『エルピス』眞栄田郷敦、『silent』鈴鹿央士が大躍進――ドラマ評論家が選ぶ、2023年の注目すべき若手俳優
そして、22年最も若者に支持されたドラマと言えば10月期の『silent』(フジテレビ系)だが、Snow Man・目黒蓮と並んで注目されたのが「優しすぎる男」こと戸川湊斗を演じた鈴鹿央士だ。
湊人は、耳が聞こえなくなった親友の佐倉想(目黒)を心配する一方、恋人の青羽紬(川口春奈)が元カレの想に抱いている気持ちを察知し、2人を思いやるという優しい男で、本作の優しい世界観を象徴する天使のようなキャラクター。“常軌を逸した優しさ”を抱える湊斗は、ほかの俳優が演じたらまったく説得力が生まれなかったと思う。間違いなく本作の功労者の一人だ。
俳優デビューのきっかけは、エキストラで映画撮影に参加したところ、出演者の広瀬すずの目に留まり、彼女の所属する芸能事務所にスカウトされたという変わり種。正式に映画初出演となった『蜜蜂と遠雷』(19年)での天才ピアニスト役で、映画ファンには知られていた存在だ。23年はNetflixで放送される少女漫画原作のドラマ『君に届け』で、南沙良とダブル主演を務めることが決定している。しばらくは天使のような優しい青年の役が続きそうだが、そのイメージを逆手にとって悪役を演じても面白いかもしれない。
最後に触れておきたいのが、菅生新樹。坂元裕二氏脚本、7月期の刑事ドラマ『初恋の悪魔』(日本テレビ系)で事件の鍵を握る大学生を演じ、俳優デビュー。その後、LINEで配信されたスマホ特化型のドラマ『トップギフト』にて、秘密を抱えた地下格闘家の役を演じた。出演作はまだ2作で、どちらも出番は決して多くないものの、鮮烈なインパクトを残している。
俳優・菅田将暉の弟ということでも注目されているが、どんな役でも器用にこなすカメレオン俳優の兄と比べると、演技はまだまだ硬くてぎこちない。だが、その硬さを補って余りある野獣のような圧倒的存在感がある。今後どのような俳優になっていくのか楽しみだ。