高校中退の万引き少年の母「あんたに、なにがわかるのよ!」――Gメンに絶叫したワケ
「いつもLINEだから、電話番号はわかんないよ」
「じゃあ、LINEでいいから、私の目の前でお母さんにかけて」
嫌な顔を見せつつも、逆らうことなく連絡を取り始めた少年は、気まずいのか、お母さんが出ると同時に自分のスマホを女性警察官に手渡します。
「説明くらい、自分でしなさいよ」
「めんどくさいから、そっちでやって」
やむなくスマホを受け取り、電話口に出た女性警察官が、丁寧な口調で状況を説明しました。10分ほどで迎えに来られるというので、それまでの間に実況見分を済ませることになり、売場で盗んだ商品を指差す少年の写真が撮影されます。
周囲の客から見れば、万引きして捕まったと容易に想像できる状況で、毎度のことながら人目に晒される被疑者のプライバシーが心配でなりません。事実を突き合わせるため同行してくれというので、その様子を遠巻きに見守っていると、写真撮影のためパン売場でクリームパンを指差していた少年が急に顔を伏せました。
「ほら、写真撮るから、顔あげて」
「…………」
女性警察官の指示を聞かず、うつむいたままでいるので近づいてみると、顔を真っ赤にした少年が言いました。
「どうしたの?」
「知り合いがいるから、ちょっと待って」
「どの人よ?」
「あの子たち、中学の同級生なんだ。こんなことってある?」
目で合図するので確認すると、制服姿の女子高生2人組が、興味津々といった様子でこちらの状況を見つめていました。多感な時期でもあるし、少しかわいそうに思って女性警察官に知らせるも、すぐに終わるからと構うことなく無理に写真を撮り続けます。
それ以降、明らかに不貞腐れてしまった少年は、ろくに返事もしなくなりました。険悪な雰囲気の中で、実況見分を終えて事務所に戻ると、まもなくして少年の母親を名乗る女性が被害品の支払いに現れます。おそらくは、夜の仕事をされている方なのでしょう。乳房が目立つ服装と派手なネイルが印象的な40歳くらいの女性です。
「あんた、また万引きしたんだって?」
「うん。のどが渇いちゃったんだけど、カネがなかったから仕方ないだろ」
「はあ? あんた、いい加減にしなさいよ。もうガキじゃないんだから、今回は自分で責任取ってこい」
一喝された少年は、ただニヤニヤと悪い笑みを浮かべるばかりで、まるで反省のない態度を取り続けています。その様子に怒った母親が、努めて冷静に女性警察官に言いました。
「お店に迷惑がかかるから、代金のお支払いはしますけど、こいつは置いて帰ります。留置場でも刑務所でも、どこでもいいから放り込んでやってください」
「まあまあ、落ち着いてください。警察署で、ちゃんと言って聞かせますから」
怒りに震える母親を宥め、被害品の精算をさせた女性警察官が、足を放り投げて座る少年を一喝しました。
「君ね、そんな態度でいたら、本当に逮捕しなきゃならなくなるよ。まずは、お母さんに謝りなさい」
「はいはい、ごめんなさい。もうしません」