コラム
仁科友里「女のための有名人深読み週報」

中田敦彦は、なぜ粗品を味方と勘違いしたのか? 彼が「愛される悪役」になるために足りないもの

2023/06/08 21:00
仁科友里(ライター)

 人はオトナになると、社交辞令を言うようになる。初対面で何を話したらいいのかわからない時、雰囲気を和らげるため、また相手を喜ばせるために、それほどその人の仕事について知らなくても「いつも見ています」くらいのことを言うし、言われたほうも「いつもじゃないだろ」と思いながらも、「うれしい、ありがとう」と返す――これは日常的にあることだ。 真実でないことを言うのは、ウソだと言われてしまえばそれまでだが、人を陥れようとか騙そうという意図はないわけだから、これは罪のないウソだろう。

 中田は、こういう社交辞令もしくは罪のないウソと、本気の発言を見分ける能力が足りないような気がする 。愛される悪役というのは、少ないながらも忠誠を誓っている味方がいて、本人が自分自身を犠牲にしてもその味方を守るというセオリーがあるが、社交辞令を真に受けてしまうようでは、本当の味方を見つけることができないだろう。

 それでは、どうして中田は社交辞令や罪のないウソと、本気の発言の見分けがつかないのだろうか。それは、中田自身が“条件”で人を判断しているからではないか。

 中田は粗品について語るとき、『M-1グランプリ』『R-1ぐらんぷり』の覇者であることを挙げている。中田自身がこういう業績にこだわり、そのブランド保持者に “片思い”をしているからこそ、粗品に「YouTube見てます」と言われ、望外の喜びを感じてしまい、「俺も好きだと思っていたが、向こうも好きでいてくれたんだ」とやや自分に都合よく解釈してしまったように思うのだ。

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