コラム
仁科友里「女のための有名人深読み週報」

マツコとあのちゃんのイーブンな関係から生まれる笑い――「司会はゲストより上」という慣例に思うこと

2024/01/18 21:40
仁科友里(ライター)

 こういうゲストとしての実績の積み重ねが、冠番組を複数持つことにつながっていったのだろう。マツコのような人気タレントを司会に据えれば、スポンサーもつきやすくなるし、タレント本人も安定した収入が見込めて双方にメリットがあるのは間違いない。

 しかし、司会者になってしまうと、おのずと発言に制限がかかってしまうのではないだろうか。例えば、マツコは『上田と女が吠える夜』で、あのちゃんのことを「だって、あの人おかしいでしょ?」と言っていたが、これはマツコもあのちゃんも同じゲスト同士、つまりイーブンな関係だから許される発言だと思う。

 もしマツコがMCの番組で、ゲストのあのちゃんに同じことを言ったのなら、ちょっとパワハラっぽくなってしまうし、あのちゃんもムッとする気がする。そうなると、結局損をするのはマツコ自身だから、発言には気を使わざるを得ないだろうが、その結果、マツコの良さも半減してしまうのではないか。「司会者はゲストより立場が上」という業界の常識のようなものが、テレビやタレントの可能性を奪っていると思えてならない。

 テレビの未来は暗いと言うけれど、大地震など災害が多いこの国では、多くの人に情報を届けられるという点で、テレビは依然として重要なメディアといえる。しかし、頂点を極めたマツコだからこそ、「司会者はゲストより立場が上」という慣例をぶっ壊して、自分が最も輝けるよう、自由なテレビの出方をしてほしい、もしくは司会者とゲストがイーブンな関係で話せる番組を作ってほしいと願わずにいられない。



仁科友里(ライター)

1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

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最終更新:2024/01/18 21:40
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