警察がヤクザより力を入れる犯罪組織「トクリュウ」とは? その厄介さを元極妻が解説
今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。
目次
・大阪市内で抗争勃発?
・「トクリュウ対策」は課題山積
・トクリュウの厄介さ――高額バイトに惹かれるのは貧乏だから
大阪市内で抗争勃発?
この原稿を書いている4月3日現在では詳しくはわからないのですが、1日午後に大阪市内で見つかった「血だらけの男性」の件、なぜか2日になってから報道されましたね。
信号待ちをしていた女性の車に突然、「脚をケガして血が出てるオッサン」が乗り込んできて、追いかけてきたオッサンが「降りてこんかい!」とドアをガンガン叩いたそうです。女性はさぞビックリされたことでしょうね。女性がすぐに警察に通報して、叩いてた人はいなくなったそうですが。
乗り込んできた男性の脚には銃で撃たれたような傷があることと、警察情報によれば2人とも「暴力団関係者」であることなどが報道されています。一方で、男性は「転んだ」と話したそうです。
すでにネットでは「被害者」の名前も出ていて、「また抗争か」などの声や「大阪の治安の悪さ」や「万博開催の不安」なども指摘されています。たしかに万博は国内外からたくさんのお客様が見えますから、そこでこんな事件があったら大変ですよね。報道が遅かった理由は万博がらみかしら、とか勘繰ってしまいました。捜査の行方を注目したいです。
「トクリュウ対策」は課題山積
警察庁は、去年から例の「トクリュウ」(SNSを通じた緩やかな結びつきで離合集散を繰り返す匿名・流動型犯罪グループ)の対策を進めてきましたね。
この4月1日から、警視庁や福岡県警などにトクリュウ専門の捜査部門ができて、さらに各都道府県で連携できる「特殊詐欺連合捜査班」も設置されました。合計で700人体制だそうです。
まあグリコ・森永事件とかもそうなんですが、いわゆる「広域事件」は各県警の連携がうまくいかないことが多いと聞いています。警察もお役所で強烈なタテ社会なので、ヨコ(つまりほかの県警)とは対立しがちのようです。そういう「壁」を取っ払おうというのはいいですが、そもそも「トクリュウ」対策って、具体的にどうするんですかね?
いわゆる「指定暴力団」は、暴対法第二条第二号で「その団体の構成員(その団体の構成団体の構成員を含む。)が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体をいう」と定義されていて、第三条で「犯罪経歴保有者」の割合など細かいところを挙げています。
法的に定義があり、地元の警察はトップのプロフィールから主な若い衆の顔と名前はもちろん、事務所の場所までだいたい把握しています。
それに、今はかなり様変わりしてるようですが、かつては本部を含めて「事務所」は一家のみんなが集まる居場所でもありました。ヤクザだったことを明かされている諸橋仁智弁護士は、お掃除とかは面倒だけど、事務所は「精神的な拠り所」だったと語っておられます。
トクリュウの厄介さ――高額バイトに惹かれるのは貧乏だから
でもトクリュウには、そんな事務所もなければ、「親分的な人」も「寂しくてやってくる若い衆」もいません。ネットを通じて匿名で「高額バイト」という名の犯罪に応募するだけです。
そんな人たちをどうやって定義して把握するんですかね。最近は強盗で逮捕される若者はけっこういますが、指示を受けた人の顔や本名は知らされてないでしょうから、組織や犯罪について話したら求刑を軽くしてもらえる「司法取引」もムリです。
厄介なことに、トクリュウはマフィアとも違うので、「外国のマフィア対策」はあまり参考にならない気がします。
マフィアは組織ごとに特徴があり、ほぼ「掟」を持つ組織で、政治家や企業経営者と密接につながっています。トクリュウは犯罪をするためにだけ集まるので、トップや指示役の本名を知らされることもないです。なので、実行犯を取り調べてもグループ全体がわかることはありません。そもそも実行犯は知らないのです。
とはいえ「トクリュウ対策」を掲げれば、絶滅寸前の「暴力団対策」よりもたくさん予算をつけてもらえるでしょうから、現場的にはアリかなと思いました。ただ、予算だけつけて従来どおりの捜査をしても、背後関係はわからないです。
あと警察マターではないですが、犯罪抑止のために「逆・最低賃金」みたいな高額バイトの規制は可能かどうか、SNSや匿名性の高い通信アプリの規制は可能かどうかの議論も必要ですし、いくら困窮しても高額バイトに行かないとか、お年寄りが詐欺被害に遭わないための広報活動も必要ですよね。
そもそも若い人が高額バイトに惹かれるのは、貧乏だからですよね。まずは物価高対策と中小企業の賃金アップを、なんとかしてほしいです……と、今回は政治的に寄ってみました。