『だが、情熱はある』高橋海人と森本慎太郎の漫才はなぜ評価される? 元芸人ライターが徹底解剖
高橋と森本が評価される理由には、オードリーと南海キャンディーズの特色である“変則的な漫才”を見事にやりきっている点も挙げられるだろう。
実は2組の漫才は、その変則さから、「素人が真似をすると痛い目を見やすいタイプのネタ」といえる。それぞれの相方役を務める戸塚純貴(春日俊彰役)と富田望生(山崎静代役)が完璧に演じているがゆえに、かなり癖の強い漫才に仕上がっており、オーソドックスな漫才とは越えるべきハードルが違ってくるのだ。
2組の漫才をもう少し分解してみたい。
南海キャンディーズは、ツッコミなしでも笑いが起きる派手なボケが特徴だ。そこに山里が、ただツッコむのではなく、一番笑いが増幅するタイミングを見計らって、もうひと笑い起きるように強いワードを置いていく。ただテンポよくツッコミを入れればいいわけではないので、間を見極めるのはかなりシビアになる。この独特の間と雰囲気を再現しているからこそ、「南海キャンディーズを完コピしている」という評価につながったのだろう。
一方のオードリーは、若林の作業量が山里よりもう少し多い。主導して会話を作りながら、横から茶々を入れてくる春日のボケにツッコむ、なだめる、すかす、乗っかるなど、さまざまなパターンを繰り出し、見ている人が飽きないように作られている。
セリフ量が多いため、声の抑揚もしっかりつけないと伝わらない。若林が、自身から見て右側の客に重心を置きながら、反対側にいる春日のほうに勢いよく向き直ってツッコミを入れ、動きを大きく見せるといった仕掛けもある。このように、若林のタスクが圧倒的に多いことから、オードリーは南海キャンディーズよりも、さらに難易度の高い漫才をしている感が強いのだ。そんな若林のツッコミを見事にやりきっている高橋は、やはり称賛に値する。