『ザ・ノンフィクション』一橋卒のZ世代スナックママを、“やり手”と感じた理由は?
日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。4月30日の放送は「わたし、スナック継ぎます ~ママは新卒Z世代~」。
『ザ・ノンフィクション』あらすじ
東京の文教都市として名高い国立市。国立を文教都市たらしめているのは名門・一橋大学の存在が大きい。2022年4月、一橋大学を卒業した同級生は誰もが知っている大手企業に就職していく中で、千里はスナックのママになる道を選ぶ。
理由は、千里が学生時代にアルバイトしていた国立市内のスナック「スナックせつこ」のせつこママから、店を継がないかと打診されたため。せつこママは76歳で体力の限界もあったようだが、千里の商才を見抜いての打診だった。
お店を引き継いだ千里は、いかにも昭和のスナックといった趣の内装から、今風のカフェのような雰囲気に改装し、店名も「スナック水中」へと変更。改装費用は1000万円で、クラウドファンディング、銀行融資、商工会の助成金で賄っている。千里自身も少しでも費用を浮かそうと、長年の油汚れがこびりついた換気扇の清掃は自身で行っていた。
千里の父親、宏治は開発途上国支援の仕事で海外を巡り、今はスーダンで働いている。宏治は当初、「会社入って世の中のシステム勉強しろ」と、新卒でいきなりスナックママになる進路を反対していたが、千里の決意を前に折れた形だ。スナック水中がオープンすると、宏治は店を訪ね、薬師丸ひろ子の「セーラー服と機関銃」を熱唱していた。
せつこママから引き継いだ客もおり、オープン当初から快調なスナック水中だったが、千里には、女性がサードプレイスとして一息つける場所にしたいという夢があり、中高年男性中心の客層を変えていきたい思いもある。スナックせつこで働いていた頃、せつこママが、自分と話すために店を訪ねる女性を、優しく受け入れる姿に憧れていたようだ。
千里は女性客や若年層の来客増のため、インスタグラムで情報発信したり、若年層限定のイベントなども開催する。しかし、若い男女が酒を飲み隣り合って座る店内はおのずと「街コン」状態になり、千里はそれが不満なようだった。現状と理想のギャップに悩む千里はせつこママに相談するも、「カウンターの中の人に合ったお客さんが来る」と諭される。
番組最後は、23年4月のスナック水中の1周年の様子が伝えられており、にぎわう店内には若い女性の姿もちらほらあり、千里の理想に少し近づいているようだ。また、ここ1年の手腕が評価され、千里は国立のジャズバーのマスターからも店舗の継承を依頼されていた。
『ザ・ノンフィクション』飲食店開業が成功するレア中のレア回
『ザ・ノンフィクション』において「飲食店を開業する」回は幾度か放送されているが、「まず失敗する」と言ってよい。番組の最後には廃業するお店も少なくないため、正直今回も……、という不安があった。
しかし、千里は1年でスナックを軌道に乗せるだけでなく、ジャズバーの継承も依頼されなど、今回は超レア中のレアな「飲食開業大成功回」だった。経営に行き詰り、取材中に涙を流すなど、千里の不安定な様子が印象に残ったものの、普段の彼女は有能な仕事人なのだろう。
『ザ・ノンフィクション』千里が成功した理由
千里がこの多産多死とも言われる飲食で成功を収められた理由として、“相談力”があるように思う。千里は、こだわりはかなり強そうだが、一方で他者に相談している姿もよく見られた。
困ったらせつこママに相談するし、外部のコンサルにも入ってもらい、人の意見を積極的に取り入れている。「人から何か言われるのがとにかく癪(しゃく)に障る」「一から十まで自分の思うようにしたい」というタイプではないのだろう。また、そもそもスナック水中は、せつこママの「地盤」を引き継げたことが経営において非常に大きかったと思われるが、それもせつこママと千里のつながりがあってのことだ。
仕事をする上で、「他者の意見を聞けて、他者と協力できる(≒独りよがりじゃない)」というのは重要な要素なのではないかと、千里を見て思った。
次回は「人力車に魅せられて 3 ~浅草 女たちの迷い道~ 前編」。大学4年生の俥夫(人力車の運転手)・ミイは研修の指導も任される存在だ。当初アナウンサーを志望していたミイだが、このまま人力車の仕事を続けようと考え始めている。しかし母親から猛反発されて……。