コラム
「元極妻」芳子姐さんのつぶやき166

親分が認知症に! ヤクザ社会の介護要員は「若い衆」、「介護苦」で逮捕か?

2023/09/10 17:00
待田芳子(作家)
写真ACより

今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。

ヤクザの大事件が起こらない状態は続く

 8月27日は「山口組分裂記念日」ですが、大きな事件はありませんでしたね。「文春オンライン」は「白昼に人々が行き交う街中で発砲などの危険な対立抗争事件が起きないとの保証はない。警察は情勢の注視を続けている」とか、めちゃ煽ってましたが、ないと思ってました。

 やっぱり「重罰化」と「トップの責任問題」がヤクザの事件の抑止力になっているのでしょう。

 トップの逮捕は組織の運営に影響が出ますし、親分は顔もよくわからない枝(下部組織)の若い衆の事件まで責任など持てないというのが本音です。それに、組織のために事件を起こして長い懲役に行く若い衆には、それに見合った報奨(お金とか昇進とか)が必要です。

 今は過剰な暴排(暴力団排除条例)のせいで組織の金庫も寂しくなっていますし、そういうもろもろの事情の結果として、大事件が起こらないようになってきているのでしょう。この状態は続くと思います。

ヤクザ社会の少子高齢化はカタギ社会より深刻

 ヤクザに限りませんが、逮捕の時は大きく報道するのに、「不起訴」とか「起訴猶予」になると扱いが小さくなったり、あるいは報道しなかったり、というのは昭和の時代からあったと思います。

 9月1日、「自分の親分をどついた若頭氏」の不起訴がひっそりと報じられました。逮捕の時は名前も顔もじゃんじゃん出てましたが、不起訴報道は「『若頭』の男性」でした。「若頭の男性」って、なんかちょっとアレですね。こういう時は「暴力団幹部」でいいのではないでしょうか。

 「不起訴の理由」が明らかにされないのは、ここ20年くらいかと思いますが、なぜ隠すのか、教えていただきたいです。

 それはさておき、この事件は、介護が原因だったらしいことをネットニュースが伝えて話題になりました。路上でボコられていたところを通行人さんに通報されたそうです。被害者が六代目山口組の中核組織である弘道会の傘下組織の親分で、認知機能が低下していたことがわかり、関係者やネット民はざわつきました。若頭の破門説もありましたが、不起訴でしたし、今のところ動きはないようです。

 何回か書いてますが、ヤクザ社会はカタギ社会の鑑(かがみ)なんですよね。しかも、なぜか問題は増幅されます。景気がいい時はめちゃくちゃいいし、悪い時はめちゃくちゃ悪いんです。少子高齢化もカタギ社会より深刻です。

昭和のヤクザは社会保険加入も普通

 そもそもヤクザが認知症になるまで長生きするって、昭和では考えられませんでした。33歳で射殺された夜桜銀次氏は極端としても、三代目山口組の田岡一雄組長は、晩年は病床で過ごして没年68歳でした。亡くなるにはお若いですが、当時にしては長命だったと思います。

 それと意外かもしれませんが、平成の初めくらいまでは合法的な企業の社長だったり従業員だったりで、社会保険に入っているヤクザは珍しくなかったですよ。知り合いの親分衆も、みんな健康保険で病院に行ってました。そういうのを推進してきたのも田岡三代目ですね。「正業に就け」と、いつもおっしゃっていたそうです。

 田岡三代目などが力を入れていた港湾荷役関連の仕事は労働災害も多かったので、労災保険は必須ですよね。もちろん雇用保険・年金も大事ですが、介護保険法がスタートしたのは2000年でした。

 それまでは、介護とは社会的に「お嫁さん」が「家でするもの」でした。介護を苦にした挙げ句の悲劇はけっこうありましたが、50代以上の方なら「在宅介護」はうれしくはなくても「任務」みたいな感じもありますよね。ヤクザ社会でも「お嫁さん」がいなければ、「若くない若い衆」が介護をするのは当たり前という流れですかね。

 なので、想定外に長生きするヤクザ、合法的ビジネスからの排除の結果としての介護保険ナシ、からの「介護苦」はこれからも増えると思います。今回は、たまたま通行人さんに目撃されて事件になっただけで、実際にはいろいろ起こっているかもしれません。

 仲のよかったご夫婦でも、介護していたご主人が奥様を殺しちゃうような事件がありますから、他人にはわからないことも多いです。

待田芳子(作家)

今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻。夫とは死別。本名・出身地もろもろ非公開。自他共に認める癒やし系。著書に『極姐2.0 旦那の真珠は痛いだけ』(徳間書店)がある。

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最終更新:2023/09/10 17:00
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