『ザ・ノンフィクション』突然すべての記憶を失った男性、指紋から犯罪歴が発覚し……
6月4日放送の『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)、テーマは「私は何者なのか… ~すべての記憶を失った男~」。
『ザ・ノンフィクション』あらすじ
2019年11月28日夜、横浜駅東口の石畳の上で目覚めた60歳前後と思しき男性は、その時点で、自分の名前も、なぜここにいるのかも、それまでの記憶をすべてなくしていた。所持品はトートバックにタオル、ライター、ポケットに現金31円のみ。何もわからぬまま駅ビルのトイレに行くと、鏡に映った自分自身の姿も見知らぬ人のように感じたという。
そのまま12日間ホームレス生活を続け、横浜市の公的機関に保護された男性は、「西六男」と名付けられる。見た目から推測し、仮の生年月日は昭和34年1月1日と決められた。
西は医師から解離性健忘症と診断される。心に受けた大きなショックから自らを守るため記憶が抜け落ちてしまう病気だ。西は自分の過去についての記憶はないが、入浴や歯を磨くといった日常的な行動は不自由なく、物の名前なども覚えており、生活の支援を受けながら横浜寿町にある横浜市ことぶき協働スペースに通う。一度、同団体で西の動画を作成してSNS公開(現在は非公開)し、情報収集を試みたが、有力な情報は得られなかったという。
西はわずかながら記憶のある街(横浜中華街、渋谷、新宿)を歩き、街並みから断片的な記憶を取り戻していき、行きつけだったラーメン店を番組スタッフに紹介。自分の記憶について知りたいと話す一方で、「ストレスのかかる大きなことがあったんだろうな」と、知ることを恐れる気持ちもあるようだ。
目覚めてから8カ月たった20年7月下旬、西は戸籍を作るため指紋をとったところ、警察の記録に指紋が残っていたと報告があり、そこで本当の名前と、昭和33年生まれの62歳であること、さらにはその後、本名をもとに住民票を申請した際、静岡県の富士宮市から転入していたことを知る。
西は目覚める前に暮らしていた富士宮市を訪問。夏は富士山の雪解け水が湧き出る湧玉池のある浅間神社に涼みに来ていたこと、近くのマックスバリューやイオンに買い物に来ていたこと、商店街の瓦屋根が駅までずっと続いていることなど、次々と風景から記憶を思い出していく。ただ、いざ自分が暮らしていた家が近くなると西は黙り込み、400メートル手前で、「一回ちょっと、ここで一回出てもらって」とこれ以上進まないでほしいとの申し出があり、探索はそこで終了した。
番組スタッフが「これ以上取材をして大丈夫なのか」と確認したところ、西は「迷惑のかかる相手さえいなければ構わない」と回答したものの、担当医から記憶の探索と取材の継続についてドクターストップがかかる。
その後、目覚めてから1年半となる21年5月、西はことぶき協働スペースからスタッフとして働いてほしいと申し出があり承諾、それを機に自活を始める。一方で、1年半が過ぎても、誰からも連絡がない状況に、西は「誰も(西が姿を消したことに)何も言ってこないっていうことは、そういう関係性でしかないんだよ」と話す。
そして、家庭裁判所に自分の指紋が残っていた理由をあらためて尋ねることに。そこで、渡された資料には「犯歴」として、平成24年と28年には窃盗(万引き)、平成29年には占有離脱物横領と記載されてており、西は自身に犯罪歴があったことを知る。
そこから「私の風当たりって決して良いものではなかったはずだから、そこをトータル的にいろいろ考えると、もうこのままで(記憶を知らなくて)いいかなと……」と吐露。西はことぶき協働スペースの代表やスタッフに犯罪歴があることを伝え、先方もそれを了承していたのだった。
『ザ・ノンフィクション』「いなくなったら探してくれる」は会社勤めのメリット
西は1年半、自分を探そうとする人が現れなかったこと対し、過去の自分は、周囲とそういう関係しかなかったのだろう、と寂しげに振り返っていた。しかし大人の場合、同居家族がいない、もしくは仕事に就いていないケースの場合、1年半音信不通になる、というのはあり得る話のように思えた。
友人、知人レベルなら、1年半連絡がつかなくても、忙しかったり、何か事情があるのだろうと思ってしまいそうだし、捜索願などを出して大ごとにし、その後何もなかったらと、ためらってしまいそうだ。
また、同居していない家族よりも「自分が働く会社」のほうが、すぐに自分の不在や不慮の出来事に気づいてくれるだろう。実際、出勤してこない同僚の自宅を訪ねたら事件に巻き込まれていた、あるいは重篤な状態だったということが発覚するケースはある。「定職についていることのメリット」は数多くあるが、「いなくなったらすぐ探してくれる」というポイントは盲点だったと、今回の『ザ・ノンフィクション』で気づかされた。