岡田准一に「かわいい」と言えない――男性ジャニーズファンの苦脳を研究者に聞いた
――ほかにも、男性ジャニーズファンならではの悩みはありますか。
小埜 コンサートでも悩みはあります。僕は身長が174cmなのですが、コンサート会場にはほとんど男性がいないので、自分のせいで後ろの女性ファンが、ステージが見づらいのではないかと気を使いますね。ある空間で少数派になるというのは何とも言えない不安感のようなものがあって、100%心からコンサートを楽しめないという男性ファンからの声も少なくありません。
声援を送る際も、女性のように高い声を出せないので、「声を出すと浮いてしまうから、感情を抑え込んでいる」という話は、男性ファン同士で共感を得るテーマです。最近、さまざまなセクシュアリティへの配慮から、アイドルが「男性/女性」を特定して掛け声を求めることへの疑問が、一部のファン界隈で上がっていて、もちろんそこは検討されるべきだと思います。でも一人の男性ファンとしては、現状アイドルに「男性!」「メンズ!」などと声をかけられたとき、安心して声を出せるというのも本音です。
また、「コンサートでトイレに並ばないこと」は男性ファンのメリットとしてよく挙げられていて、確かにその通りなのですが、全体数が少ないゆえに、男性トイレも女性用として使用されていることがあって。以前とあるライブ会場の男性トイレをパーテーションで仕切って、小便器だけ男性に開放されていたこともあったんですよね。変な話、お互い音も聞こえてしまうような状況だったので、さすがにもう少し配慮してほしいと思いました。
それから、書店でアイドル誌を買うときのハードルが高いという話もよく、僕がインタビューさせていただくときに聞きます。本当は少し中身を確認してから買うか決めたくても、恥ずかしいからなるべく売り場に女性客がいないときを狙うとか、素早く手に取ってレジに向かうとか、男性の店員さんを選んで会計するとか……。男性ジャニーズファンの多くは、過去に「男性でジャニーズが好き」ということで、イジられるとか引かれるとか、何かしら傷つく経験をしているので、また嫌な思いをしたくないという防衛的な心理が働くのだと思います。
――大変なことも多々あるのですね。やはり男性限定コンサートがあればうれしいでしょうか。
小埜 過去には嵐が『Music Lovers』(日本テレビ系)で男性ファン限定ライブを開催したことがあって。いつもと雰囲気が違うのも新鮮だとは思うものの、雰囲気や煽り方がアイドルというよりロックバンドのような感じだったんですよね。自分もそうですが多くの男性ファンは「アイドル」の彼らが好きなので、通常通りのコンサートで、男性ファンも過度に気を使わなくて良い状態で参加できるようになるのがうれしいです。
(後編につづく)