせんべい(1パック216円)。イラストがすばらしい
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インドカレーの材料としてよく使う豆CHANA DAL(ヒヨコマメ・1 kg291円)。ほかにも、シナモンやココナッツもあるので、おやつ作りの材料もゲットできる

[住所]東京都江戸川区西葛西5-8-5-108 小島二丁目団地5号棟1F

■「チャイ飲む?」「SMAPの稲垣吾郎ちゃん、トモダチ」

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スワガット・インディアンバザールのオーナー、ビネシュさん

 インドの空気を体に染みこませたところで、再びあの店へ戻ってみる。すると、お客も減り、さきほどお客さんの対応でてんやわんやしていたインド人男性もすっかりリラックスモードだ。話しかけてみると、店のオーナーで名前はビネシュさんと教えてくれた。インドでは日本の大手旅行会社で働いていたそうで、日本語をとても上手に話す。


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棚にはさまざま商品が整然と並べられている

 お店のおすすめポイントを聞いてみると、唐突に、その場にいた別のインド人の男性が割り込んできた。「見てください」と言うと、棚に置かれた子袋を指差し、「彼はインドから食材をたくさん仕入れて、大きさを整えて、ひとつずつ小分けのパックにしています。アーモンドを見てください。粉々になってしまったもの、きれいに形が整ったもの、分かれているでしょ。安いのがほしい、きれいなのがほしい。いろんな人がいる。サービスです」。このなめらかな日本語、そして、見事なまでの宣伝文句を話すこの男性は一体!? と思ったが、月に1度程度会うぐらいの友達らしい。

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しばらく店の一角に座って3人で話し込んでいると、「チャイ、飲む?」と聞かれ、裏のキッチンでチャイを作ってくれた。うまい

 お店は2007年からオープンしているそうで、東日本大震災の時には、一気にインド人が減ってしまったらしい。その時も「ワタシ、お客さんをマッテタヨ!」と、お客さんが来なくても、店を開け続けていたのだという。そんなちょっといい話もしつつ、話はお店にやってきたお客さんの話に。

 「トモダチ」と言って、見せてくれたのは芸能人たちの写真。テレビ撮影時の話がとめどなく続き、そんな話をへぇーとか、ほぉーとか言いながら聞きつつ、最後に出てきた名前がSMAPの稲垣吾郎様。「彼もトモダチ。けど、忙しいから、なかなかコナイ」と言って、ちょっと寂しそうだ。

 そのいかにも親しげな話しぶりを聞いているうちに、ハッと10年ほど前にインドを訪れた時の記憶がよみがえった。インドの怪しげな旅行会社などで「このニホンジン、トモダチ」と言って、芸能人と友達であるとアピールされたこと。そして、初めて会ったのに「マイフレンド 、マイフレンド!」と連呼され、スペシャルプライスのごはんを食べようと追いかけられ、あまりのしつこさに全力で町を駆け抜けたことを。世界中どこで暮らしていたって、インド人はインド人。一度でも会った人はトモダチ。そのどこにいても変わらぬ姿勢に感動すらしてまった。

 帰り際には、「アナタ、独身? インド人の男好き? 興味あるなら教えるよ」と提案があり、どうやら結婚相手までめんどうみてもらえるらしい。「IT系たくさんいるよ」とのことなので、申し出があれば、きっと喜んで紹介してくれるはず。気になる人はぜひ。

[住所]東京都江戸川区西葛西5-12-2 西葛西モリタビル1F

(上浦未来)

最終更新:2015/12/08 14:29
インド人の頭ん中 (中経の文庫)
絶対カレー食べたくなる