ジャガー横田夫・木下博勝氏の“さらけ出す子育て”の問題点――学校にとっては「要注意人物」でしかない?
私たちの心のどこかを刺激する有名人たちの発言――ライター・仁科友里がその“言葉”を深掘りします。
<今回の有名人>
「他人様にしつけてもらったほうがいいと感じる部分がありました」ジャガー横田
(ニュースサイト「AERA dot.」4月12日配信インタビューより)
今年1月、プロレスラー・ジャガー横田がYouTubeチャンネル「ジャガー横田ファミリーチャンネル」の閉鎖を宣言したが、2月末には更新を再開。こうなるだろうと予想していたものの、あまりに早い復活劇に、この一家の“SNS依存”を感じた人は多いのではないだろうか。
ジャガーファミリーといえば、世間をイラつかせるネタを定期的に提供してくれることでも有名だ。
ジャガーの夫である医師の木下博勝氏は、自身のインスタグラムで、高校2年生になった息子の大維志くんが、クラス委員に選ばれなかったために、「自分はクラスメートから嫌われている」と落ち込んでいたことを明かした。
なぜ自分の息子が傷ついた出来事を、世間に公表する必要があるのだろうか。大維志くんがクラス委員に選ばれなかった理由はわからないが、この結果から推測して、「大維志くんは人望がない」と解釈してしまう人もいるかもしれない。父親が自分の子どもの評判を落とすようなことをなぜ喧伝するのか、理解に苦しむ。
今回のことに限らず、大維志くんの高校受験の合否をすべて公開するなど、木下氏の“さらけ出す子育て”に違和感を覚え、イラつく人は多いと思うが、一方、ジャガーに対する世間の印象はどうだろう。 彼女は大維志くんの高校受験に関して、『バイキングMORE』(フジテレビ系)の取材を受け、合否を公表することに反対だと述べていた。そのため「良識がある」と捉える人もいるだろうが、ジャガーもちょっと“甘い”のではないだろうか。
4月12日配信のニュースサイト「AERA dot.」のインタビューで、ジャガーは大維志くんの中学受験を振り返っていた。彼の中学受験は『スッキリ』(日本テレビ系)が密着していたため、記憶に残っている人も多いことだろう。見事、私立中学に合格したものの、親子で話し合い、公立中学に進学した大維志くん。高校受験をして、現在は長野県にある私立校で寮生活を送っている。お子さんと離れることに葛藤はあっただろうが、ジャガーは「他人様にしつけてもらったほうがいいと感じる部分がありました」と語っている。
おそらく、この「他人様にしつけてもらう」というのは、親だとどうしても甘くなってしまうところがあるので、第三者の目線で子どもを指導してもらいたいという意味だろう。しかし、他人様にわが子を育ててもらうという時代は、すでに過ぎ去っているように思う。
教師や学校が絶対的に正しく、子どもや親はそれに服従しなければならないという時代があった。例えば、教師や学校が、子どもに厳しい指導を行った場合、生徒のためを思った愛情ゆえという面もあるだろうが、明らかにその理屈ややり方がおかしかったとしても、子どもや親は言いなりにならざるを得なかったのだ。なぜなら、「教師や学校側を怒らせると、成績に影響が出るかもしれない」という懸念があったから。 その背景には、昔は子どもの数が多かったために、学校に「いれていただく」意識があったのだと思う。
しかし、今は少子化が進み、子どもや親が学校を「選ぶ」ようになってきた。一般用語として定着した 「モンスターペアレンツ」が示す通り、過度の権利意識を持ち、学校側に自己中心的な要求をする親も存在する。学校側が理不尽な行為を働こうものなら、SNSで告発することもできる。こうなると、特に私立校は、生徒を“お客さま”とみなして、「愛情をもって厳しく接する」よりも、「卒業まで、大過なく過ごしてもらう」ことを目指すようになっているのではないだろうか。その点で、ジャガーの「他人様にしつけてもらう」という考えは、見通しが甘い気がするのだ。