サブカルの聖地【ヴィレヴァン】が赤字! それでも飲食部門のハンバーガー屋は優良店だった
「遊べる本屋」として一世を風靡したヴィレッジヴァンガード、通称ヴィレヴァンの赤字化や経営難が、ここ最近取り沙汰されています。
経済メディア「東洋経済オンライン」は1月18日、チェーンストア研究家・ライターである谷頭和希氏の「ヴィレヴァンが知らぬ間にマズいことになってた 『遊べる本屋』はなぜ魅力を失ってしまったのか」を公開。サブカルの聖地として栄えたヴィレヴァンは、SNSを通じて人々の好みが多様化し、“サブカル”という言葉の輪郭が曖昧になったことにより、空間としての魅力を失ったと説いていました。
ヴィレヴァン発祥の地・名古屋に生まれ育ち、高校時代、友人と連れ立って店舗に足しげく通っていたアラフォーの筆者にとって、昨今の凋落には悲しみを禁じ得ません。しかし同時に、もう十年近く、ヴィレヴァンに行っていなかったことを思い返し、自分にとって同店が魅力を失っているのも事実と感じます。
そんなヴィレヴァンですが、実は今から20年以上前の2003年、「ヴィレッジヴァンガードダイナー」というハンバーガーショップをオープンさせ、現在、東京・千葉・埼玉・愛知・山梨に店舗を構えていることをご存じでしょうか。経営難が伝えられるヴィレヴァンの飲食事業の今を探るため、今回、店舗に足を運んでみました。
※価格はすべて税込
※メニューや値段は3月19日時点の情報です
※店舗によって取り扱い商品が異なります
※最新の情報は公式サイトや公式SNSをご確認ください
目次
・ヴィレッジヴァンガードダイナーのメニューと価格帯
・炙りモッツァレラチーズバーガー実食レポ
・ヴィレッジヴァンガードダイナーの本棚を見て思ったこと
ヴィレッジヴァンガードダイナーは平日限定のランチメニューがお得
今回、訪れたのはヴィレッジヴァンガードダイナーの荻窪店。「VILLAGE/VANGUARD」というおなじみのロゴが看板に使用されています。さすがヴィレヴァン、外観・内観共にウッディでオシャレな雰囲気です。
さて、肝心のメニューですが、今回、事前に公式サイトでチェックして思ったのは、「結構、高いな……」ということ。例えば、メニュー一覧で最初に紹介されている「和牛クラシックベーコンチーズバーガー」と「和牛クラシックアボカドバーガー」はそれぞれ2,290円と2,090円。和牛を使用しているとあって、この価格帯は当然といえば当然ですが、最安値の「ハンバーガー」も、ビーフパティ1枚で1,290円もするんです。正直、ランチとしては高いと言わざるを得ません。
しかし、店舗でメニュー表を見てびっくり!
平日限定(オープン~15時)のランチメニューがあり、一律1,090円! セットメニュー「ドリンク&ポテト」(330円)、「ドリンク&サラダ」(330円)、「ドリンク&ポテト&サラダ」(440円)をつけても、だいたい1,500円くらい。これはお得です!
筆者は今回、火曜日の日替わりハンバーガーの一つである「炙りモッツァレラチーズバーガー」と「ドリンク&ポテト」を注文。合計金額は1,420円でした。
ヴィレヴァンの「炙りモッツァレラチーズバーガー」は隙のないおいしさ
こちらが炙りモッツァレラチーズバーガー、ドリンク(メロンソーダ)、ポテト。
トロットロのモッチァレラチーズがツヤツヤと光っており、絶妙な焦げ具合も◎。食欲をそそられます!
専用のバーガー袋に入れてかぶりつくと、何よりも先に、ビーフパテのおいしさに脱帽! 使用されているのは、「カナダ産牛肉100%希少部位ミスジを含む、適度にサシが入ったショルダークロッド」(公式サイトより)だそうですが、かめばかむほど牛肉本来の旨味が口の中いっぱいに広がります。かみ応えがしっかりある焼き具合も気に入りました。
そのビーフパテにたっぷりのっているのがモッツァレラチーズ。ビーフとチーズはもちろん好相性。さらにタルタルソースが塗られているようで、その甘酸っぱさがバーガー全体の味に奥行きを出してくれているように感じましたよ。
一方、バンズはほんのり甘みが感じられます。分厚くカットされた上のバンズは、もっちりとした食感もあり、満足度が高い! レタス&トマトはそこまで主張は強くないものの、ボリューミーなバーガーにさわやかさをプラスしていたように思います。
そして付け合わせのポテトは、一般的なスティックタイプではなく、じゃがいもの形を残した状態で提供されます。
外側はカリカリっとしているのに、中身はホクホク。じゃがいも本来の甘みをしっかりと感じられ美味。テーブルにはケチャップとマスタードがあるので、味変も可能です。
このようにヴィレッジヴァンガードダイナーのバーガーは、すべての点において隙がない……! 正直、ヴィレヴァンは本業が本・雑貨店なので、飲食部門にはさして期待はしていなかったものの、この業界で十分勝負できる逸品だと感じました。
ヴィレヴァンのハンバーガ店の本棚を見て、「サブカル」がわからなくなった
店の雰囲気や料理自体の満足度は高いヴィレッジヴァンガードダイナー。しかし一つだけ気になることがありました。
店の入り口付近にたくさんのマンガが陳列された本棚があり、お客さんは自由に読むことができるのですが、「ヴィレヴァンっぽいサービス」と思う半面、そのラインナップを見ると、同店が掲げてきた「サブカル」って何? という疑問がさらに深まってしまいました。
浦沢直樹氏の『20世紀少年』(小学館)、島本和彦氏の『アオイホノオ』(同)、ヤマザキマリ氏の『テルマエ・ロマエ』(エンターブレイン)、おおのこうすけ氏の『極主夫道』(新潮社)、中村光氏の『聖☆おにいさん』(講談社)などなど……。
かつて、マンガ自体――特に少年・少女向けではないマンガが“サブカル”と捉えられた時代もありましたが、これらはいずれも映像化された作品ですし、正直超メジャーマンガといえるのではないでしょうか。一方、それらに加え、「少年ジャンプ」(集英社)で連載された、岸本斉史氏の『NARUTO -ナルト-』や森田まさのり氏の『ROOKIES』あたりの超王道系もあったりして、いよいよ「サブカル」がわからなくなり……。
ヴィレヴァンのハンバーガー店の本棚を見て、「サブカル」という言葉の輪郭が曖昧になっていることを、あらためて実感してしまった筆者でした。
とはいえ、ヴィレッジヴァンガードダイナーのバーガーは絶品! 優良店といえると思います。ヴィレヴァンには、ぜひ飲食部門に力を入れて再起を図ってもらいたいものです。