実写版『リトル・マーメイド』初登場1位も……「ディズニーはメーガン夫人の味方」と批判されるワケ
黒人女優ハリー・ベイリーを主人公アリエル役に抜擢したことで公開前から世界中で話題となったディズニー実写版映画『リトル・マーメイド』。アメリカ以外の興行収入はイマイチだと伝えられているが、6月9日に封切られた日本では、初日から3日間で動員46万1,000人、興行収入7億1,200万円を記録し(興行通信社、以下同)、国内映画ランキングで初登場1位を獲得。根強いディズニーファン、アリエルファンに支えられる結果となった
そんな実写版『リトル・マーメイド』だが、キャサリン皇太子妃をディスっているシーンがあることも話題になっており、ネット上では「ディズニーはメーガン夫人の味方」と感じる人が多いようだ。
1989年に公開されたアニメ版のイメージが強いファンにとっては、「これじゃない感」が強く、最後まで違和感があったとネット上では不評の今作。多様性に配慮しすぎてオリジナルの設定を無視しすぎていると物議を醸し、映画批評家からの辛口レビューも多かったが、アメリカの観客はハリーの歌唱力と演技力に大満足。米大手映画評論サイト「Rotten Tomatoes」でも映画批評家による評価は68%なのに対して、一般視聴者による評価は94%と非常に高いものとなっている[2] 。
また、アメリカではメモリアル・デーの3連休に合わせて公開されたこともあり、初日4日間で興行収入1億1,750万ドル(約164億円)をマーク。米誌「Variety」によるとアメリカの視聴者の68%が女性であり、25歳から34歳までの層が25%で子どもは22%と、ディズニーファンが支えた形となった。
日本でも、ネット上には実際に映画を見た人から、「人種も違う上にアリエルがドレッドヘアーになっていたのが気になって物語に集中できなかった」などとネガティブな意見が寄せられていたが、ディズニーの実写化映画としては、『アラジン』(2019年)の興行収入13億8,000万円、『美女と野獣』(17年)の10億6,600万円に次ぐ初週成績となり、まずまずのスタートを切った。全世界ではすでに興行収入4億ドル(約558億円)を超える大ヒットとなっていると伝えられた。
そんな実写版『リトル・マーメイド』だが、アリエルが黒人だったことから、アメリカではヘンリー王子の妻であるメーガン夫人を連想してしまうという人も少なくないようだ。夫人は、王室離脱後の2021年に受けたオプラ・ウィンフリーの独占インタビューで、「王子と恋に落ちたせいで声を失ったが、最後には魔女を倒して声を取り戻したアリエル」と自分を重ね合わせたと告白しており、夫人のファンからは「本当にその通り」という声が続出した。
今回公開された実写版では、アニメ版になかったシーンがいくつも登場。声と引き換えに足をもらったアリエルが、思いを寄せるエリック王子と対面した時に王子が彼女の名前を推測するシーンもそのひとつつで、アニメ版では「名前はなに?」と聞かれたアリエルは喉を叩き、王子が「しゃべれないの?」と問うのに対して、実写版ではイギリス訛りの英語を話す王子が「名前はなに? ダイアナ?」「キャサリン?」と聞き、キャサリンと聞かれて嫌な顔をしたアリエルを見て、「はいはい、絶対にキャサリンじゃないね」と言うやりとりがあるのだ。
このシーンは公開前からリークされ、ネット上では「ブライズメイドのドレスをめぐりメーガン夫人が“泣かされた”と告白しているキャサリン皇太子妃に対するディスに違いない」と話題に。「真のプリンセスであるキャサリン妃へのディスを入れるとは、なんてことだ!」「ディズニーは、もはやプリンセスではないメーガン夫人の味方なのか!と大炎上した。
メーガン夫人の味方だと言われるようになったディズニーだが、メーガン夫人が王室離脱後の初仕事として選んだのが、ディズニーのドキュメンタリー映画『Elephant』(20年)のナレーションだったという縁もある。それに加え、前述したように夫人がアリエルと自分を重ね合わせた経緯もあって、ディズニーは夫人の味方になったと考える人が多いようだ。
これについて監督を務めたロブ・マーシャルは「ばかげている」と否定。メーガン夫人のファンも「キャサリン妃はケイトと呼ばれることが多いから、違うでしょ」とディズニーの肩を持ったが、映画が公開された今も、「まだ8歳で、生まれながらのプリンセスであるシャーロット王女がこの『リトル・マーメイド』を観た時のことを考えなかったのか」「おばあさまの名前に続き、自分の母親の名前が出てきてアリエルが嫌な顔をするシーンを、シャーロット王女が観たらどんな気持ちになるのか、考えてなかったのか!」といった批判の声は途絶えていない。