春ドラマでまたネタ被り発生！ 「愛した男は殺人鬼？」系が乱立するワケとは？

【サイゾーオンラインより】

　春ドラマがほぼスタートした。中年心をすくう人間ドラマや、リーガル、学園モノと今クールもバラエティー豊富なラインナップだ。毎クール、全国で約50作の連続ドラマが制作されていると言われる昨今。果たしてどの作品が人気を構築できるのか？　競馬レースのごとく固唾を呑んで放送に注目しているのは、ドラマオタクの小林久乃です。読者のみなさま、どうぞよろしくお願いいたします。

目次

・春ドラマに香る、血の匂い
・テレ朝は殺人×ラブストーリーがお好き？
・次はどんな愛の障害が待ち受けるのか

春ドラマに香る、血の匂い

　さて各ドラマの放送回がいくつかすぎて、スタート早々、気になったシチュエーションがある。それは「愛した相手が殺人鬼」であるパターンだ。日本の総人口が約1億2,359万人と言われているが、その98％ほどは「好きになった人が殺人鬼だったんです！」といった稀有な体験をせずに生涯を終えるだろう。私も今のところはないし、選ぶ予定も選ばれる予定もない。ところが春クールのドラマではこのレアパターンが散見されている。まずはその作品をピックアップしてみようか。

テレ朝は殺人×ラブストーリーがお好き？

　まずは『恋は闇』（日本テレビ系、水曜午後10時）のフリーライター・設楽浩輝（志尊淳）。ブリーチヘアがトレードマークのモテ男で、ネタのためならどんな手段もいとわない男は、第1話からも推測できた。設楽を好きになるカウントダウンに差し掛かっているのが、テレビ局勤務の筒井万琴（岸井ゆきの）。真面目な女性と、何か秘密を抱えている男性との恋とはテレビドラマの鉄板スタイルである。が、公式ホームページには「愛した男は、本当に連続殺人鬼なのか？」と記述がある。ここはあくまでも推察だが、ドラマの主軸である「ホルスの目殺人事件」の被害者は七奈美、一葉、千秋、百合子と、名前に数字が含まれている。万琴もその一人として狙われるのだろうか？　

　そして「春のテレ朝は殺人鬼がお好きでは」と考えてしまった次の作品は『魔物（마물）』（テレビ朝日系、金曜午後11時15分）。日韓共同制作の豪華さゆえ……なのか、ついに麻生久美子が深夜の泥沼系ドラマに参入したかと放送前から気になっていた。少し前まで朝ドラで孫を溺愛するおばあちゃん役だったのに、今回は年下男との恋愛に溺れていく役とは、麻生の振り幅に期待したい。

　第1話を視聴したけれど、もう完全に恋は始まっていた。エリート弁護士・華陣あやめ（麻生）と名田奥太郎殺害事件の容疑者である源凍也（塩野瑛久）が、青空の下、ホースから噴き出した水を避けるために2人でビニール傘に収まる様子、あやめに虹を見せる凍也にときめくあやめ。凍也はほかにも色男ぶりをアピールしたいのか、やたら喉仏を強調した横顔ショットが多かったのが印象的。殺人犯の容疑がかけられた凍也。果たして事件の真相はいかに、2人の恋はどこまで落ちていくのか。

次はどんな愛の障害が待ち受けるのか

　続いてはABEMA、Netflixで配信がスタートした『死ぬほど愛して』。この作品で殺人犯の疑いがかかっているのは、8年ぶりの演技復活が話題になった成宮寛貴演じる神城真人である。パティスリーで働く妻の澪（瀧本美織）が、優しかった夫の行動を不審に感じて、物語は始まる。不倫だろうかと疑うものの、事件はもっと大きく、澪に多額の保険金がかけられていたのだった。大ヒット漫画の実写化なので、すでに物語の行き先を知っている人も多いはずだ。第1話を視聴して面白かったので敢えて書いておくと、映像作品はセクシーシーンの連打。ゴクリ。成宮くんの鍛え抜かれた体を堪能できる。この人が殺人犯なら……と見る側を攪乱させる情動的な演技には息を呑む。

　ここまで3作品を並べてきたけれど、いずれも疑いがかかった状態で、今のところ真相はわからない（『死ぬほど愛して』は除く）。ではなぜ愛した相手が殺人犯？　といった設定が被ったのかといえば、単に偶発的だろう。昨年4月期でも「記憶障害の設定が被った」とネットニュースを騒がせたが、各放送局が内容を提示して打ち合わせたなんて、まずあり得ない。放送局同士、切磋琢磨するライバルだ。

　ただラブストーリー×サスペンスの性質上、必ず“障害”は必要になる。障害があればあるほど、主人公も視聴者も萌える。不倫、略奪愛、親の反対……大なり小なり、主人公が背徳感を持つシチュエーションが用意される。あの手この手で毎クール用意されているが、その究極的な企画として「愛した人が殺人鬼」だけだったに過ぎない。社会が日に日に煩雑化をしていく最中、次のドラマで見られるのはどんな障害なのか。ちなみにテレ朝では7月クールで『しあわせな結婚』が放送される。阿部サダヲ演じる人気弁護士が電撃婚を果たすが、妻にはとんでもない秘密が発覚……といったマリッジサスペンス。テレ朝の視聴者を驚かせる企画は次クールも続くらしい。

（文＝小林久乃）