宝塚歌劇団、「容姿端麗」表記が消滅――加害者処分なしの「いじめ問題」時系列まとめ【2024年11月11日最新】
9月末、兵庫・宝塚市のマンション敷地内で宙組の25歳劇団員が死亡したというニュースが報じられ、世間に衝撃が走った。
この劇団員の女性は、自ら身を投げたとみられると伝えられ、その背景には、かねてから週刊誌で報じられていた劇団内の「いじめ・パワハラ問題」があるのではないかとネット上は騒然。これを受け、劇団サイドは外部の弁護士を中心とした調査チームを設置し、その報告書を携え、11月14日には会見に挑んだが、「近年稀に見るひどさ」と批判が集中している。
そして、会見の3日後には、休演中の雪組公演を「12月1日から開始する」と発表。この切り替えの早さには、さすがのファンも驚いているようだ。
今回「サイゾーウーマン」では、「宝塚いじめ問題」を時系列でまとめて紹介する。
「宝塚いじめ問題」時系列まとめ
2023年1月~
「週刊文春」1月19日号(文藝春秋)が「宝塚娘役を追い詰めたトップ 真風涼帆の陰湿イジメ」と題した記事を掲載し、宙組内の学級崩壊ぶりを報道。
2月9日号では、「宝塚イジメ新疑惑 ヘアアイロンで後輩の顔をヤケドさせたトップ娘役候補」の見出しで続報を掲載。21年7月に、娘役が下級生に対して高温のヘアアイロンを額に押し付け、やけどを負わせていたと伝える。なお、劇団側はこれらの報道に対し、公式サイト上で「事実と異なる」とする文書を掲載した。
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9月30日
宝塚歌劇団の俳優が午前7時すぎ、宝塚市内のマンション敷地内で死亡しているのが見つかったとの第一報が報じられる。
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10月1日
兵庫・宝塚バウホールで開催された第56回『宝塚舞踊会』の開演前、木場健之理事長が観客に「昨日の報道については哀悼の意を表します。しかしながら、現時点では詳細は公表しません。舞踊会は自己研鑽の場なので予定通り開催することをご理解ください」と説明。
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10月2日
劇団が、宙組公演を同8日まで中止すると発表。理由を「複数の出演者の体調不良が判明し、公演実施が困難なため」と説明。その翌日には、東京宝塚劇場も「公演の安全な実施が困難と判断」との理由で休止に。
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10月4日
ニュースサイト「文春オンライン」が、死亡した劇団員を実名で報道。死の前日、彼女が母親に「28日夜にはマンションから飛び降りることを決めていた。精神的に崩壊している……」とメッセージを送っていたことを伝える。
10月5日
「週刊文春」が、死亡したのは前出の“ヘアアイロン事件”の被害者であると伝え、加害者の実名も掲載した。さらに、死亡した女性が宙組のグループLINEで集団リンチ状態に遭っていたと報道。
一連の報道を受け、木場理事長は「弊団生徒の逝去に関する記事が掲載されておりますが、ご親族の心情ならびに関係者の心身の状況を考えると、このような時期に、個人の尊厳やプライバシーを侵害するような内容が記載されておりますこと、甚だ遺憾に存じます」と怒りの声明を発表。
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10月7日
木場理事長が報道陣の取材に応じ、事実関係や原因を把握するため、外部の弁護士を中心とする調査チームを設置したと報告。調査結果公表前にもかかわらず、取材に応じた渡辺裕企画室長が「まず否定させて頂きたいのは、加害者・被害者という言葉。加害者も被害者もおりません」「ヒアリングの結果、本人たちもそんなことはなかったと。ただ、(ヘアアイロンが誤って)当たった事実はありましたので、そこは確認はしております」といじめの事実を否定。
宙組公演は同22日まで休止を延長すると発表。
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10月19日
「週刊文春」が、18年6月に宝塚音楽学校に入学したばかりの予科生がパワハラを苦に寮のバルコニーから転落し、全治3週間の全身打撲を負っていたという過去の事件を報道。
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10月20日
11月5日まで予定されていた宙組公演『PAGAD』の全日程中止を発表。加えて、4年ぶりに開催予定だった『タカラヅカスペシャル2023 Open the Future ~未来へ~』(12月21・22日)の中止なども発表される。
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11月10日
遺族の代理人弁護士が会見を開き、死亡した女性は下級生をまとめる責任者の長の役割にあり、死亡前約1カ月の総労働時間は400時間を超えていたと説明。さらに、上級生から頻繁に呼び出され、「下級生の失敗は、すべてあんたのせいや」「マインドが足りない」などと怒号を浴びせられていたといい、こうしたパワハラが繰り返された結果、心身の健康を損ない死に至ったと主張した。
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11月11日
宝塚歌劇団が、外部弁護士らからなる調査チームから調査報告書を受領したとして、近日中に内容を明らかにすると発表。
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11月14日
木場理事長が会見を開き、調査チームの報告書を読み上げ、遺族に謝罪。長時間労働の問題を認めたものの、これまでに「週刊文春」で伝えられた上級生からのいじめやパワハラは認めず、ヘアアイロンでの火傷についても「ヘアアイロンで火傷をすることは劇団内では日常的にある」と問題視しなかった。同理事長は12月1日付で辞任すると表明。
この日、遺族側も会見を行い、宝塚側がいじめ・パワハラを否定したことに反論し、再検証を求めた。しかし、木場理事長の後継者である村上浩爾取締役は、「そのように言われているのであれば、証拠となるものをお見せいただけるよう提案したい」とコメント。
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11月17日
公演を中止していた兵庫での雪組公演『ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル』と『FROZEN HOLIDAY』を12月1日の公演から実施すると発表。理由を「公演を行える態勢が整ったため」と説明している。
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12月1日
宝塚大劇場で2カ月ぶりに公演を再開。立ち見も出るほどの大盛況だったという。
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12月3日
宝塚ファンで知られる上沼恵美子が『上沼・高田のクギズケ!』(読売テレビ)で「あんなきれいな舞台を作ってた美しい役者さんがね、こんな形で死んでしまうっていうのは、これは責任とらなあかんと思いますよね。何か変えないとダメなんですよ」「“もうこのまま時間たったらみんな忘れるやん”って(思ってるかもしれないが)、忘れませんよ。みんな忘れても私は忘れない」「宝塚側も今回、全部吐き出さなあかんと思う!」「隠し通せることじゃないもん」「これはほんま根底からやり直していただかないと、応援できないよね」と厳しい言葉を連発。
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12月4日
ニュースサイト「週刊女性PRIME」が、「宙組の陰湿いじめを蔓延させた張本人」として、元男役トップスターの真風涼帆を実名で報道。記事によれば、真風はいじめのターゲットに対し「貴方のそういうところが嫌いなんだよ」と伝えるなどして泣かせていたほか、自分ではほぼ手を下さず、ほかの団員にいじめを指示していたという。これに対し、一部の宝塚ファンから「デマだ!」などと反発の声が続出した。
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12月5日
雪組公演『ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル』『FROZEN HOLIDAY(フローズン・ホリデイ)』の午前公演が「舞台のトラブル」との理由で公演中断。さらに、7日午前公演も開演予定15分過ぎに「出演者が体調不良で、回復の見込みが立たない」として急きょ中止となり、8日以降は「公演を安全に実施することが困難」との理由で上演中止に。
この非常事態の舞台裏について、6日付「文春オンライン」が報道。記事によれば、これまで2度に渡り劇団幹部に「いったん立ち止まるべきだ」と直訴していた雪組トップの彩風咲奈が、5日の公演中に過呼吸に陥っていたという。
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12月9日
19年に宝塚歌劇団を退団した七海ひろきが、YouTubeで劇団には「向こう側(一般社会)とこちら側(劇団)」を遮断する「分厚いベール」があると説明。「タイムスリップしているくらい、時代の感覚が異なる世界」「浮世離れしていて、時代の変化についていくのが難しい場所」「“変わるべき”って発想できるような環境ではない」として、「劇団が誠実に向き合って、本気で改革に取り組んでくださることを心から願っています」と訴えた。
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12月10日
上演をこの日まで取りやめていた雪組公演を12日より再開すると発表。劇団に対し、「女優たちの体調をなんだと思っているのか」といった批判が続出した。
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12月20日
「文春オンライン」が劇団所属の大物演出家・小池修一郎氏から何度もセクハラを受けたという元演出助手の男性の告発を掲載。加えて、小池氏の後輩演出家もハラスメント行為をしていたと伝えた。
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2024年1月23日
小池氏の続報として、「週刊女性」(主婦と生活社)が小池氏ら告発された演出家が現状“お咎めなし”であると報道。記事によれば、劇団からの聞き取りで小池氏らが全面否定すると、劇団側はそれを受け入れたという。
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1月24日
劇団を運営する阪急電鉄の親会社である阪急阪神ホールディングスが、遺族へ謝罪する意向を固めたことが「産経新聞」などに報じられた。ネット上では「演出家のセクハラが告発された途端、慌てて方針を変えたように見えてならない」といった批判も見られた。
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3月27日
24年の宝塚音楽学校の受験者数が480人と過去最低であったことが判明。2023年の受験者数は612人であったため、パワハラ問題が影響した可能性が指摘された。さらに、マスコミに公開されていた合格者名簿が、24年から個人情報保護等の観点から“非公表”に。
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3月28日
遺族側の代理人弁護士が都内で会見を開き、阪急阪神ホールディングス、阪急電鉄、宝塚歌劇団と合意書を締結したと発表。遺族側が主張していた15項目のパワハラ行為のうち、劇団側は整理した14項目について概ね認め、同日、阪急HD・角和夫会長が遺族に謝罪したという。
また、パワハラに関与したのは、宙組の幹部上級生4人、宙組の上級生3人、劇団のプロデューサー2人、演出担当者1人の計10人で、そのうち幹部上級生2人、上級生1人、プロデューサー2人、演出担当者1人の計6人が謝罪文を提出。ネット上では「謝罪文だけで終わり!?」といった疑問の声も上がった。
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3月31日
劇団は、宙組娘役の彩妃花(あやひ・はな)と葉咲(はさき)うららが同日付で退団したと発表。彩妃は被害者と同じ女子高に通っており、2人は“被害者側に寄り添っていた人物”と認識されていた。
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6月20日
23年10月からストップしていた宙組の公演が再開し、会場は満員に。芝居はなくショーのみの変則形態となり、いじめ当事者である上級生も全員出演した。
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7月31日
村上理事長が会見で「今のメンバーできっちりと前に進めていくことがいちばん大事」との見解を示し、いじめを行った上級生の処分を見送ったことを明かしたことで物議を醸した。
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11月10日
宝塚音楽学校の応募資格から「容姿端麗」の表記がなくなったことが発覚。理由を質問した「読売新聞」に対し、劇団は「時代や環境の変化を踏まえ、より相応しい方式や内容となるよう常に検討を続けてきた」と“変化”を強調した。