男性アイドル
[ジャニーズツッコミ道場]

なにわ男子が、国民的アイドルになる道のりは「険しい」――SMAPや嵐のパターンは通用しないワケ

2023/08/11 17:00
太田サトル(ライター、アイドルウォッチャー)
ジュリーさんに猛プッシュされているとうわさのなにわ男子(写真:サイゾーウーマン)

 2023年の『24時間テレビ 愛は地球を救う46』(日本テレビ系)のメインパーソナリティーに選ばれた、なにわ男子。

 昨年のメインパーソナリティーは、YouTubeチャンネル「ジャにのちゃんねる」メンバー4人(嵐・二宮和也、KAT-TUN・中丸雄一、Hey!Say!JUMP・山田涼介、Sexy Zone・菊池風磨)だったが、なにわ男子はそうそうたる先輩たちの後を受け、この大役に抜てきされたのだ。

 説明するまでもなく、歴代数々のジャニーズタレントが担ってきた同番組のメインパーソナリティーは、日テレに「今年の顔」と認められただけでなく、事務所に「ジャニーズの看板」としてプッシュされている存在ともいえる。そのため、春頃から、ファンの間で「今年のメインパーソナリティーは誰が、どのグループが選ばれるのか?」と話題になることも、もはや風物詩といえるだろう。

 ジャニー喜多川氏(2019年に死去)の性加害報道の影響で、今年の『24時間テレビ』からジャニーズが外されるのではないかと一部で懸念されていたようだが、そんな中でのなにわ男子起用発表に、ホッとしたファンも多いのではないだろうか。

SMAPに嵐……爆発的に売れた大先輩の黄金パターンはもう通用しない

 前記の通り、『24時間テレビ』メインパーソナリティーを務めるということは、ジャニーズの看板の証し。デビュー時期が先のSnow Man、SixTONESも担当していない中での抜てきというのも、事務所の期待値の高さがうかがえる。

 すでに国民的アイドルとして確固たる地位を築いていた嵐は、グループとしての活動再開がまだ見えず、一方、現在活動中のグループでは、Hey!Say!JUMP、Sexy Zone、King & Princeあたりが、イメージ的には正統派風ジャニーズであり、次期看板と目されたグループだが、Hey!Say!JUMPは年内にいよいよ全員30代突入、Sexy Zoneはアイドルというよりオシャレ路線に移行、キンプリは5月にメンバーが一斉に3人脱退という状況にある。

 そうなると、若手かつ正統派ジャニーズアイドル“らしさ”を継承する次世代アイドルグループとして、なにわ男子が事務所にプッシュされるのはよく理解できる。

 とはいえ、なにわ男子メンバーの一般的な知名度、識別度はまだまだ低い。ここから、「国民的アイドルグループ」になるためにはどうすればよいのか。

 これまで爆発的に売れた大先輩たちのパターンからすると、なによりもまず「がんばりましょう」(SMAP)や「Love so Sweet」(嵐)など、誰でも知っているようなヒット曲を生み出せるかは大きい。

 また木村拓哉の『あすなろ白書』(フジテレビ系)しかり、嵐・松本潤の『花より男子』(TBS系)しかり、メンバー出演のドラマや映画がヒットすることも、国民的アイドルになるためには重要な要素。

 このように、曲とドラマ・映画がいずれも大ヒットし、同じ規模の“当たり”がある程度続くと、ファン層以外への認知度が高まるだろう。

 次はバラエティ番組だ。特定のメンバーに興味を持ったお茶の間層が、グループのバラエティを見るうちに、ほかのメンバーやグループ自体の魅力や個性に気づく。これがうまくハマれば、一気に各メンバーやグループの好感度も爆上がりする。

 この黄金パターンに、なにわ男子のこれまでの活動を照らし合わせてみよう。デビュー曲「初心LOVE(うぶらぶ)」は初日でハーフミリオン、初週売り上げ70万枚という大ヒットを記録している。メンバー7人それぞれの活動もめざましく、道枝駿佑は『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)、長尾謙杜は『どうする家康』(NHK)と、話題作への出演も多い。

 しかし、なにわ男子を国民的アイドルというにはまだまだ小粒感があるのは、彼らがどうこうという以前に、2023年の今日、これまでのブレークの方程式が通用しない時代であることの証左なのではないだろうか。

 多様性の時代と言われて久しい中、世代を超えて聞かれる国民的ヒット曲は生まれにくい状況にあり、たとえCDセールスが好調でも、積極的に複数買いをしてくれる熱量の高いファンに支えられた部分が大きく、一般層はショップでCDを買い求める機会自体、めっきり減っている。

 ドラマの好みも細分化され、現在テレビ局は、世帯より個人視聴率のほうを重視。そもそもテレビを見ない層がますます拡大している。それにバラエティも、ファン以外への訴求力が弱い番組が増えている印象がある。

 昭和の頃のように、雑誌やテレビ局、レコード会社などが一体となって「次のスターはこの人!」といったムーブメントを起こすような時代ではないことは誰もが知っている。序盤で書いたように、若手で正統派の“らしさ”を持ったグループが少なくなっているとはいえ、ジャニーズというくくりになると、第一線で活躍するグループはまだまだたくさん存在するし、近年はジャニーズJr.も地上波ゴールデン番組に出演したり、ファッション誌の表紙を飾ることも多い。その分、なかなか世間に「これがなにわ男子か」と“識別”してもらえなくなるのは必然の状況だろう。

 さらには、滝沢秀明氏の新会社「TOBE」、他事務所からもボーイズグループが次々にデビューし、男性アイドル界はもはや群雄割拠状態。おまけに世の中のジャニーズへの風当たりが強い状況もまだまだ続きそうなだけに、なにわ男子が「国民的アイドル」として無条件に親しんでもらうまでの道のりは、かなり険しいだろう。

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