コラム
“中学受験”に見る親と子の姿

中学受験、大手塾を辞めたのは間違い? 家庭学習で合格した私立の「大学進学実績」に不安

2023/06/10 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

 啓子さんはそう感じているようだが、大学受験が、従来型の学力試験を経て中高一貫校に入学した子に有利ということはない。当然ながら、中学受験の選抜方法よりも、その後の各人の努力の差によるところが大きい。

 しかし、啓子さんの言いたいこともわからなくはない。今現在の日本の大学受験は「塾歴社会」とも呼ばれている。高学歴を手に入れようとするならば、中学受験塾に通って高偏差値の中高一貫校に入り、そのまま大学受験専門塾に通うというのが、ある意味、スタンダードな方法だからだ。難関大学進学は、この小学生からの「塾漬け生活」に耐えられた(あるいは楽しめた)者だけが手にできる栄冠という見方も、できなくはないのが現実だ。

「私たち親子は中学受験のつらさから逃げただけなのかもしれません。“たられば”ですけど、あの時、塾を辞めずに受験にまい進していたら、また違った結果になったのかなぁと思って、最近、よく眠れないんです」

 大樹くんの大学受験がどうなるのかは現時点では何ともいえない。啓子さんの選択が本当の意味で良かったのか悪かったのか、その判定を下すにはまだ早すぎるだろう。

 しかし、啓子さんの話を聞きながら、子育てとは、つくづく難しいものだとため息をついてしまったのも事実である。

 良かれと思いながら子育てに励んでも、親も人間。時として“過去の選択”に悩み、自信をなくしてしまうこともある。個人的には、その気持ちも子育ての一環。その時、一生懸命に子どものためを考えて下した決断ならば、それが一番良かったのではないかと思う。しかし、進学後に、“たられば”にとらわれてしまう親がいるのも、中学受験の一側面であることは頭に入れておくべきなのかもしれない。



鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

エッセイスト、教育・子育てアドバイザー、受験カウンセラー、介護アドバイザー。我が子と二人三脚で中学受験に挑んだ実体験をもとにした『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などで知られ、長年、中学受験の取材し続けている。その他、子育て、夫婦関係、介護など、特に女性を悩ませる問題について執筆活動を展開。

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湘南オバちゃんクラブ

最終更新:2023/06/10 16:00
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