コラム
仁科友里「女のための有名人深読み週報」

アンミカの“ポジティブ思考”に見る暗さ――「人生はブーメラン」発言が危険なワケ

2022/12/15 21:00
仁科友里(ライター)

 アンミカいわく、「人生はブーメラン いいことを人にシェアしよう」。彼女は数々の商品のプロデュースを手掛けているが、それも「お金儲けと思ったら、いいものはできません。誰かが喜んでくれると思うから、喜ぶ人が増えて、結果それが売れているということにつながっていく」と解説する。同番組・MCの兼近大樹が「悪いこともそうですもんね。悪いことも投げたら戻ってくる」と同意すると、アンミカは「そういうこと。因果応報ですね」と返していた。

 私たちは誰もが、「自分は物事を論理的に解釈して判断している」つもりだが、実際には認知にはバイアス(偏り)があると、心理学で証明されている。そのうちの一つが、「公正世界仮説」 と呼ばれるもので、良いことをした場合には良い結果が、悪いことをした場合には悪いことが起きると信じることをいう。

 一見正しいように感じられるが、この考え方、なかなか危険ではないだろうか。上述した通り、アンミカの家は貧しかったそうだが、「良いことをした場合には良い結果、悪いことをした場合には悪いことが起きる」という「公正世界仮説」理論にあてはめて考えると、アンミカの両親は「悪いことをしたから、極度の貧乏になってしまった」となるが、本人はどう考えているのだろう 。「公正世界仮説」を信じすぎると、社会的弱者や事件の被害者など弱い立場の人を、あるいはアンミカなら両親を「お前が悪い」「お前の努力が足りない」と追い詰めてしまう可能性があるのだ。

 また、「公正世界仮説」を信じる人は、実は不安が強いことが証明されている。「あいつには悪いところがあった、だからあんな目に遭うのだ」と考えることで、自分の優位性を認識し、 自分は大丈夫だと思い、自分の心を安定させているわけだ。

 「公正世界仮説」を四文字熟語で言い換えると、「因果応報」になる。ということは、ポジティブの極意を「因果応報」だと説くアンミカは、実は不安感が強いタイプといえるのではないだろうか。アンミカのポジティブに見える行動は、過去のつらかった時代に戻りたくない、あの悲しみを忘れたいがために、頑張っているように見えて仕方ないのだ。

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