『石田さんチ』新作放送直前! 「なぜ大家族番組は好かれるのか」臨床心理士が解説
杉山氏は、まず大家族番組を「好き」という人について、「癒やされている部分がある」と指摘する。
「暮らしは決して楽ではなく、人数が多い分だけ心の葛藤もあるけれど、それなりに楽しそうにたくましくやっている……大家族のそういった点に、『うちの家もこうだ』『家族に問題を抱えているのはうちだけじゃないんだ』と思っている視聴者はいると思います。家庭内のややこしいことって、たいていみんな隠すんですけれど、ああいう番組だと、それが見られるわけです。社会心理学の用語で『社会的比較』といわれていますが、“ほかの人と比較すること”で、癒やされる面もあると感じます」
一方で、普段見ることのできない“他人の家のいざこざ”を見るというのは、「一種の“覗き見”的楽しみもある」と杉山氏は続ける。
「覗き見をしていると、“自分のことを考えなくてよくなる”んです。『自分のことについて考えると、人はクヨクヨする』という研究があり、ほかに何か注目することがあって、自分から目がそれると、気が楽になる……という。そういう意味では、よその家のゴタゴタは、癒やしになるのかもしれませんね」
では、「嫌い」と感じる人の心理はどうなのだろうか? 杉山氏は、Twitterの「大家族番組が嫌い」というツイートについて、「子どもがひもじい思いをしている様子を、“子どもの貧困問題”と捉えているのかもしれません。そういった理由から、大家族番組に嫌悪感を示す人はほかにもいるでしょう」と語る。
「『嫌い』という人は、自分のことで頭がいっぱいの人とも言える。例えば、『自分がもっとしっかりしなきゃ』とか『もっとこうしたい』というふうに、向上心があって自分のことに一生懸命になっていると、『人の家のゴタゴタを見て何が面白いんだ』となりがちだと思います。もっと言うと、“自己志向が高い人”は、大家族番組にイライラしてしまうでしょうね。こういう人は、『自分はこうあるべきだ』と思いがちで、さらに、ほかの人ができないと腹が立つんです。自分より苦労している人を見ると、比較して『私も同じくらい大変』『自分よりはマシ』と思うのではなく、『何やってるんだ、けしからん!』と感じるわけです。そう考えると、大家族番組が好きな人は、『自分も他人も許せる人』といえるのではないでしょうか」
自己志向が高くなる背景は、かねてからネット上で指摘されている「男性は大家族番組が嫌い」という説に通ずるものがありそうだ。
「自己志向が高くなりやすい人は、いろんな責任を背負っている人。無責任な人はなりにくいです。『男性は大家族番組が嫌い』といった傾向があるのは、社会的に男性の方が責任を背負いやすい面と関係があるのかもしれません」
今後も各テレビ局が放送するだろう大家族番組。自分は彼らの姿をどう受け止めているのかを考えるのも一興かもしれない。