中学受験を小6で撤退――「公立中学の内申点」に不信感を抱く母が、3年間でわかったこと
“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。
中学受験を志望する理由はご家庭によってさまざまだろうが、その中に高校受験の選考で参考にされる「内申点」への不信感が含まれる場合がある。
高校受験では多くの場合、「内申書(調査書)」が合否判定の資料として使用されるのだが、ここに記載される成績のことを内申点と呼ぶ。学期ごとの学業成績を、5段階の評定×9教科=45点満点を“素点”として数値化するのだが、テストの点以外にも、課題提出や授業態度などが加味される(なお、都道府県によって、実技教科の得点が重視されるなど計算方法は微妙に違う)。
この内申書には、内申点だけではなく、生徒の学校生活のまとめも記載され、出欠記録、部活・委員会活動での活躍の度合い、ボランティア活動の有無なども反映される。
高校受験の合否判定は、内申書と当日の学力試験の結果で総合的に判断される(受験する高校によってこの比率は異なる)だけに、内申点を含む内申書は非常に重要なものといえる。
ただし、この内申書は中学校の先生が作成するものなので、「個人的主観で評価される面が大きい」という声があるのも事実。それゆえ「結局は先生の好き嫌いで評定が決まってしまう」と話す人も多い評価制度なのだ。保護者の中には、「提出物をちゃんと出して、先生に気に入られる振る舞いをすれば、評定は上がるが、それができなければ、お先真っ暗」と捉える人もいるだろう。
中学受験組の中には、この高校受験のための内申点への不安から、私立中高一貫校進学を選択しようと考えるご家庭もあるのが実情だ。
現在、高校1年生の拓海くん(仮名)の母・ひかりさん(仮名)も、かつてその1人だった。ひかりさんが住んでいるのは、小学校の1クラスのうち、約半分が中学受験組という地域。「公立中学の内申制度を避けるため」という理由で、中学受験に参戦する家庭が多かったという。
「拓海が小学校に入った頃から、学区の公立中学に入った子のお母さんたちから『内申を取るのが大変!』という話をたくさん聞いていました。『提出物を出せない子は無理』とか『行事でリーダーになる子が有利』とか『“授業をちゃんと聞いてる”アピールをできる子が可愛がられる』とか『先生の贔屓がひどい』とか……そういう話を聞いているうちに、だんだん公立中学が怖くなっちゃったんです」
そこでひかりさんは、小学4年生から拓海くんを大手進学塾に通わせたそうだが、「期待するようには成績が伸びてはいかなかった」そうだ。