中学受験で全校合格、しかしすぐ不登校に……「半狂乱になった」心配性の母親の告白
ある日、美香さんは担任の先生の勧めに従い、親子でカウンセラーのもとを訪ねることにしたという。
「カウンセリングなんて、心の弱い人がやることだと思っていたので、まさか自分たちが受けるなんて思ってもみなかったんですが、結局、これが契機になりました」
カウンセラーの先生は「カウンセリングが必要なのは舞華さんではなく、むしろお母さん」と言い、「お母さんがなぜ、舞華さんの問題を我が事のように感じ、解決しようと躍起になるのか……それを 理解することが先決」という方針を示したのだそうだ。
カウンセリングの中で美香さんは、自分自身の“育てられ方”を具体的に振り返る作業を繰り返したという。
「両親は厳格なタイプで、私は10代の頃、何かと制約の多い生活を送っていました。 例えば、学生時代の門限は6時でしたし、『あの子とは付き合ってはダメ』とか『この学校じゃなくてはダメ』と一方的に言われ、渋々従っていたんです。特に母は『親の意見と茄子の花は千に一つも仇はない』と繰り返し言っていました」
美香さんいわく、親に反発する気持ちもなくはなかったが、「結局、親の言うルートを歩んだおかげで、大した苦労もなく今まで生きてこられたという感じ」と話す。
「私にとって、親は守ってくれる存在であり、同時に絶対的権力を持つ存在。これまでずっと『親に逆らってはいけない』と思っていたことに気づかされました」
カウンセリングでは、自身と舞華さんの親子関係についても回顧。舞華さんが生まれてからの出来事を一つひとつ思い出しながら、「自分なりに『ここは過干渉すぎた』『ここは親として譲れないライン』といった線引きをしていった」そうだ。
「カウンセリングを重ねるうちに気がついたんです。結局、自分自身の満たされない思いを舞華を使って満たそうとしていたのかなって……。もっと言うと、私は舞華の人生を乗っ取って“ 生き直し”していたようなものだったんです。不登校になった舞華が、全身を使って『自分の人生を生きたい!』って言っているように感じました」