ASTRO・ムンビンさん死去……光と闇を持つK-POPアイドルをどう推せばいいの?
――最近ではK-POPグループ低年齢化(10代半ばでのデビューなど)の良否についても、ネット上で議論されていますよね。
DJ泡沫 実は、K-POPアイドルの低年齢化は今に始まったことではありません。少女時代やSHINeeのように、10年ほど前からグループ全員が10代でデビューすることも珍しくありませんでした。最近話題になり始めたのは、全員10代のNewJeansなどが、デビューしてすぐに人気が出ているからだと思います。
アイドルが学校と仕事を両立することについても、10年くらい前から議論され始めました。2015年からオーディション番組『SIXTEEN』や『PRODUCE 101』シリーズが大ヒットして、より低年齢層がアイドルを目指すようになったことも、練習生の低年齢化には関係していると思います。本来だったら教育を受ける中高生の期間に過密なトレーニングや仕事をしなくちゃいけないので、教育の機会が奪われてしまう。「普通の青春を過ごせない」と語るアイドルも少なくないですね。また、韓国のネットユーザーは日本よりも過激で、本来は保護されるべき年齢の子どもが直接誹謗中傷や批判に晒され、対峙しなきゃいけないのも心理的負担が大きいと思います。
ただ、未成年の芸能人に対する労働時間の規制は最近できたばかり。議論はされていたけれど、世間的な問題意識は薄かったというのが実際のところでしょう。
ちなみに、未成年の芸能人に限った話ではありませんが、労働環境の是正でいうと、アイドルが事務所と交わした契約内容に問題があるとして裁判を起こすこともあり、契約期間も今は7年が上限で、デビューから7年経過したら再契約が必要です。
――お話を聞いていると、低年齢でデビューすることは、アイドルにとってデメリットしかないのではないかと思ってしまうのですが、メリットはあるのでしょうか。
DJ泡沫 芸能活動期間が長期化することです。女性アイドルは、女性ファンが多いほど長く人気を維持しやすいですが、基本的には年齢が上がるとアイドルとしての大衆的な人気は落ちやすい傾向にあります。
一方、男性アイドルは韓国籍であれば兵役があり、全員で活動できない時期が必ず訪れるため、その意味でも若くしてデビューしたほうが若いうちにファンベースが固まって、活動が長く続けやすいのは確かです。
――このような問題点がある中で、私たちはどのような姿勢でK-POPアイドルたちを応援すればいいのでしょうか。
DJ泡沫 昔は、ファンがアイドルと触れ合えるのはライブやイベント会場だけで、それ以外は一方的に雑誌やテレビなどを見て応援するしかなかった。しかし、今はSNSやネットでの生配信など、アイドルが“リアル”を見せ、ファンと交流することが当たり前になりました。ゆえにファンはアイドルと心理的距離が近くなったと感じ、友達のようなラフな感覚で言葉を投げかけるので、それによってアイドル自身を傷つけてしまうことも増えたのだと思います。
あくまでファンから見えてるのはアイドルの一部ですが、全て知っているような錯覚に陥りやすいので、そこを冷静に自覚する必要があるでしょう。
ファンが事務所やアイドルに意見を言えるのは確かに大事なことです。しかし一方で、ファンやネット民の一方的な臆測によりアイドルが炎上することもある。韓国では、ファンが事務所相手だけでなく、アイドルに直接抗議するために、抗議用のトラックを走らせるケースもあるんです。アイドルにアドバイスしたり、メンバーの代わりに事務所に怒ったりすることが「アイドルのため」「ファンの義務」と思い込んで、暴走する人もいるように思います。アイドル業はファンとの関係性をビジネスに組み込んでいるところもあるので、こういったファンが出てきてしまうのも致し方ないかもしれませんが、行き過ぎた言動は避けるべきことです。
――アイドルを応援する上で、自分を見失わないようにしたいですね。
DJ泡沫 アイドルとファンの関係は特別なものだと思います。一定の距離感をキープし境界線を壊さないように意識すると、良い関係を築くことができるのではないでしょうか。