海外
まだ若い方も多いのが悲しい限り

『フレンズ』チャンドラー役、『ユーフォリア』出演者、ジェーン・バーキンも【2023年に亡くなったセレブ10人】

2024/01/02 19:00
堀川樹里(ライター)

 ロシアのウクライナ侵攻の終わりが見えないうちに、イスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスと衝突。罪のない大勢の民間人が犠牲者になり、命について考えさせられる1年となった。

 ハリウッドでも今年、命について深く考えさせられる訃報が相次いだ。

 大往生した往年の大歌手、将来を期待されていた若手俳優の薬物過剰摂取による死、体重減量手術による合併症で命を落としたセレブもいた。また、長年苦しんできた薬物依存や喫煙習慣を断ち切ろうと治療していた薬の急性作用で急死したセレブもおり、世間に大きな衝撃を与えた。

 そんな2023年に惜しまれつつ亡くなった海外セレブを10人、ご紹介しよう。

目次

(1)マシュー・ペリー (俳優) 10月28日死去 享年54
(2)ティナ・ターナー (歌手) 5月24日死去 享年83
(3)リサ・マリー・プレスリー (歌手) 2月1日死去 享年54
(4)ライアン・オニール (俳優) 12月8日死去 享年82
(5)アンガス・クラウド (俳優) 7月31日死去 享年25
(6)トニー・ベネット (歌手) 7月21日死去 享年96
(7)ラクエル・ウェルチ (女優) 2月15日死去 享年82
(8)シネイド・オコナー (歌手) 7月26日死去 享年56
(9)タチアナ・パティッツ (モデル) 1月11日死去 享年56
(10)ジェーン・バーキン (女優) 7月16日死去 享年76

マシュー・ペリー (俳優) 10月28日死去 享年54

鎮痛剤依存に長年苦しみ続けたマシュー・ペリー(写真/Getty Imagesより)

 大ヒットしたドラマ『フレンズ』(1994~2004)で、シニカルでひねくれ者だけど繊細なチャンドラー役を演じた国民的俳優。ロサンゼルスにある自宅のジャグジーで亡くなっているのが発見された。

 幼い頃に両親が離婚。母親に引き取られ、カナダで成長。15歳の時にロサンゼルスの父親に引き取られ、父と同じ役者の道に進むことに。映画デビュー作でリヴァー・フェニックスと共演。その後、テレビ界で活動するようになり『フレンズ』で大ブレーク。コメディ以外の作品も評価は高く、味のある役者として愛された。

 私生活ではアルコール依存症と、ジェットスキー事故の時に処方されたことがきっかけで鎮痛剤依存に長年苦しみ、壮絶な依存・リハビリ生活を送った。昨年発売した自伝本では「最低でも15回リハビリ治療を受け、依存症を断つのに約10億円使った」と告白。ジュリア・ローバーツと交際したこともあるモテ男だったが、生涯独身で、子どももいなかった。死亡当時は、断薬、体重減量、禁煙を行っていたが、そのための薬であるケタミンの急性作用で命を落としてしまった。

ティナ・ターナー (歌手) 5月24日死去 享年83

 パワフルな歌唱力と圧倒的なステージパフォーマンスで世界中を魅了したロックの女王。スイス・チューリッヒ近くの邸宅で死去した。代理人は「親しい友人や家族によりプライベートな葬儀が行われる」と発表。世界中の歌手が、彼女の死を悼むメッセージを次々とSNSに投稿した。

 敬虔で厳格なクリスチャンの祖父母に育てられ、聖歌隊メンバーとして歌いながら成長。姉と繰り出したナイトクラブでアイク・ターナーと彼のバンドにほれ込み、自ら売り込んで、歌手として迎えられられた。瞬く間に歌手としてのキャリアを築き上げ人気者になったが、夫となったアイクからのDV、モラハラ、浮気、アル中、ヤク中に耐えられず、逃げるように離婚。その後、ソロ歌手として大成功を収めた。

 欧州に拠点を移してからも大ヒット曲を飛ばし、映画にも出演。何歳になってもパワフルな歌声と圧巻のステージパフォーマンスで、ツアーは毎回大盛況だった。

 1992年からには音楽プロデューサーで交際相手のアーウィン・バッハとスイスに移住し、2013年に73歳で再婚。その3カ月後、長年高血圧症を患っていた彼女は脳卒中に倒れ、16年には腸がんを発症。翌年には夫がドナーとなる腎臓移植手術を受けた。死因は自然死だと発表されている。

リサ・マリー・プレスリー (歌手) 2月1日死去 享年54

 エルヴィス・プレスリーとプリシラ・プレスリーの間に生まれた一人娘。モダンロック歌手/シンガーソングライターとして活動。カリフォルニア州カラバサスにある自宅の寝室で心臓発作を起こし、病院に搬送された後、死亡が確認された。

 エルヴィスの溺愛を受けながら育てられ、9歳で父と死別した後はプリシラアに引き取られたが、そりが合わず薬物に手を出し、高校を中退。リハビリ施設で知り合ったミュージシャンのダニー・キーオと結婚し一男一女をもうけるも、離婚。マイケル・ジャクソンと電撃結婚し、彼のMVに裸で出演するなど世間を騒がせたが、2年後に離婚。その後、ニコラス・ケイジと再々婚するものの3カ月で破局した。再々離婚後数年は音楽活動に精を出し、アルバムやシングルを出していた。

 その後、06年にマイケル・ロックウッドと日本で結婚式を挙げ、双子の姉妹を出産するも、結婚10年目に破局。20年に息子のベンジャミンが自殺するなど、波乱に満ちた生涯を送った。亡くなる2日前にゴールデン・グローブ賞授章式に出席。その際リサ・マリーはフラフラしており、健康状態を懸念する声が上がっていた。死因は、減量手術の合併症による小腸閉塞だと発表されている。

ライアン・オニール (俳優) 12月8日死去 享年82

 『ある愛の詩』(1970)や娘のテータムと親子共演した『ペーパー・ムーン』(73)が代表作の俳優。息子でスポーツキャスターのパトリック・オニールが、「父は愛する仲間に囲まれ、静かに息を引き取った」とSNSで発表した。

 ライアンは両親に連れられ、欧州や中米を転々としながら成長、スタントマンから銀幕スターへとのし上がった。甘いマスクと引き締まった体で人気を博し、プレイボーイとしても知られた。演技派俳優としてハリウッドで重宝され、テレビドラマへのオファーはコンスタントにあった。

 17年間同棲し息子までもう儲けたファラ・フォーセットとのロマンスは有名だったが、その息子に「幼少期に虐待されたと告発されたり、ライアンが息子に向かって発砲して逮捕されるなど、プライベートではゴタゴタが多かった。2001年に慢性白血病を発症。一時寛解したものの、今度は前立腺がんであることを公表した。死因は心不全。遺体はファラの隣に埋葬されたと伝えられている。

アンガス・クラウド (俳優) 7月31日死去 享年25

将来を大きく期待されていたアンガス・クラウド(写真/Getty Imagesより)

 若者に人気の青春ドラマ『ユーフォリア/EUPHORIA』でドラッグディーラー役を演じた、将来を期待されていた俳優。カリルフォルニアの自宅で倒れているところを母親に発見され、駆けつけた警察官がその場で死亡を確認した。

 カリフォルニア州オークランド出身。15歳の時に工事現場の穴に落ちて脳に軽い損傷を受けた。ニューヨークでウエイターをしていたところをキャスティング・ディレクターにスカウトされ、『ユーフォリア/EUPHORIA』でデビュー。フェズコ役が当たり役となり、スターダムを駆け上がった。少し前まで新作映画の撮影を行っており、将来を大きく期待されていた。

 亡くなる数週間前に、仲が良かった父親を亡くしており、アイルランドで埋葬を終え、帰国したばかりだった。司法解剖により、死因は、鎮静剤である合成オピオイドのフェンタニル、コカイン、覚醒剤であるメタンフェタミン、向精神薬のベンゾジアゼピンを同時に服用したことによる急性中毒だと断定。事件性は認められず、事故死だと発表された。

トニー・ベネット (歌手) 7月21日死去 享年96

 「想い出のサンフランシスコ」や「ビコーズ・オブ・ユー」など数多くの大ヒット曲を持ち、晩年はレディー・ガガら若いアーティストたちと積極的にコラボレーションしたことで幅広い層から人気を集めた大御所グラミー歌手でありジャズ歌手。ニューヨークの邸宅で、眠るように息を引き取った。

 10歳で父親と死別。裁縫師として働く母との生活は貧しかったが、愛する絵画と歌に支えられた。徴兵され、第二次世界大戦で戦ったが、帰国後はウエイターをしながら歌手活動を開始。50年代から約10年おきにヒットを飛ばすようになった。2度の離婚やコカイン依存症にも苦しみ、アップダウンはあったが、常に身だしなみよく笑顔を絶やすことはなかった。若いアーティストたちとのコラボを楽しみ、レディー・ガガとのデュエットは世界中の人々を魅了した。本名で画家としても生涯活動した。

 2016年にアルツハイマー病の診断を受け、21年にガガと行ったラストコンサートでは病状が進行していたが、ステージに立つとシャキッとして完璧なパフォーマンスをした。普段は思い出せないガガの名前も呼び、大きな話題になった。死因は老衰だと発表されている。

ラクエル・ウェルチ (女優) 2月15日死去 享年82

 20世紀最大のセックスシンボルとして知られる、60〜70年代に活躍した銀幕女優。中年期からはテレビでも活躍するようになり、存在感のある女優として愛された。

 7歳から17歳までバレエをしており、14歳の頃には美女コンテストのタイトルを複数取るなど、若い頃から自己表現力に長けていた。モデルを経て女優になり、『007/サンダーボール作戦』(65)のボンドガールをオファーされたが、同役を演じると短命になるといううわさを信じ、蹴った。その翌年、石器時代を舞台にした『恐竜100万年』でゴールデン・グローブ賞を受賞。セックスシンボルとして世界中を魅了し、中年期からはテレビドラマなどに出演するようになった。

 セクシーを売りにしていたが、プライベートでは最初の夫との間にもうけた2人の子どもを育てるシングルマザーで、子育てに必死だった。死亡証明書の死因欄には「アルツハイマー病により引き起こされた心肺停止」と記されていたと報じられている。

シネイド・オコナー (歌手) 7月26日死去 享年56

 1990年に発売したプリンス作曲の「愛の哀しみ」で世界的に大ブレークした歌手。社会的・政治的な思想が強く、大バッシングされても自分の考えを変えない人だった。自宅で意識を失い倒れているところを発見され、その場で死亡が確認された。

 アイルランドのダブリン生まれ。不幸な子ども時代を送り、10代でカトリック教会の訓練センターに入れられた。シスターにギターをもらったことがきっかけで音楽にのめり込み、87年に発表したファーストアルバムがいきなりヒット。セカンドアルバムも大ヒットとなり、”類いまれなる美貌にスキンヘッド”というギャップで世界中を魅了した。

 一方、92年に出演したアメリカの生放送番組で、当時教皇だったヨハネ・パウロ2世の写真を破り大炎上。問題児扱いされるようになった。2018年にイスラム教に改宗。メンタルヘルスの問題を抱えていることをオープンにしており、昨年17歳の息子が自殺したことで打ちのめされていた。死因は遺族の希望で伏せられている。

タチアナ・パティッツ (モデル) 1月11日死去 享年56

 80〜90年代のスーパーモデルブームの立て役者の一人。ミステリアスでマチュアなルックスとオーラで、数多くのデザイナーに愛された。カリフォルニア州サンタ・バーバラの邸宅で亡くなった。

 ドイツ生まれ、スウェーデン育ち。17歳の時にストックホルムで開催されたモデル事務所「エリート・モデル」のコンテストで3位になったことがきっかけでパリに移住。モデルとして の活動を開始
し、80年代後半にリチャード・アヴェドンが撮影したレブロンの広告で大ブレーイク。スーパーモデルの一人として活躍し、ジョージ・マイケルのMVや映画にも出演。年を重ねてからも仕事をこなし、200冊以上の雑誌にモデルとして登場した。

 環境活動家、動物愛護活動家としても有名。プライベートではビジネスマンと結婚し、2004年に男児を出産。19歳になる息子と一緒にモデルをして話題になった。死因は転移・再発性乳がんだと発表されている。

ジェーン・バーキン (女優) 7月16日死去 享年76

 イギリスとフランスで人気を誇った女優。歌手としても活動していた。フランスの老舗高級ブランド、エルメスのバッグ「バーキン」は、当時の同社社長が彼女のために作り、贈ったバッグとして有名。パリの自宅で息を引き取った。

 イギリスの上流階級に生まれ、母は女優、兄は映像作家、3人の娘や甥も芸能・美術の世界で活動する一族として知られる。ジェーン自身は女優としてキャリアをスタート。21歳の時に出演した『欲望』で、カンヌ映画祭パルム・ドールを受賞。フランスに活動の場を広げた。

 その後、セルジュ・ゲンズブールのパートナーになり、フレンチロリータとしてファッション界でもその存在感をアピールするように。籐で編んだカゴがお気に入りだったが、エルメスに贈られてからはバーキンを愛用。高級バッグをぞんざいに使うことで話題になった。

 慈善活動家でもあり、飾らない人柄は多くの人に愛された。白血病や心臓病、脳卒中を患い、晩年は闘病生活を送っていたが、一人で自立した生活をしたいと約2年ぶりに一人きりで過ごした夜に亡くなった。死因は発表されていない。

堀川樹里(ライター)

6歳で『空飛ぶ鉄腕美女ワンダーウーマン』にハマった筋金入りの海外ドラマ・ジャンキー。現在、フリーランスライターとして海外ドラマを中心に海外エンターテイメントに関する記事を公式サイトや雑誌等で執筆、翻訳。海外在住歴25年以上。

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最終更新:2024/01/02 19:00
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