コラム
老いゆく親と、どう向き合う?
母から刃物で刺され、父からは性的虐待……“記憶にふた”をして生き延びた女性が「親の介護」に直面したら
2023/01/01 18:00
そんな美紀さんに、昇二さんは性的虐待を加えた。美紀さんの脳は、“記憶を失くす”という方法で、自分の精神をかろうじて守った。
「それを覚えていたら、もう生きていくことすらできなかったと思います。父の行為によって私は心身症になりました。足が動かなくなり、耳も聞こえなくなり、学校にも行けなくなりました。それでも父からされた行為の記憶にはがっちりとふたがされ、鍵がかけられて、30歳になるまで思い出すことはできませんでした」
こうして、何とか生き延びた。
美紀さんは大学進学時に実家を離れ、その地で夫と出会い、結婚。夫との生活は幸せだった。
「でも幸せになったから、私の頭が『もう出てきても大丈夫』と判断したのでしょう。突然記憶のふたが開き、父からの性的虐待がよみがえったのです」
混乱した美紀さんは、夫を深く傷つける行為に走り、そして自殺を図った。
美紀さんはかろうじて一命をとりとめ、精神病院に入院した。
「そこから立ち直るのは容易なことではありません。今も自分と向き合い、癒やす旅の途中なんです」
美紀さんは、その旅の途中、自分だけでなく両親とも向き合わざるを得なくなった。親の老いに直面したからだ。
続きは1月15日公開
最終更新:2023/01/01 18:00