コラム
“中学受験”に見る親と子の姿

中学受験を小6で撤退――「公立中学の内申点」に不信感を抱く母が、3年間でわかったこと

2023/05/27 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

「当時の拓海は勉強嫌いというか、ただただ幼いというか。塾には喜んで行くんですが、塾の宿題すらもやっていないという状態でした。課題の提出が苦手なんて、まさに公立中学で内申点を取りづらいタイプで、だからこそ中学受験をさせようと思ったわけですが……(苦笑)。『夜まで友達と一緒にいられるのが楽しい』というだけで、塾に通っていたようなものです」

 成績としては、塾の真ん中あたりのクラスで、そこから下がりもしなければ上がりもしないという状況だったという。その拓海君に変化が訪れたのは小6の春だった。

「拓海が『受験をやめる!』って言い出したんですよ。ずっと少年野球をやっていたんですが、『野球魂に火がついた』とか言って、『野球に専念したい』と。レギュラーは6年生から選ばれることが多いらしく、『中学受験をしたい!』より『少年野球チームのレギュラーになりたい!』という気持ちが勝ったとのことでした」

 ひかりさんは、拓海くんに野球で活躍できるほどの運動神経があるとは思えなかったそうだが、「このまま受験しても、私が希望するような名の通った私立中学に行ける可能性は低い」と冷静に判断したという。

 塾にも意外とあっさり退塾を認めてもらい、野球に専念できる環境を得た拓海くん。しかし、大きな大会に出場したものの、チームはあっという間に敗退。ひかりさんいわく「結局、拓海は遊んでいるだけの小学生」になり、そのまま卒業。公立中学に進学したという。

「最初はすごく心配しました。『提出物は出せるのかな?』とか『先生に逆らって内申点が取れなかったらどうしよう?』とか……。でも、それが意外にも杞憂だったんです」

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