コロチキ・ナダルは、“時代”に守られている――先輩への失礼な発言が笑いになるワケ
そんなナダルは、番組内で「(仕事で)やる気が出ない時どうしてますか?」と共演者に疑問を投げかけていたが、隣に座るホラン千秋や、MCのオードリー・若林正恭と話していくうちに、「仕事のスケールが小さかったら、やる気が出ないってことだよね」と言い当てられてしまう。
例えば、相方の西野創人によると、ナダルは同番組プロデューサー・佐久間宣行氏のYouTubeチャンネルに出演した際、「(テレビじゃなく、)YouTubeだし」と、やる気を見せず猫背だったが、300万回再生されている人気チャンネルと聞くと、背筋が伸びたそうだ。
ホランは、ナダルのやる気について「(仕事を)上に見ているか、下に見ているか(でやる気が違う)ってことですよね」とまとめ、ナダルは「そうですね」とあっさり認めていた。そういった 発言を平然としてしまうあたりがナダルなのだが、その分、彼は「下に見る」視線を自分にも向けており、それがクズになりすぎないストッパーになっているように思う。
同番組で、ナダルはNSC(吉本総合芸能学院)時代、「余裕のC4」だったと自嘲気味に話していた。どういうことかというと、NSCのクラスは優秀な順にA、B、Cと分けられており、さらにCは4つに分類され、その中でも一番下のC4に、ナダルは所属していたとのこと。にもかかわらず、Aクラスのコンビに「お前ら、ネタ変えた?」と上から目線で指導していたそうだ。
何を面白いと感じるかどうかは個人の感覚が決めるので、クラスが上だから面白いとか、売れるというわけではないだろうが、 もしナダルが入学当初からAクラスで現在に至り、先輩に対して失礼な口の利き方をすると、それは単に調子に乗っている嫌なヤツになるが、「人や仕事を上下に見る自分も、実は一番下のクラスだった」ことで、失礼さが中和されるように感じられるのだ。
プロレスラー時代、ヒールだった北斗晶が『5時に夢中!』(TOKYO MX)で、「悪役はトク」と話していたことがある。怖いイメージがついているので、ちょっとでも丁寧に接すると「本当はいい人」と思われるからだそうだ。ナダルも同じで、「クズ芸人」というキャラが定着することで、かえって「本当はいい人」と言われる可能性も高まるのではないだろうか。
「クズ芸人」と呼ばれながらも、クズになりすぎず、かつ「本当はいい人」と世間に認識される可能性を持つナダルは、今後のタレント活動も安泰だろう。 一方で、最もアブナいのは、ナダルを「面白い」と思っている一般人ではないか。
自分のこともままならない一番下のクラスのナダルが、一番上のクラスの人を下に見て、あれこれ言うのが「面白い」。そういった感覚を持つ人は、自身もまた 「人を下に見ている」からのように思えてならないのだ。人を下に見れば見るほど、嫉妬の業火に焼かれやすい。そのことをどうかお忘れなく――。