「なんで高校野球の応援しなきゃいけないの?」「何様だよ」チアと吹奏楽部が抱く、甲子園への本音
――甲子園の中止が発表された時、世間では「かわいそう」「やらせてあげたかった」といった声が多かったです。
A子 私は正直、「高校野球」について考えるタイミングができたという意味で、中止になってよかったんじゃないかと思います。吹奏楽コンクールもほとんど中止になってしまったようですが、これでようやく、自分たちだけのために楽器を演奏できるんじゃないかな、とも。それと、応援に行く本人たちも大変だけど、その親や関係者も毎年本当に大変そうだったので、内心ホッとしてる人は案外多いかもしれません。
B美 授業数の不足や受験への影響も懸念されている状況ですし、親御さんは安心していそうですよね。チアリーディングは、いつも夏に開催している大会を秋に延期したようですが、高校3年生の子たちはどうするのかな……。
一方で、不完全燃焼になっちゃった子もいると思います。ただ、甲子園などの大きな大会を「中止になってかわいそう」なものにしているのは、大人たちですよね。10代の頃の経験が大事なのもわかりますが、残念ながら時間は戻らないし、今回のような不測の事態が起こることもある。「高校最後の夏」「二度とない青春」と神聖化して重みを持たせるのは、ますます彼らを苦しめることにならないでしょうか。
A子 その点、全国で代替の大会が行われているのはよかったと思います。でも、「かわいそう」はやめてほしいですよね。大人なら、「今回は残念だったけど、それだけじゃないよ」「まだまだ楽しいことが待ってるよ」と言ってあげるべきなんじゃないかなあ。
B美 高3で引退して卒業後はゆっくりするつもりだったのに、コロナ禍で引退試合を逃したことで、「これで終わるのは自分がかわいそう」あるいは「負けた」ような気がして、大学でも競技を続けなければ、と思わされる子もいるんじゃないか……とか考えちゃうと、複雑です。競技を純粋にやりたいならいいけど、メディアや大人によって植えつけられた「かわいそう」という思考回路で、競技に時間を費やすのは違うと思うし。
A子 高3の引退と同時にやめるのは、確かにキリがいいですよね。とはいえ、部活動で結果を残せても残せなくても、そこで人生が終わるはずもなく、10代が終わっても人生は続く。スポーツも音楽もなんでも、20代、30代、もっと大人になってから始めたっていいわけですし。大人たちが10代の子に向けて「10代の今が一番楽しい」「輝かしい時期は今だけだよ」と言うのは、よくないですよね。
B美 ぶっちゃけて言えば、10代の頃よりも大人になった今のほうが楽しいし、お金も自由もある(笑)。「やらせてあげたかった」気持ちもなくはないですが、「まだまだやりたいことをやっていいんだよ」と声をかけてあげたほうが、救われる人が多いんじゃないでしょうか。