『ザ・ノンフィクション』「婚活漂流記」レビュー:30歳ミナミの不満と爆発
『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)、2月4日放送はシリーズ「婚活漂流記」がオンエアになる。同シリーズは、結婚相談所「マリーミー」で婚活を行う人々を追った内容で、同社代表の植草美幸氏も登場する。
前回の放送は2022年1月16日で、サブタイトルは「結婚したい彼女の場合 ~コロナ禍の婚活漂流記~前編」。主人公として登場した30歳の女性・ミナミさんの言動はネット上で波紋を広げ、放送後も話題を集めた。今回の「婚活漂流記」シリーズのオンエアにあわせて、議論を呼んだミナミさんの回に関する番組レビューを再掲する。
『ザ・ノンフィクション』婚活漂流記、あらすじ
コロナ禍で2020年の国内婚姻件数は52万5,490組と前年より12.3%も減っている。外出自粛やリモートが、それまで自然にあった出会いの機会を奪っているのだ。
そんなコロナ禍で「婚活」を始めた飲食店で働く30歳の女性・ミナミ。共稼ぎの両親のもとで育ち一人で食事をとることも多かったと話し、専業主婦志望だ。恋愛経験のないミナミは結婚相談所「マリーミー」に入会するも、状況は芳しくなく、マリーミー代表、植草美幸による直接指導コース(月3万円)を受ける。
植草は8割の利用者を1年以内に成婚させるやり手で、成婚数は年に100~150件に及ぶ。成婚で植草のもとを「卒業」していった利用者女性は「『恋愛と結婚は別だよ』っていうところから(植草に)教えていただいてすごくありがたかったです」と話す。
植草は、専業主婦希望のミナミに対し、日本の年収は40年上がっておらず、妻に家にいていいという男性は少数派で、「夢の専業主婦=10%」と厳しい現実を伝える。その上で、ミナミのプロフィール写真を女性らしい服装とヘアメイクにして撮り直す。
ミナミも家で婚活対策のノートをまとめ、植草の著書を読み、婚活を研究し、お見合いの場ではにこやかに気遣いをしつつ話をしている様子が放送されていた。
しかし、植草という頼もしいセコンドがついても簡単にうまくいかないのが婚活だ。ミナミは「大卒なのに飲食のホール(の仕事を)やってるの?」と見合い相手から言われ、相談所で涙することもあった。
一方で、婚活を通じミナミ自身の問題もあぶりだされてくる。不満をため込んで爆発してしまうところや、相手に厳しい評価をしてしまうことだ。
専業主婦志望という条件でなかなか決まりにくかったミナミの婚活だが、駅前にマンションを2棟持っている40代の長谷川とは話が弾み、デートを重ねていく。夏のデートでは水上バスに乗り、長谷川はミナミへ誕生日プレゼントを渡しと、いい感じの雰囲気に見えたものの、番組最後に「もう一人の方のほうが私としては……」とスタッフにミナミは話す。
その直前にやりとりを始めた30代の介護士の町田とフィーリングがとても合ったようだが、この場合、専業主婦を叶えるのは難しくなりそうだ。迷うミナミはどう決断を下すのか。
『ザ・ノンフィクション』婚活漂流記、「普通の男性」というハードル
番組を見ている中で、婚活市場の男性に「うわあ」と思ったことがいくつかあった。
1.店員に横柄(ミナミとお見合いした男性)
2.結婚がうまくいかないのを相談員のせいにし暴言メールを送る(植草の話から)
3.「大卒なのに飲食のホールやってるの?」と相手に聞く(ミナミとお見合いした男性)
「普通の常識的な振る舞い」すらできない層が、婚活市場において少なくないのだろう。
よく婚活において女性が「普通の男性でいいんです」と話をすることがある。その「普通」とは、年収や見た目とかそういうことよりも、普通に、常識的な、何もすごく思いやりにあふれていなくてもいいから、「最低限のやさしさのあるコミュニケーションができる」というか、人に失礼なことをしない人という意味を含んでいるのではないかと思う。
髪をせっせと巻いて、休日にお見合いに行き、相手がその「普通のコミュニケーション」すらできないタイプなら心底がっくりきそうだ。
全国の結婚相談所は連盟があり、登録者を全国の相談所で共有し紹介しあっている。上記のような普通がままならない人はイエローカードを発行し、累積でレッドカードにし「出禁」にすればいいのに、と自分が利用者の立場なら切に願う。しかし、一方でおそらくこういう「本人に問題があって、いつまでも決まらない人」の払う会費が、全国の結婚相談所の運営を支えているのだろうとは思う。
『ザ・ノンフィクション』婚活漂流記、「資産家はケチが多いというのは本当かもしれない」
一方で、ミナミもミナミで婚活を通じ問題点が出てくる。長谷川がTシャツや寝具をイトーヨーカドーで買っていることに対し、ミナミは「資産家はケチが多いというのは本当かもしれない」と植草への相談メールに書いていた。
長谷川は別にミナミにおごらないわけではない。自分が服を買う店だけで、ここまで勘ぐられたらたまったもんじゃないと長谷川に同情した。
さらに、それはないなと思ったのが、資産家の息子である長谷川について、ミナミが番組スタッフに発した言葉だ。
「正直(長谷川が)イヤなわけじゃないんですけど、結局私は労働者として一生懸命働いているわけであって(略)でも相手のその人はもともとお金持ちだから、そこまで自分を追い込んで働いたことあるのかなって思っちゃって。そんな住む世界が違う人とやってけるのかなって」という発言だ。
「格差社会の不公平」「住む世界が違う人と結婚することの不安」自体はわかるのだが、しかし、そもそも共稼ぎの家庭で育ったミナミは専業主婦志望という前提から、相手は「住む世界が違う」人になるはずなのだ。
住む世界が違うことになるであろう人を志望しながら、住む世界の違いに不満や不公平感を覚えるなら、一体何がどうなればミナミは満足するのだろう。
『ザ・ノンフィクション』婚活漂流記、「初恋」で迎えた怒涛の展開
どうにも煮え切らないミナミの態度だったが、それは新たにお見合いをした介護関係の仕事をしている町田への「恋」によりがらっと一変する。
今回の前編では町田本人は出てこなかったが、町田のことを話すときは明らかに楽しそうだった。町田以外の男性に対しミナミの採点が辛口だったのも相手への「恋力」が低かったからというのもあるのかもしれない。
一緒にいて楽しい相手というのはなかなかいないのだから、町田にすればいいのにと個人的には思ったが、次回予告で植草は「ここは恋するところではなくて、結婚をするところ」と、浮かれるミナミにぴしゃりと釘を刺していた。
恋は冷めるので、植草の発言の意図、思いもよくわかるのだが、一方で本格的な男女交際をしたことがなく、恋の力をおそらく初めて知ったミナミが、あえてそれを無視した選択をする、というのもなかなかきつそうだ。
何より「恋より結婚」で選ばれる男性も気の毒に思う。ミナミはどうするのか。来週の後編が待ち遠しい。